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人と組織づくりLabo. 第3回:ひとりではできないことをみんなで

 もっと人と組織を笑顔にしたい!「人と組織づくりLabo.」では、皆さんのリアルな経験を共有しディスカッションしながら、一人ひとりの失敗や成功をみんなの糧にしていきます。

 3回目の今回は、『人と組織における協業と理念の哲学』をテーマに、「協業」という取り組みにスポットをあて、そもそも協業とは?協業先と信頼関係を築くためには?協業から成し得るものなど、参加いただいた皆様とディスカッションさせていただきました。

※今回事情により、ご登壇いただいた方の御名前、企業様名は公表できません。ご了承ください。

第3回:某社Aさんのお話

 突然ですが「ランチェスター戦略」というビジネス戦略をご存知でしょうか?ごくごく簡単に説明すると以下のように定義されます。

戦力に勝る「強者」と戦力の劣る「弱者」にわけ、それぞれがどのように戦えば戦局を有利に運べるのかを考えるための戦略論。「同じ武器なら勝敗は兵力数で決まる」という前提をもとにした「強者の戦略」と「弱者の戦略」に分けられる。

 今回のAさんのお話は、ある意味、新しい観点での「弱者の戦略」ともいえるかも知れません。その観点こそが「協業」です。「協業」自体は決して目新しい取り組みではなく、例えばIT業界においては、複数のIT企業が各々の強みを持ち寄り「協業」することで、ひとつのシステム開発案件を遂行することは日常的に行われています。
 ただ、その「協業」をこれほど徹底して、しかも互いの利益や目論見よりも、「利他の行」を最優先して取り組まれているケースは意外と稀かも知れません。
 「弱者の戦略」を引き合いに出したのは、Aさんの取り組まれている「協業」というものが、「(企業としての)規模がないとできないこと」に対する戦略ともいえるからです。
 商売の基本サイクルである「創って(開発)」→「作って(生産)」→「売る(販売)」(「V字回復の経営」 三枝匡(著)より)の各工程において、一社だけではできないこと、困難なことを、同業他社同士で「協業」することで実現していく。「ひとりじゃできないことをみんなで」実現していく。そうやって、「大手」とも同等に戦えるようになるのです。
 Aさんはそんな「協業」という名の「信頼関係」を築いていかれました。協業企業数200社という規模にまで発展しているのは、そんな「信頼関係」があるからこそと言えるのではないでしょうか。

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信頼と奉仕

 では、そんな企業同士の「信頼関係」をどうやって構築していったのか?そこにAさんの所属する本部企業様としての驚くべきスタンスがあります。
 そのひとつが「利益は常に一定額」という考えです。いかに加盟企業が増え、PB商品などの開発~販売が順調でも、本部企業としては、一定の利益を得られればOKという方針を貫かれています。それを超える利益は、「信頼」と「奉仕」という考えのもと、加盟企業様に還元されているそうです。だからこそ、各加盟企業様にとっては、主体的に協業に参加する目的意識が醸成されたり、成果を自らつかむことで企業としての力が付き生き残っていくことが可能になったりという好循環が生まれます。

よく集まり、よく話しあう

 また、加盟企業様同士の関係構築、関係維持のために「よく集まり、よく話しあう」ための階層別(社長同士、管理職同士、エリア毎、商品毎など)会議が、年間約2,500回も開催されているそうです。特筆すべきは、そのなかで中止となったケースが、「47年間の歴史のなかで、たった4回しかない」ということです(地震や台風などの自然災害、本年のコロナの影響のみ)。この「よく集まり、よく話しあう」という取り組みは、このオンライン・コミュニケーションが発展した時代においても、やはり大切なことなのではないかと思います。

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「家族」のような関係

 そんな企業間の「協業」関係を構築してきたAさんの会社様は、社内ではどんなコミュニケーションが取られているのか?そのお話を伺って「そりゃ強いわ」という思いを強く持ちました。
 まずは、やはり代表の方の強い「想い」があげられます。その思いに共感した社員同士が、仕事を通じてさらにその「想い」を強くする。ここでもそんな好循環が生まれています。驚くことに、社内ではこの「想い」という言葉が毎日のように飛び交っているそうです。それは当然採用にも反映され、「想い」に共感する人が集まり、残っていく。それは自然と「家族」のような関係に育っていく。「家族」だから、社員全員の顔と名前が分かるように社員数も上限を設けたり、「役職名」は使わず「敬称」で呼び合ったり。形ばかりではなく、企業文化、企業風土として根付いているのは、代表の方やAさんの長年の地道な努力の賜物でしょう。

「異体同心」

 さて、最後になりますが、Aさんが実践されている「協業」の重要な要素のひとつに「利他の行」があります。自分が救われるよりも、まず他者を助ける行いです。「異体同心」という教えのもと、それは協業企業にも社員にも伝わり、単なる助け合いを超えて、他者を救うことが自らを救うことになり、自らを救うことが他者を救うことにもなっています。ある意味、会社のようで会社じゃない組織といえるかも知れません。

 Aさんのお話を伺っていて、また皆さんとのディスカッションを通じて、会社と会社の「協業」だけでなく、個人と個人の「協業」、一人ひとりが強みを持ち寄ってひとつのことを成し遂げようとする「協業」が、今後の新しい組織体の在り方や働き方になっていくのかも知れない。そんなことを強く思いました。

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最後に意外と重要な「余談」

 余談ですが、冒頭に紹介したIT業界の「協業」は、「大手SIer」が頂点に立つ所謂「多重下請け構造」で成り立っている例がまだまだ多く、Aさんが推進されている「協業」とは本質的に異なるのかも知れません。もっと言えば、「多重下請け構造」が問題として取り上げられるケースの多い、IT業界、建設業界などこそ、この事例に学び、他の業界でも積極的に「協業」という取り組みを推進し、「Win-Win」から「Happy-Happy」を目指す必要がありそうです。ひとつの問題提起として、追記させていただきました。

次回は11月18日(水)19:00~

 今回も参加いただいた皆さんと、Aさんが撒いてくれた「タネ」をもとにディスカッションすることで、新しい気付きが生まれ、新しい学びにつながったと思います。そう考えると、この「人と組織づくりLabo.」自体も、「ひとりじゃできないことをみんなで」実現する「協業」のひとつの姿と言えるかも知れませんね。

 今回の「人と組織づくりLabo.」には、学生の方も何人かご参加いただきました。学生の皆さんも、クラブ活動などを通じて「チーム」というものの在り方に苦労されている方、悩まれている方もいらっしゃると思います。きっとそんな方にも参考になると思いますので、「人づくり」、「組織づくり」に悩んでいる方、その悩みを共有し、笑顔あふれる組織を創りたいと考えている方、ぜひ是非ご参加をお待ちしております!

※Zoomでのオンライン開催となります。別途、Twitterの「人と組織づくりLabo.」公式アカウントからご案内差し上げます。

人と組織づくりLabo.
https://mobile.twitter.com/hitososhikilabo

この記事は野口和美が書きました。
https://mobile.twitter.com/@wanovation_2020

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