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[百万件のクチコミが語るホテル顧客満足度と構造]1.はじめに「クチコミ満足度調査」分析手法について

急用が入り、しばらく更新できていませんでしたが、再開します。

ちなみに「急用」というのも「旅行」に絡むものです。観光業とは少しズレますが、追々記事にしてみたいと思っています。


はじめに

これまで触れてきました通り、私の記事の中心は、ホテル予約サイトに投稿されたレビュー(クチコミ)分析です。いよいよその本題に入っていこうと思います。

これまで、noteで観光業について書きたいと思った背景、つまり日本の観光産業の大きな成長ポテンシャルや、昨今の円安を含む経済動向について書いてきました。また、旅行や日本の自然が大好きな私が、観光産業を応援したい気持ちを強く持っていることも伝えてこれたかと思っています。

日本の観光業を応援する立場で観光産業のメインプレーヤとなる観光ホテル・旅館が提供するモノ・コトに対して、利用者の満足度やそれを左右するファクターが何であるのか、など分析してまいります。

前の記事でも触れたかと思いますが、私自身、業種は異なりますが、お客様満足度の調査・研究・戦略策定・実行推進、を業務として7年ほど取り組んできた経緯があり、この記事が観光ホテル・旅館の満足度向上に役立つものと確信しています。

また、旅行好きな一般の方々にとっても、より良いホテル選びのガイドとして利用できるよう書いていきたいと思っています。

重回帰分析と呼ばれる統計手法や機械学習プログラム、生成AIなどを活用しての分析を行ってゆきますが、これら手段系の話には深入りせず、分析結果を中心にお話してゆきます。

あくまで分かりやすさを重視、専門知識を求めることなく、気軽に読める記事にしてまいりますので、お付き合いいただけますと幸いです。

本記事で採用する分析手法について

「手段系の話には深入りしない」と言った直後ですが、「手段系」の話をさせていただきます(笑)。もちろん、深入りはせず、また専門用語を使うことなく、分かりやすく語ってまいりますのでお付き合いください。

世界初の「クチコミ満足度調査」

本記事で採用する分析手法は「クチコミ分析」と呼ばれるものと「顧客満足度調査」と呼ばれるもので採用されている手法を合体させたものです。下図がそのイメージです。

ちなみに何かの前例に倣って、このような分析手法を採用したわけではないです。あくまで、私の実務経験だったり、ここ数年で獲得したプログラミングスキル、そし昨年来、注目を浴び始めた生成AIの利用経験から「こんなことができそうだ!」とヒラメキ、具現化してきた手法です。

従って、おそらく「世界初の試み」と思われます。と言いますか、前例に倣っているわけではないので、間違いなく「世界初の試み」です!

以下に「クチコミ分析」「顧客満足度調査」の概要に触れ、本記事で採用の手法について説明します。名前が無いと文章が書きずらいので、「クチコミ満足度調査」と名付けさせていただきます。

クチコミ分析について

まずはクチコミ分析の概要と特徴について述べたいと思います。下図で黄色で強調している部分です。

情報源としてはネット上に投稿される「フリーコメント」、つまりテキストが中心です。もちろん、Googleマップや食べログのように評価スコアを併せて投稿でき、口コミ利用者向けに評価スコアの平均値や分布が表示されるサイトもあります。

食べログでは「総合評価」に加え、「味」「サービス」「雰囲気」「コストパフォーマンス」などカテゴリごとの評価スコアまでカバーされています。

クチコミ分析の目的と手法

「クチコミ分析」については、一般の方や専門家含め、多くの人が一度は経験があろうかと思います。

その目的は、消費者の立場では「自分の口に合いそうなラーメン屋探し」だったり、「連休を家族と過ごす旅先のホテル探し」だったりします。また、ビジネスサイドの立場では「自社製品に対する満足度確認」だったり、「自社ホテル利用者のクレーム抽出」だったり、ですね。

私の経験上、また、ネットリサーチしたところからすると、「クチコミ分析」には「定石」と呼べるような手法は存在しないと思われます。

「クチコミ分析」の最も素朴な手段は、黙々とクチコミテキストを読み込むことです。また評価スコアが提供されている場合は、スコアの高い店舗や商品に絞って、黙々とクチコミテキストを読み込むことでしょう。

