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 一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会のガイドラインにおける用語。通常は「コンビニで売られているエロ本」を指す。同ガイドラインは一般には公開されていないが、株式会社ローソンの2019年1月21日「お知らせ」注釈に引用されている部分はこうある。

「成人向け雑誌」
「各都道府県青少年育成条例等で定められた未成年者(18歳未満者)への販売・閲覧等の禁止に該当する雑誌及びそれらに類似する雑誌類

 この「及びそれらに類似する雑誌類」のことを縮めて類似図書と通称している(上記のとおりあくまで民間企業のガイドライン上の用語であり、法律用語ではない)。

 前半の「各都道府県青少年育成条例等で定められた未成年者(18歳未満者)への販売・閲覧等の禁止に該当する雑誌」は、各都道府県の条例では不健全図書・有害図書などと呼ばれているものである。青少年には販売が禁じられているため、出版・流通側の審査団体によっていわゆる「成人マーク」をつけられている。書店で売っているいわゆるエロ本はこれであるが、実はこれらはコンビニでは販売されていない。気を付けてみてみると、それらのマークが付いていないのが分かるだろう。

 コンビニで売られている「エロ本」はこれらよりも若干過激さが低いものとなっているが『類似図書』というのはそのことである。

(「成人向け」図書の分類。甲南大学法科大学院園田寿教授作成

 2019年に「コンビニから成人向け雑誌からなくなる」と報道され話題になったが、これは類似図書を指す。
 ただしこの報道でいう「コンビニ」とはローソン・セブンイレブン・ファミリーマート3社の動向を指すものであって、日本フランチャイズチェーン協会が類似図書を禁止に動いたわけではない。実際にミニストップなど3社以外のコンビニでは類似図書の販売は続いている。
 また小説本はいわゆる官能小説であっても売られているところがある。

千葉県内のセブンイレブンで販売される官能小説(2段目の黒背表紙本)

 この大手3社の類似図書取扱い中止については、当時は2020年開催と予定されていた東京オリンピックや2025年予定の大阪万博等の国際行事による「外国人」の目を意識してのことであるとファミリーマートなどは発表している。が、それは持ち出した美名に過ぎず、甲南大学法科大学院の園田教授は、実際の背景は雑誌類の売上減少であることを指摘し、それをこのような美名で正当化することによる「排除」「環境浄化」の空気の蔓延に警鐘を鳴らしている。

 ちなみにBuzzFeed Japanは、類似図書のコンビニ3社による取扱中止をプッシュする記事に、このような詐欺的写真を用いている。(指摘を受けて現在は削除)

 また、フェミニストの田房永子らはこの問題に対して「大手コンビニ成人誌販売中止ありがとうパレード」なる『勝利宣言』を計画したが、批判を受け勝手に消滅した。(なお本件において、パレード批判者側が圧力をかけた事実はない)

 皮肉なことに『東京都不健全図書カタログ大全2020年版』によると、実はこの類似図書の取扱中止に伴い、思わぬ問題が起こっている。それはボーイズラブ系漫画作品の「【有害図書】(不健全図書)」指定の増加である。
 というのは各条例が「青少年対策」を名目としている以上、上すでに青少年対策が取られていることになっている表示図書(上記表参照)を有害図書指定することはできないために、マークのないコンビニの成人雑誌がこれまで指定の標的になっていた。それがなくなったことで、同じく成人マークのないことが多いボーイズラブ作品にターゲットを移す傾向が強まったのだという。
 現に2019年には東京都の不健全図書18冊のうち、女性向けのボーイズラブ漫画が16冊に及んでいる。

 なお、韓国発のカルト宗教団体・世界平和統一家庭連合(旧称統一教会)も、このコンビニからのエロ本(同教団はこれを有害図書と区別せずに呼んでいる)の排撃を主張していた。

 壺販売などの霊感商法で悪名高い同教団は、「真の家庭運動」を標榜し、婚前の性交渉やポルノなどを排撃するいわゆる純潔運動に蠢動しているが、これもその一環である。

参考リンク・資料:

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