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あがたの森考古学ゼミナールで聞いた松本城の話。

 「あがたの森考古学ゼミナール」は昭和54年に始まって、今年で第43回めの歴史ある市民講座とのこと。ファーストガンダムと同い年だ。
 今回のテーマは『発掘から見えてきた新たな松本城の実像』。13:30から1600まで。参加無料。
 行ってみたら私しか参加者いなくて、静まりかえった教室で不機嫌な講師とマンツーマン逃げ場無しの二時間半だったらどうしよう…。
 と、心配しながら向かったのだけど取り越し苦労もいいところで、講堂は大盛況の超満員だった。

 大正時代に建てられたレトロな建物の中で中世~江戸にかけての話を聞けるなんて、贅沢な気分になれた。

大正11年竣工の講堂。

 松本城の「丸馬出し」は武田氏が作ったもの。
 というのが従来の定説だったけれど、近年の発掘調査の結果そうではないらしく、どうやら石川氏が作ったらしいことが分かってきた…! というのが今回の講座の目玉トピック。
 丸馬出し付近を掘った結果、武田氏の時代の遺構・遺物は出てこなかったんだとか。

最近は天守のてっぺんにトンビが居着いてて、よくピーヒョロロー…と声が聞こえる。

 松本城≠深志城、ということも最近の調査の結果わかってきたらしい。堀の場所とかぜんぜん違うのだそう。

 お城の前のファミマを掘ったらこれが出て来た、とか、パルコの下を掘ってみたらこうなっていた、とか、ご近所の話ばかりだから楽しく聞けた。お菓子の開運堂さんの場所にはかつては砥石問屋さんがあったらしい。
 問屋さんというのは物品が素通りしてしまうから普通は調べづらいのだけど、この問屋さんは大火事があったようで、焼けて売り物にならなくなった砥石が4859本も出土したんだとか。
 調べてみたらこれは群馬県産の「幕府御用砥石」で、群馬にはその当時唯一の幕府公認の砥石屋さんがあって…と、いろいろ話が広がって楽しかった。
 開運堂さんもこの話をとても喜んで、新装開店の日取りを10月14日(「といし」の日)にしたんだとか。
 それだけじゃなく、四角い最中にさつまいも餡を詰めたその名も「といし」というお菓子を記念に発売したとのこと。美味しそう…。
 発掘された砥石は本店の店内に展示されてるらしい。

開運堂のレモンロール(夏限定)。おいしい。

 江戸時代の松本の名産品は煙草だったという話も面白かった。品質の良さとブランディング戦略の上手さで一時期は江戸に入荷する煙草の20%を占めていたとか。

 二時間半もじっと聞いてられるか不安だったけど、さらに二時間半続けて聞きたいくらいだった。いい日曜日だった。 

【追記】
 開運堂の砥石の話、検索したら奈良文化財研究所のサイトに試掘調査報告書があった。
 そのほかにも昨日聞いた話があれこれ載ってて復習にうってつけなので自分用にリンク貼っときます。