波多野爽波俳句全集を読む⑤-1
第四句集「一筆」以降に発表された句が補遺として収録されています。補遺の選者は岩田奎さん。並び順は、年代が特に記載がありませんでした。
※(2024.08.14加筆) この補遺は、『鋪道の花』から『一筆』以後までの未発表作から選んだものとのコメントをいただきました。
「一筆」以降の句は、「写生」のあまりに、一物仕立てというより、景全体を切り取ることで生じるような、取り合わせの跳躍がぶっ飛んでいる句が多くて、個人的に一番心惹かれたパートでした。沢山頂いてしまいました。
一つにまとめようと思ったのですが、どうしても落としきれないので、このパートは2つに分けて掲載しようと思います。
「レースの女」は、第一句集「舗道の花」の「春暁のダイヤモンドでも落ちてはおらぬか」に戻ってきたかのような定型を外れた句なのですが、さらにそこから自由に「写生」をしているのが印象的。
「種痘して」「ヘッドライト」「星樹点滅」「晩夏光」「蟻わたる」「メーデー見下ろす」あたりの句は、まるっと景を写生している句だと思うのですが、A視点、B視点のようなものも感じます。大きな景をまるっと写し取っているような感覚。
「どこまでも」の句は、近景の「写生」、内の「写生」、遠景の「写生」となってて、唐突な「疲れる」の措辞に実感があって、フフッとなってしまいます。
「パンと牛乳」の句は、改めて読み返してみて、
田島健一さんのこの句に感覚が近いのではないかなと感じました。私は、田島さんのこの句のほうを波多野爽波の句よりも先に知ったのですが、振り返って、ああ田島さんのこの句も、もしかしたら「写生」だったのかも、と考え始めました。
後半に続きます。
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