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 ポルノグラフィや娯楽作品が、暴力犯罪を抑制する過程として考えられる心理学上の概念のひとつ。英語でincompatible emotional response。

 1983年にバロン(Baron)によって提唱されたもので、攻撃の原因となる不快な感情状態が、性的興奮などの快感をともなう情動で打ち消されるとする説である。

 拮抗情動反応は、ポルノグラフィの流通量・社会的法的規制の緩さと、性犯罪数の逆相関現象を説明するものである。
 一般的にはそれほど意外な発想ではないにもかかわらず、心理学の世界では「情動興奮は非特異」(つまり何が理由でも興奮は興奮であり生理学的には同じものだという考え)という説が優勢であったため、バロン以前にはあまり論じられてこなかった。

 バロンは次のような工夫をした実験を行った。
 交差点に実験車を置いてわざと後続車両の通行を妨害し、その前にサクラの女性を通りかからせる。その女性が性的な(露出度の高い)服装、普通の服装、包帯と松葉杖を使っている格好などをさせ、それぞれ後続の運転者がどれくらいで痺れを切らしクラクションを鳴らす(これを「攻撃反応」とした)かの時間を測定したのである。

 結果、女性が露出度の高い服装をしているときや、同情を引くような大怪我をしている時には、運転手たちはより気長にクラクションを押すのを待った
 これは攻撃的な気持ちが、同情や性的快楽といった「逆の」感情によって弱められたということだとバロンは考えたのである。これは性的な刺激がむしろ人の攻撃性を弱め、ひいてはポルノが犯罪を減少させるとするのに有利な概念である。

 ただし、いかなる場合でも視聴者の攻撃性に対し、ポルノが拮抗情動反応を起こすわけではない。

 あまりにもどぎついポルノの場合には、快楽よりも羞恥心や不快感を視聴者にもたらすことがあり、これは不快感情であるために、怒りの状態にある視聴者に対しては【一般的覚醒】を増幅させる――つまり興奮させてより攻撃的にさせることがある。

 このように、刺激の比較的弱いポルノは拮抗情動反応によって攻撃性を低下させ、強いポルノは一般的覚醒を促進するので攻撃性を高めるのではないかと考えられている。この考え方を【攻撃の二過程モデル】という。

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