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人生にスパイスを与える、映画の名言#007 今、僕が分かってることを/もっと若い頃に知っておきたかったよ/今、僕が覚えてることを/もっと強い時に知っておきたかったよ

I wish that I knew what I know now
When I was younger
I wish that I knew what I know now
When I was stronger

今、僕が分かってることを
もっと若い頃に知っておきたかったよ
今、僕が覚えてることを
もっと強い時に知っておきたかったよ

mov007_アートボード 1

  マックス・フィッシャー(ジェイソン・シュワルツマン)は、小中高一貫教育の名門私立ラッシュモア校に奨学生として通いながらも、あまりに多くの部活動に熱中しすぎ、成績は落第ばかりで放校寸前。校長からも呆れられる存在ながらも、その才能あふれる天才っぷり(?)は学園内でも有名だった。ある日、彼は新しく学校に赴任してきた女性教師ローズマリー(オリヴィア・ウィリアムス)に一目惚れし、年上の彼女に猛アタックを開始する。そんな中、同級生の父親でお金持ちながら、家族からも疎まれてるサエない中年オヤジのハーマン・ブルーム(ビル・マーレイ)と仲良くなるが、彼もローズマリーに恋心を抱いてしまい、二人の間でハチャメチャな恋愛戦争が勃発することに・・・。

 今ではアメリカ映画を代表する"巨匠"の域にまでたどり着いた、唯一無二の映画作家/ウェス・アンダーソンの長編監督第二作『天才マックスの世界』。後に監督する『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ライフ・アクアティック』『グランド・ブタペスト・ホテル』等で描かれる独特のユーモアやカメラワーク、シンメトリー(左右対称)にこだわった画面構成が明確に確立されたのが、この傑作コメディだ。
 本作が公開された1998年~99年は、20世紀最後において、後に伝説となるような"カルト映画"が豊富な期間だった。本作も含め、アレクサンダー・ペイン監督の『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』、マイク・ジャッジ監督の『リストラ・マン』、ベン・スティラー主演の早すぎたスーパーヒーロー映画『ミステリーメン』、デヴィッド・O・ラッセル監督の戦争コメディ『スリー・キングス』、不謹慎すぎるトッド・ソロンズ監督のブラック・コメディ『ハピネス』、そしてデヴィッド・フィンチャー監督が放った大傑作『ファイト・クラブ』。99年には大ヒット作『マトリックス』『シックス・センス』等もあったのだから、どれだけ映画ファンにとって幸せな時だったか計り知れない。

 特にコメディ作品に関して、日本では未公開のままVHSやDVD直行で、大した宣伝もないまま発売された作品も多かった(21世紀になっても、この状況はあまり変わらない)。アメリカでも劇場公開当時の興行成績は久しくない作品も多かったものの、後にVHSだけで数百万本を売り上げ、その後のアメリカ文化に根付いた作品(『リストラ・マン』がいい例だ)もあった。しかしながら、現在においても日本での認知度が低いのは寂しい限り。幸いにも現在では多くの作品が配信等で鑑賞可能となり、気軽に触れられるため、お暇な時にでもチェックして頂ければと思います。

 今回表題に選んだのは『天才マックスの世界』のサントラで使われている、フェイセズ(Faces)の「Ooh La La」。本来フェイセズのボーカルはロッド・スチュワートだが、この曲のオリジナル版ではロン・ウッド(現/ザ・ローリング・ストーンズのギタリスト)がボーカルを担当している。アンダーソン監督は常に自作の選曲にも常にこだわり、本作では60年代UKロック・バンド/ザ・クリエイション(The Creation)の「Making Time」を、主人公が参加してる部活動紹介シーンで、インパクトのある使い方をしたり、キャット・スティーブンス(Cat Stevens)やジョン・レノン(John Lennon)、さらにはフランス人俳優兼歌手のイヴ・モンタン(Yves Montand)の楽曲「Rue St. Vincent」(白いバラ(サン・ヴァンサン通り))を流す等、とにかく劇中の音楽センスにも脱帽させられる。音楽をセリフ代わりに使うような演出も多いので、今回選んだ「Ooh La La」も、あまりにも完璧なタイミングで使われているのも見どころ。その歌詞の意味を含めて本作を楽しむと、より理解が深まるはず。色々ウンチクを書いた次第ですが、気楽に笑って楽しんで頂きたい一本です。

-天才マックスの世界(1998年)
監:ウェス・アンダーソン
脚:ウェス・アンダーソン、オーウェン・ウィルソン
出演:ジェイソン・シュワルツマン、ビル・マーレイ、オリヴィア・ウィリアムズ

この記事を書いた人
大石盛寛(字幕翻訳家/通訳)
通称"日本字幕翻訳界のマッド・サイエンティスト"。
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