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 現実と大きく異なった世界を舞台としたアニメ作品の、一応は総称。
 ただし一般的なイメージとしては、コンピュータRPGを模した西欧ファンタジー風「剣と魔法の世界」を舞台とする近年の日本の作品を指す。

 もっとも典型的なイメージは「元の世界(現実と同様の世界)では不遇だった主人公が、異世界に生まれ変わり、そこで特異な能力を手に入れたり、移動先の世界では普及していない知識・技能を活用して大活躍する」というもので、その内容から”転生もの”と呼ばれたり、投稿サイト「小説家になろう」で流行したことから”なろう系”と呼称されることもある。
 ただしこれらの条件を全て満たさなければ「異世界アニメ」でないわけではなく、転生要素のないものや、純粋に西欧ファンタジー風の世界で話が完結する作品(いわゆるハイファンタジー)もかなり存在している。

 舞台こそ似通っているがテーマや作風は様々であり、残虐な描写があるものや性的に大胆な表現を含むものなどもあるため、国によっては個別に規制対象となることもある。この点は異世界以外を扱うアニメと同様である。

 ただし異世界アニメを、それゆえに敵視し規制対象としている国がある。

 ロシアである。
 ロシアも諸外国のように残虐描写や性描写を日本より過度に有害視する傾向があり、程度やきっかけは様々ながら【DEATH NOTE】『進撃の巨人』『NARUTO』『いぬやしき』『エルフェンリート』『異種族レビュアーズ』『東京喰種』『AKIRA』といった作品の配信などが制限されている。

 しかし異世界がなぜいけないのか?
「死後の世界を肯定的に描いているから」だというのである。
 2021年4月、ロシアのクラスノグヴァルデイスキー地方裁判所は次のように結論した。

裁判所はこれらの作品は「生まれ変わり/転生信仰」を助長させ、死後の世界は両親からの支配から解放された、より充実した興味深い人生があるかもしれないという印象を視聴者に与えていると結論。

死後の世界は華やかで冒険に満ち、飲酒、性的関係、違法行為に満ちた贅沢な生活を送る機会を与えられる一方で、現実の生活は喜びがなく孤独に満ちているように描写されていると指摘した。

裁判所は検察の訴えを認め次のアドレスで配布されているコンテンツを「ロシア連邦で配布が禁止されているもの」と認定した。

ロシアの裁判所が異世界アニメを「生まれ変わり/転生信仰」を助長させ「児童の健康および発育に有害な影響を与える」と判断したことに対する海外の反応

「これらの作品」というのは『この素晴らしい世界に祝福を!』『転生したらスライムだった件』の2作の異世界アニメ。
 また異世界ではないが「死後」の話である、いわば同世界転生とでもいうべき『ゾンビランドサガ』と、転生が特に関わってこない『ネコぱら』『プリンセスラバー!』を含めた計5作品がこのとき違法認定されている。

 国際政治学者の六辻彰二氏は、Newsweek日本版に『なぜロシアは「デスノート」や異世界アニメを禁止するか──強権支配が恐れるもの』を寄稿した。
 六辻氏はこの中で、元画家志望でありながら抽象的な現代芸術を憎み弾圧したヒトラーを例に挙げ、人々の内面まで支配したがる独裁者が「目に見えない世界」に拒絶反応を起こすのではと論じている。

参考リンク・資料:

なぜロシアは「デスノート」や異世界アニメを禁止するか──強権支配が恐れるもの

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