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読書日記ログ(2023年11月)古本屋奇談収集家、ハングル講座、血の池蓮、佐野洋子、川本喜八郎


2023/11/23

“「料理に心や愛情は意識しない。必要なのは、頭と力、そして柔軟性です」”

(『きょうの料理』2023年12月号 p.158より抜粋)

 伝承料理研究家の奥村彪生さんの追悼記事より。まともなこと言う人だなあ…。知らなかった人だけど、図書館で探して読んでみよう。

2023/12/21

 윤성근著『헌책방 기담 수집가(古本屋奇談収集家)』読み進め中。
「本を探す代わりに、その本を探す理由を話してもらう」という方針の古本屋である著者が集めた「本と、それを探す人」の実話たち。

 1冊目のエピソードは1963年版の、日本の作家「구라다 하쿠조(くらだはくぢょう)」の本を探していた老人の話。
 日本で勉強したあと、朝鮮戦争が停戦してから韓国に戻ったものの、学問を修めた人間には軍事政権下で生きることは辛かった。この本が無かったら自殺していたかもしれない、と話す老人。

《弾圧と本》の組み合わせは台湾のゲーム『返校』もそうだったな…と思い出す。
 つらい話を、つらかった、と話せる時代であることが当たり前ではないんだ、と思う。

 しかし日本の作家の

 구라다 하쿠조(くらたはくぢょう)

 って誰…?と、思ったら、

 倉田百三だった。

2023/11/20

 本屋さんの文庫新刊棚に李箱の作品集『翼』(光文社古典新訳文庫)があったから一瞬買おうとしたけれど、収録作これっぽっちだったらRIDI(韓国の電子書籍アプリ)で原書買って頑張って辞書引いて読むほうがお買い得な気がするな...と思ってとりあえず帰宅。

 RIDIで李箱をいくつか試し読みするうち、李箱はやっぱり文章も作風も読みやすくはないな...と思い直し。

 何か他に、気軽に読めそうな楽しそうな本は無いかな、としばらく彷徨って、買ったのは韓国の古本屋さん店主윤성근さんのエッセイ『헌책방 기담 수집가(古書店綺譚収集家)』。
 まだ「プロローグ」をたどたどしく読んでるところだけど、レビューを見た感じだと『金魚屋古書店出納帳』みたいな本なのかな。(金魚屋はフィクションで、こっちはノンフィクションのようだけど)

“新刊書店は人が本を選ぶ場所だが、古書店は反対に、本が人を選ぶという面白いことが起こる場所だ。”

(윤성근『헌책방 기담 수집가』 프시케의숲,プロローグより抜粋して拙訳)


 書影を貼りたくて原書タイトルで検索してたら著者のインスタがあったからそれを貼ろうとしたところ、衝撃の事実を発見。
 邦訳出てた...。
 まあせっかく買ったんだから、頑張って韓国語で読もう。

2023/11/17

 ラジオの語学講座の聴取回数100回達成。

記念スクショ。

 達成と言っても、毎回ノートとテキストと辞書を広げてしっかり取り組んでたわけじゃなくて、食器洗いながらとか猫先生と遊びながらも含めて100回。
 気負いすぎないのが継続のコツなんだろうなと思う。語学に限らず。

2023/11/17

 私の短編『血の池蓮』を寄稿させていただいた『イーハトーヴの夢列車 三号車』(文学フリマ岩手事務局さま発行)がポストに届いてた! 嬉しい。
 書いたのがもう一年以上前だから、自分が書いたお話だけど、旧友と「再会」したみたいな気分。

『血の池蓮』お試し読みページはこちら。

2023/11/11

“天国に住んでいる人は地獄のことを考える必要がない。けれども僕ら五人は地獄に住んでいたから、天国について考えつづけた。”

(チョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』河出文庫、p.94より抜粋)

 店番しながら読んでるチョ・セヒの本、すごくいい。
 思わず今どこにいて何してるのか忘れるくらい。

(注:これは #文学フリマ東京37 で、自分のブースで店番してたときのつぶやき。)

2023/11/07

 歴史が好きな人・歴史に興味がある人=大河ドラマを観てる人、という前提で話をする人にちょくちょく出くわすけれど、ネズミが好きな人がミッキーマウスを好きだとは限らないでしょうに...と心の中で呟く。

