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10代に手渡したい本・1/7日目

これから「10代に手渡したい本」をテーマに、1日1冊、計7冊の本を選んでいきます。

これらは、執筆中の共著『きみがつくる きみがみつける 社会のトリセツ』でも紹介する(かもしれない)本たちです。


わたしが10代に手渡したいのは、次の3つを満たしている本です。
・古びない本
・人を生かす本
・よい物語の本

そこだけ大事にして紹介していきます。

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さて、1日目はこちら!

『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』西村佳哲(弘文堂)

自分の仕事をつくって生きることをテーマにしたインタビュー録です。
同じ筆者の『自分の仕事をつくる』という著書もあるのですが、10代の人にはこちらのほうが読みやすいだろうと思います。

いろいろな仕事に携わる人たちが出てきますが、インタビューで語られているのは、「どうしたらその仕事につけるか(〇〇という職業になるには)」という話ではありません。

たとえばこんなふうです。(すべて本文から引用)

"やりたいのに出来ていないことや、ああ在りたいのにまだそうなれていないことを実現している他人の姿を見ると、私たちは、"眩しさ"を感じます。その輝きから目を離せなくなる時もあるかもしれない。けど光の方に目を凝らすのではなく、その光で自分を照らして、手元にある自分の仕事や働き方、そして生き方をあらためてよく見てみる。"
"仕事になって初めて本人にもわからなかった自分が出てくる。人の評価を受け、金銭的な価値で測られもすることで、能力が引き出されるんだと思います。"
"自分をしていない時がしんどい。自分の生きることをしてない時。自分が生まれてきたことを全うしてない時が。”
"「嬉しい」感じ。自分のことを知れて嬉しいとか、僕がひらいたワークの中で人が笑ってくれたり、幸せそうな顔をしてくれる瞬間。終わってから「良かったですわー」と言われることじゃなくて、やっている最中にそんな様子が垣間見えると、「俺もおっていいし、この人もおっていいんやな」って感じられる。"
"生きてゆく活力を、その仕事から頂かないということです。そこがちゃんとしてないと、特にソーシャルワーカーというか、私のようなやり方の仕事はつづかない。"
"バイト先でまかないのご飯を食べながら、「どうなんのやろ、俺の人生」っていつも思ってた。ただ、もしもう一回チャンスがあったら、次は努力し続けようってずっと決めてた。"
"僕が育ったような街でいうところの「大人」は、こんだけ出来るとか、稼げるとか、世の中動かせるとか、そういうことではない。よき先輩に成り得るか。大人になるということは、誰かを大人にしたということでしか、なれへんのです。"


この本が書かれたのも、わたしがこの本に出会ったのも、今から10年前。2010年12月。東日本大震災もまだ起きていない頃です。インタビューを受けた方々は、今は仕事や働き方や場所を変えながら、いろんな考えを発展させながら、日々変化しながら生きておられることと思います。

しかし、この本に収められた語りはまったく古びていない。10年以上経った今も、変わらず熱を発し続けていることに、いつも本を開くたびに驚かされます。

社会のシステムが大きく変わる中、この先、つくり手に回っていく10代の人たちにとっての働く、仕事をする、生きるは、表面的には変化していくかもしれない。でも、「どの職業を選ぶ」「どこの組織に入職する」「どんな人材が必要とされる」のもっと手前には、その人にしかない原動力や原体験がいつもあります。

働くも生きるも、喜びからはじまり、重なり、連なっていく。
働くことを通して、自分と他の人の命を喜ばせる。
その本質はいつの時代も変わらない、とわたしは思っています。

どうぞページをめくってみて、気になる言葉があれば、その人の語りをしばらく聴いてみてください。そして問うてみてください。

「あなたは、どんなふうに働いて生きてゆくの?」


▼昨年のブックカバーチャレンジ。好きな本をひたすら並べています。