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栃木県南部、蔵の街として知られる栃木市は、江戸期を代表する浮世絵師・喜多川歌麿ゆかりの…
第1話、 品川沖の雲間に満月がかかり、凪いだ波間には幾艘かの小舟が浮かぶ。長閑な遠…
第2話、 5年前に遡る。 どんよりとした雲が低く垂れこめ、陽光もぼんやり陰っている…
第3話、 大文字屋は吉原遊郭内の京町1丁目にある総籬の大見世だ。間口13間、奥行22間…
第6話、 歌麿は筆を止めては版下絵を睨み、時折、溜息をついている。隅田川を望む料亭…
第7話、 「何とも奇妙奇天烈、奇想天外と言いますか、破れ傘が宙を舞っているのですか」 …
第8話、 「でかした、歌麿。見事な挿絵だ」 蔦重は目を瞠った。 藤豆に絡みつく毛虫、露草の陰から舌を出して蜥蜴を狙う蛇、1匹の蛙は蓮の葉で羽を休める黄金虫に今にも襲い掛かろうとしている。 草花と小動物が絶妙に配置され、いずれの生き物も精緻に描かれ、躍動感、生気に溢れている。撰者の宿屋飯盛をはじめ赤良、菅江ら当代一流の狂歌を引き立て、尚且つ、挿絵だけでも人々を魅了する独自の世界を創り出している。 「身に余るお言葉で」 歌麿は込み上げる歓喜に、感極まり目頭を押さえた。
第9話、 「どなたの墓をお探しかな」 歌麿が振り返ると、良恵和尚が柔和な笑顔で尋ねた…
最終第10話、 「ところで、これまでの身に余る援助にお返しがしたい。絵師として一本立ち…