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 2021年3月10日、アフガニスタンのTV局「アリアナニュース」Twitter公式アカウントが、「12歳以上の女子生徒は、100%女性が参加するイベント以外では歌を歌ってはならない」とするカブール教育局の通達文書を公開したもの。

 ちなみに2021年5月からの米軍撤退によってタリバンが支配地域を広げ、8月には政権を掌握するに至る「2021年タリバン攻勢」より以前の話である。

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 この禁止令は首都カブールだけでなく全アフガニスタンに、公立・私立を問わず適用されることとされた。また男性の教師が、12歳以上の女子生徒に歌を教えることも禁止となっている。
 早い話が「女性が男性の前で歌を歌う」ことが問題視されているようだ。

 歌唱禁止令はSNS上で多数の反発を招いた。特に娯楽と女子教育を禁止していたかつてのタリバン政権の再来であるという意見が強く、同国内の人権活動家シマ・サマー氏ものちの3月18日「タリバン化の動き」と非難している。
 3月11日、アフガニスタン国立音楽研究所の創設者アフマド・サルマスト氏も「基本的人権に関する国内・国際法に違反している」とTwitter上で宣言。ハッシュタグ「#IAmMySong」による抗議が広まった。

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 政府は3月13日に禁止令を撤回し、「カブール教育局の通達は、文部省の公式な立場と方針を反映していない」と述べた。
 教育省のアリアン報道官はこの通達を当初「中高生にかかる勉強量について、家族から苦情を受けたため」の措置と述べていたが、のちに「新型コロナウイルスの感染拡大の可能性があるイベントに少年と少女が参加しないようにするのが狙いだった」と説明を変更している。いずれの理由にしても、歌を禁止されるのが「少女」に限るいわれはなく、苦しい言い訳と呼ぶした形である。

 めでたしめでたし……ではなかった
 この件が自由の勝利で終わったのは、あくまでタリバン政権の復活前のほんの一時的な安らぎに過ぎなかったことを、5か月後に世界の人々は知ることになる。

 タリバンがアフガニスタンを掌握した現在、アフガニスタンの音楽界はそれ以上の暴虐に晒されている。
 彼らは「イスラムでは音楽は禁じられている」として、「【公共の場】での音楽演奏の禁止」令を強いており、歌手ファワード・アンダラビ氏の殺害事件にまで至っている。パキスタンへと亡命した歌手もいる。
 さらにIndia Todayによると、TVやラジオから女性の声を放送することも非合法化されようとしているという。

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