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描きたいものと、描けるもの。初個展を経て、自分の絵を見て感じたこと

ご無沙汰しています。
あっという間に時間が過ぎて、もう10月も下旬になってしまいましたね。

先月、初個展『つづく、つづく』を開催しました。
まずはお越しくださったみなさま、気にかけてくださったみなさま、個展開催に際してご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

個展の少し前に告知で書いたnote、自分のテンションを保つためにか文章のテンションも高くて今読むとちょっと笑えます(なぜか1/3くらいプチトマトの話をしています)。

展示作品についてもまた書きたいのですが、今回はひとまず、自分の中で忘れたくないことを書き留めておきたいなと思って久しぶりにnoteの執筆画面を開きました。実に個人的で、そしてやっぱり長い話になってしまいましたが、よろしければお付き合いください(来てくださった方へのお礼や、在廊時の感想はまだまとまらないので、また後日ちゃんと書かせてください)。

描きたいものと、描けるもの


少し遡ってのお話になりますが、フリーになってから2年くらいは「描きたいもの」と「自分の手から生まれるもの」の乖離が大きく、どこか無理に背伸びをしようとしていたところがあった気がします。その乖離が、少しずつ埋まってきて「ようやく地に足がついてきたかも」と思えたのが、独立して2年半経って初めて開催した、今回の個展でした。

もう少し具体的に順を追って書くと、大学時代以降、初めて意識的にデザインの世界やイラストレーションの世界に触れて、描きたいものの方向が一気に変化していきました。

ちなみに幼少期〜高校時代までは、ありがたいことに絵を描くことに肯定的な環境に恵まれていたので、ひたすら「描くのが楽しい!」と思うまま筆を動かし、あんまり方向性に悩んでいた記憶がありません(忘れちゃっただけかな)。水彩に触れるきっかけになった一次創作の世界を楽しく歩いていました。前にも少し触れましたが、鈴木成一さんの講座でイラストレーションの世界に触れたことと、デザインを学び始めたことが、描きたいものが変化するきっかけだったと思います。

学生時代までは時間があり、描きたいものの変化と一緒に「自分の手から生まれるもの」=「描けるもの」もゆっくりながら変化していったので、そこまで乖離に悩むこともありませんでした(多分)。ところが就職してみると、なかなかじっくり一枚絵を描くコンディションが作れず「描きたいもの」と「描けるもの」がどんどん離れていったような感覚があったのです。

前職の仕事は絵を描くことではなかったけれど、当時の私が心からやりたかったことで、初めての一人暮らしが始まったこともあり、毎日必死でした。休日も、目の前のものをスケッチするくらいはできても、絵作りをするところまで気持ちを持っていけなかったのだと思います。一応、描けなくなるのが怖くて無理やり展示に参加したり、コンペに出したりもしていましたが、自分の制作に時間を割くことにどこか後ろめたさもありました。

とはいえお勤めしていた4年間はとても貴重な時間で大切なもので、イラストレーターの仕事にとってもすごく良い経験になったので、後悔は一切していないんですが、ともかく乖離が生まれる原因にはなったわけです。

ちなみに、先ほどの図を拡大版にしてみると実はこう。

描きたいもの自体も、あっちにいったり、こっちにいったり、ふらふら、ふらふらしていました。ただでさえ遠い目標(?)なのに、行き先が定まらないので余計に行き方がわからないのです。じゃあ今は明確に「こういうものが描きたい!」とはっきり言えるかと聞かれるとなかなか難しいのですが、少なくとも幅はあっても同じ方向にまとまってきて、私の手から生まれるものも、描きたいものの方向に素直に歩けるようになったと感じています。

これはやっぱり絵を描く時間が、絵について考える時間が戻ってきたことと、山田塾のおかげが大きいなあ、と感じています。

フリーになって、絵を描く時間ができて、特にお仕事で絵を描かせていただく機会が一気に増えました。仕事で絵を描くときは、自主制作で自由に描くときとは別の脳みそを使います。言語化するとしたら、自主制作が自分と向き合うもので、仕事の絵は世間と向き合うもの、という感覚があり、自主制作では使っていなかった脳の回路を動かす必要がありました(ここを動かすために、私にとってはお勤めの経験は本当に大事でした)。

