見出し画像

絵を描くこと〜行為と効果

 昨年末、ちょっとした事件が発生し、悔しさと怒りと後悔と、様々な負の感情に支配され、気がついた時には大好きな絵が描けなくなっていた。

 毎朝少しだけ早起きして、家のことを始めるまでに絵を描くのがささやかな楽しみの一つなのだが、目の前に並んだ画材を眺めながら、1時間くらいぽーっとしてる日が続いた。あれ?これはヤバイかも..。

 絵がうまくいかず悩んだり迷ったりする事は今までにも沢山あって、その抜け出し方は、実は知っている。でも、根本的に描きたいと思わなくなるなんて..しかも、その状態を焦りもせず、もういいかな?別に描かなくても..って思ってる自分を見つけて..正直驚いた。

 絵を描くって心の行為なんだなぁ。

 描かずにいると画力が落ちるから、とりあえず何か描こうと思って、随分前に描いた下がきを引っ張り出す。怒りや悲しさでへとへとだった私の心は、やさしい絵を欲しがっていた。家族のことを考えるのにも丁度ぴったりのテーマだ。真っ赤なニットも暖かくていい。よし描こう。

 そうやって久しぶりに描いた絵は、大好きなBUMP OF CHICKENの「魔法の料理」のミュージックビデオに登場する藤原基央さんの絵だった。

 大体の形が取れてるところからスタートしたはずなのに、一向に前に進まない。描いても描いても、何かが違う。違うところが分からない。「いつも迷路、終わらないパレード」などと、BUMPの曲(流れ星の正体)が頭を巡る。いや、今はその曲じゃないよ、と一人ノリツッコミをしながら、なんとかそれらしい線を見つけ、ひとつひとつ重ねながら、どうにか納得のいくものに近づいた。

 絵は、苦しいけど、楽しい。見えない答えを探すこの行為に、没頭する時間が、私はとても好き。さらに、描いてる間は、心配ごとや不安な事、嫌いな自分が心から消えていて、泣いて暴れるほど辛かった事も、少し冷静に見る事ができるようになっていた。

 描くことをやめないでよかった。BUMP OF CHICKENが好きでよかった。

 もちろん、現実世界に起こった問題は絵を描いても解決はしない。それはよく分かっている。でも、絵を描く行為は、私の心を守ってくれたし、自分の問題と向き合うヒントを与えてくれた。

 ようやく絵が仕上がったあと、「魔法の料理」を聴いてみたら、今までよりもずっとやさしく響いて、やっぱり泣けてしまった。

 そんな話もまたいつか。

画像2

 (添付のイラストは自作)


 


    

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?