この場合、テキストを読み込んだ本人には明確なイメージが湧きますが、それを他者と共有することは困難です。

私の業務経験では、組織として「クチコミ分析」をアウトプットし、組織外含め広く共有する必要がありました。

そこで、一つ一つの口コミを「商品関係」「営業関係」「コールセンター関係」や「ポジティブ/ネガティブ」などに分類し、「商品への不満が削減される傾向が続いている」「営業への満足度が夏に低下する傾向が観見られる」など可視化(チャート化)する必要があり、これには膨大な工数が発生し、専門の担当者を複数雇用し、対応していました。

クチコミ分析のメリットとデメリット

私の経験やネットリサーチしたところからクチコミ分析のメリット・デメリットをまとめます。フリーコメント(テキスト)主体の情報分析であることに着目したメリット・デメリットです。

<クチコミ分析のメリット>
◇ SNSの普及に伴い、情報量が充実し、また無償での情報授受が可能
◇ リアルタイムで収集でき、必要な場合、迅速な対応が可能
◇ 具体的、詳細な情報が得られる
◇ 投稿者の自由な意見や感情に接することができる

<クチコミ分析のデメリット>
◇ 投稿者の個性や感情による情報バイアスの見極めが困難
◇ 分析結果の共有(可視化)に高度な専門性と多大な工数・コストが必要
◇ 詳細で細かな情報が得られる反面、全体を見渡すことには不向き

顧客満足度調査について

次に顧客満足度調査の概要と特徴について述べたいと思います。下図で黄色で強調している部分です。

こちらは、一般の方々が実施するものではなく、統計手法やデータ分析の専門知識を持つ専門家や調査会社によって実施されているものです。

一般の方が目にする機会ですが、「顧客満足度No.1」という言葉をお聞きになったことがあるかと思います。この評価スコア集計やランキングが「顧客満足度調査」と呼ばれるもののアウトプットの一つです。

「顧客満足度調査」と呼ばれるもののアウトプットにはもう一つ重要なアウトプットがあります。これについては以下で触れさせていただきます。

一般的で伝統的な「顧客満足度調査」について、以下、簡単に説明いたします。

顧客満足度アンケートの構造

例えば、乗用車ブランド別の「顧客満足度調査」を想定します。この場合、顧客アンケートは下図のようなツリー構造になります。

下図の通り、「総合満足度」が最上位にあり、その構成要素として「商品」「営業」「エンジニア」「コールセンター」、それぞれの評価があるという構造です。

これらをさらに細分化し、例えば「営業」であれば「商品説明」「態度/マナー」「コミュニケーション」についての評価もアンケート回答項目です。

顧客満足度調査の目的

向上すべきは「総合満足度」なのですが、「総合満足度」のスコアだけが判明したところで、より高い満足度獲得への道筋は見えてきません。

そこで、顧客満足度調査の目的は、
(1) 顧客満足度を知る
ことに加え、
(2) 顧客満足度向上に向けて強化すべきポイントと優先度を知る
ことがあります。

この2つの目的を達成するために、顧客満足度アンケートは上記のようなツリー構造になっているのです。

時折目にする「顧客満足度No.1」とか「顧客満足度ランキング」と言ったものは、顧客満足度調査のアウトプットのうち「(1) 顧客満足度を知る」を切り出したものです。

つまり「(1) 顧客満足度を知る」をTブランド、Nブランド、Hブランド、Mブランド、など競合ブランドについてスコア比較、順位付けした結果が「顧客満足度No.1」とか「顧客満足度ランキング」と呼ばれるものです。

カテゴリ別評価と総合満足度の関係

繰り返しになりますが、上記2つの目的を達成するため、顧客満足度アンケートは上図のツリー構造を持っています。

と言いつつ、スクロールして上図を見ていただくのも手間かと思いますので、下に再掲いたします。紙ベースの書籍と異なり、ページ数の制約もありませんので、読みやすくするため、適宜、同じ図表でも再掲する方針です。

例えば、Nブランドの「総合満足度」は業界平均レベルで、業界のNo.3だったとします。

一方、「商品」と「コールセンター」評価については業界平均を1.0point以上、上回るスコアだったとします。

となると「営業」「エンジニア」いずれかが、総合満足度スコアの足を引っ張ってるように見えます。

そこで各スコアを見ると「営業」は業界平均を0.5point下回る評価、「エンジニア」は業界平均を0.8point下回る評価だったとします。

このスコアを根拠にN社営業統括の西田専務は、「エンジニア」部門の低評価がN社の優先課題と決めつけ、エンジニア統括の高橋専務を強く責めたてます。

西田専務の主張は正しいでしょうか?西田専務の主張は下記のようなものです。
 『確かに営業の評価は業界平均に達していない。改善に注力すべきことは言うまでもない! しかし、下のチャートが如実に物語っている通り、N社が今回3位に甘んじたのは、営業以上に業界平均を大きく下回ったエンジニア部門に原因があり、その改善こそが最重点課題である!』