山田塾については、有料の講座につきどこまで書くか悩ましいので詳細は避けますが(イラストレーターの大先輩、山田博之さんによる全10回の講義で大変おすすめです)、ともかく「無理に何者かになろうとしなくて良いんだな」と思えるようになりました。恥ずかしがらずにもう少し率直に言ってしまえば「かっこいい絵お洒落な絵が描けなくてもいいんだ」と思えるようになったんですね。

そして個展に際してひと連なりの自主制作と向き合うことで、ここ数年焦ってうろうろと道に迷っていたところを、落ち着いて明るいほうへ歩いていけるようになったのだと思います。よかったよかった。

仕事として絵を描かせていただいている身でこんなことをお言うのはあまり良くないかなぁと思い、
渦中にいる時はSNSに書いていなかった(多分)のですが、一応脱出できた気がすることと、自分にとって大事なことのように思ったので、ここに残してみました。この期間に絵を頼んでくださった方が気を悪くされたら申し訳ないので、ここ2年で描いた絵の出来が悪いと思っているわけではないのです、ということだけは書いておきます。


個展直前に感じていたこと

個展と関係あるようでないような話がとても長くなりましたが、ふたつめに個展直前の8月の終わりに感じていたことを。実はnoteの下書きに入れていた記事があり、これ公開しておけばよかったなあ、と思ったので、ここに掲載しておきます。推敲せず勢いで書き残したものをそのまま載せてるので、半目くらいで読んでください。


2023.8.28

個展まであと少し。

絵を描く時、
スケッチではなく、落書きでもなく、1枚仕上げる時。

新しい発見に満ちていて、
同時に悩みにもたくさん出会う。

これはどう表現しよう?
この描き方、上手く行ったから今後に活かせそう。
等々。

仕事を始めたての頃は、
早く手慣れて「これならこうすればいいな」とすぐに浮かぶようにならなくては、と思っていたのだけれど、
最近はそれはそれで危ういことだな、とも思う。

どんなに人気があっても、停滞は衰退の始まりで、
常に人の目を集め続ける人は、いつまでも挑戦を繰り返している。というのは前職でひしひしと感じたことでもあります。

仕事として続けていく上で、慣れてスピードを上げていかなくてはやっていけないことももちろんあるけれど、慣れすぎてもいけないんですよね。

と、まあ3年目の初個展を控えた身で考えることでもないかもしれませんが。

なんでこんなことを書いたかというと、
個展の絵を描いていて、

「これはめちゃめちゃいいラフが仕上がった! 過去一いいかもしれない。」と思っても、2、3枚と続けていくうちに、もっといいなと思うものができたりして。全然手慣れないけど、これはこれでいいことかも、なんて思ったりしたのです。

というわけで、これまでで一番いいかも、という絵が並ぶ予定ですので、ぜひ見ていただけたら嬉しいです。


終わり方がなんだか強気で小恥ずかしいですが、個展前はこのくらいのテンションを保たないと不安で大変だったし、なんとなく編集せずに残しておきたいなと思ったのでそのままにしました。

前章で書いたもやもや低迷期を抜けて、新しいところへ足を踏み入れられた感じがしたのが、今回の個展『つづく、つづく』であり、その感覚を、上の文章を書いていた時期にすでに少し感じていたのだろうなあ、と思います。

正直に書くと、DMの絵はまだ少し迷っていて、以降に描いた絵の方がなんとなくこれから行きたい方に近いような気がしています。DMの絵も、それはそれで気に入ってるんですけれど。

DMの絵

今まで、描きたいけど描けなかったもの。描き方がわからなくて、ひょっとすると描きたいものとしてイメージを結べていなかったものが、今回の個展で形にできたような気がしていて、それがすごく嬉しいです。本当に間に合うのか、形にできるのか、不安もたくさんありましたが、なんとか無事に「今できる最大限」ができたように思います。

今回の個展で、一番気に入っている絵

これはSNSでもつぶやいていましたが、私はなんだかんだ私の絵が好きなので、これからも一緒に歩んで、育てていきたいなと思います。これからも見守っていただけたら、とても嬉しいです。






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