「歴史が好きなんですね」と言われることも多いけど、それについても(どうなんだろう...)と考え込んでしまって、「どうなんでしょう...」としか答えられない。
 私は人間として生きてるけれど、だから人間が好きということにはならない。
 歴史を勉強したり、歴史を題材にした本を書いたりしているけれど、だからって「好き」と言っていいのかどうか分からない。
(注:とくに何の本を読んだという読書日記ではないけれど、本を読んでいてふと思って書いたことなのでここに収録。)

2023/11/06

 きょう買った本。『菅江真澄 図絵の旅』。図版が全部カラーなのに本体価格1500円とは角川ソフィア文庫さん太っ腹。

右の図録については12月のログに収録する予定。


 菅江真澄の旅先からのインスタへの投稿を見るような楽しい本。
 東洋文庫の遊覧記(全5巻)も欲しくなってきた。

 そういえば、リニューアル後の今の売店にもあるのか知らないけど、松本市博物館の売店で以前買ったレターセットには菅江真澄が描いた七夕人形のイラストが印刷されてた。

『幕末下級武士の絵日記』の「石城日記」もそうだし、こういう、本職の絵描きじゃない人が描いた絵と文がすごく好き。

2023/11/05

 NHKラジオのまいにちハングル講座を聞いてたら(そういえば)と思い出して、久しぶりに佐野洋子のエッセイ『役にたたない日々』再読。療養中の佐野洋子が『冬のソナタ』にハマったくだりが大好き。

“話はめちゃくちゃである。ヨン様受難の歴史である。交通事故に二度も遭い、二回とも、恋人チェ・ジウに会いに行く瞬間である。あと三メートルで抱き合える時にでかい車にはねとばされる。”
“ああここにヨン様が現れて欲しいと思うところへ、ヘリコプターにのって来たのか肩に羽を生やして来たか、女から十メートル位のところに、眼鏡の奥から渾身の力をこめたまなざしで派手なマフラーを巻いて立っているのである。”

(佐野洋子『役に立たない日々』朝日文庫、p.117より抜粋)

 これを読んだ十年以上前には韓流ドラマってまだ一度も観たことが無かったのだけど、これを読んだらすごく観てみたくなったと同時に観るのが怖くもなって、結局今もまだ観た事が無い。
 しかし佐野洋子の文章は切れがあっていいなあ、と大笑いして読みながらふと巻末を見たら、命日が「11月5日」とあってびっくりした。今日だ。
「本に呼ばれる」ことって時々ある。

#読書

2023/11/01

“僕としてはいろいろなアイデアが生れています。これは人形映画の分野で、このあたりではやってない方向で、多分これは自分の唄う唄になるでしょう。”

(川本喜八郎『チェコ日記&チェコ手紙 人形アニメーションへの旅/魂を求めて』作品舎 p.258より抜粋)

「自分の唄う唄」
 この言葉、岡山の古本屋さん「蟲文庫」の田中美穂さんのエッセイにも出てくる。

“「蟲文庫さんて、そんなにたくさん本があるわけじゃないし、品揃えもわりと普通だし、なのになんでこんなに長く続いているんでしょうね?」と、冗談めかして尋ねられました。(中略)それはもしかしたら、めちゃくちゃな調子っぱずれでもいいから、蟲文庫は蟲文庫の歌をうたおうとしてきたからではないかと思うのです。”

(田中美穂『わたしの小さな古本屋』ちくま文庫 p.196より抜粋)

 たくさん売れるとか、バズるとか誉められるとかじゃなく、一生続けていくのならそれが一番大切なんだと思う。
 NHKの人形劇『平家物語』とか『三国志』の人形を作った人の無名時代のぼやきや抱負が詰まっている『チェコ手紙&チェコ日記』、読むとやっぱり元気が出る。

蟲文庫さんの羊歯(シダ)のぬいぐるみ。

#読書

2023/11/01

 図書館で借りた本と、毎年秋の読書週間に本を借りるともらえる松本山雅FCしおり。

これをもらうと秋も終盤。

 川本喜八郎『チェコ手紙&チェコ日記』はすごく好きな本なのだけど、絶版で買えないから時々図書館で借りて再読。 国立民俗博物館の図録『驚異と怪異』は、放送大学の博物館概論にこの展示の話が出て来て面白かったので。工作舎っぽくて好き。

 行き帰りの景色が今日も綺麗だった。