実は縦棒グラフである上記チャートは顧客満足度調査のアウトプットの一部に過ぎません。顧客満足度調査のアウトプットは縦軸のみならず、横軸方向にも情報を持つちます。今回のN社については、下のチャートのように表現されます。

横軸は総合満足度に対する各カテゴリ評価の影響度を表します。今回の調査結果が下記チャートの通りとすると、N社の総合満足度を下押ししている最大の要因は営業に対する評価の可能性が高いです。

このような二次元チャートは、CSポートフォリオと呼ばれることがあります。CSポートフォリオの横軸データは、重回帰分析という統計手法で算出します。

ここでは、詳細な説明は割愛しますが、ザックリ言うと、下のような式で総合満足度をカテゴリ別評価から推測できます。

総合満足度 
=  p x (商品評価) + s x (営業評価) + e x (エンジニア評価) + c x (コールセンター評価)
 

上記チャートが示すように今回の調査では営業評価が最も総合満足度に影響することが分かります( s > p > e > c )。

その営業評価が業界標準を下回っており、その改善こそがN社にとって最優先課題と言えるわけです。

従って、上記チャートのように各象限に「重点改善項目」「重要維持項目」「改善項目」「維持項目」と言ったラベル付けが行われます。その名の通り、営業評価の改善と同様に商品評価の高評価維持も重要と言えます。

次いで、エンジニア評価の改善、コールセンターの高評価維持が大切、という優先順位付けができるというわけです。

顧客満足度調査のメリットとデメリット

顧客満足度調査のメリットとデメリットをクチコミ分析との対比で説明します。まずは、クチコミ分析のメリットとデメリットを下記の通り再掲します。

<クチコミ分析のメリット>
◇ SNSの普及に伴い、情報量が充実し、また無償での情報授受が可能
◇ リアルタイムで情報収集でき、必要な場合、迅速な対応が可能
◇ 具体的、詳細な情報が得られる
◇ 顧客の自由な意見や感情に接することができる

<クチコミ分析のデメリット>
◇ 投稿者の個性や感情による情報バイアスの見極めが困難
◇ 分析結果の共有(可視化)に高度な専門性と多大な工数・コストが必要
◇ 詳細で細かな情報が得られる反面、全体を見渡すことには不向き

一方、顧客満足度調査のメリット・デメリットは、

<顧客満足度調査のメリット>
◇ アンケート回答者の個性や感情による情報バイアスは統計処理により除去される
◇ アンケート回答は質問に対するスコア付け(大いに満足=5、やや不満=2など)が中心であり、分析結果も数値化されるため、可視化が容易
◇ 分析結果は抽象的で、詳細な情報が得難い反面、全体を見渡すことには向いている
◇ 各カテゴリ評価の総合満足度への影響度についても情報が得られ、総合満足度向上への効率的な施策設定に有用である

<顧客満足度調査のデメリット>
◇ 統計的信頼性確保のため、大量のアンケート回収が必要だが、そのために大きなコスト・工数・時間が必要
◇ アンケートの設計、顧客への配布、回収、分析に時間を要し、結果を受けての迅速な対応は困難
◇ 分析結果は抽象的で詳細情報を得ることには向かない
◇ アンケート回答は質問に沿ったもので、質問内容でカバーされない顧客の自由意見や感情は得難い

とまとめられます。

クチコミ分析と顧客満足度調査の比較

さらにクチコミ分析と顧客満足度調査の比較を対比表にまとめると下記のようになります。それぞれのメリットとデメリットが互いに裏返しの関係になるため、下のような2つの表にまとめました。

いかがでしょう?

それぞれにメリット・デメリットを持つ「クチコミ分析」と「顧客満足度調査」を『合体!』させれば、かなり良いものになる予感がしませんか?つまり、良いとこ取りです!

是非ご期待ください。ご期待に応えられるよう頑張ります!


下のイラストは「クチコミ子」ちゃんと「マンゾクチョウサ」君が、力を合わせて、「口コミ調査」君と言う名の雪だるまを作っている様子です(笑)。

補足:
◇ 記事で使用されているイラストはDALL-E(chat-GPT)を利用し作成しています。

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