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「女性嫌悪」「女性蔑視」「女性憎悪」などと訳されるフェミニズム用語。
 ミソジニーな精神を持つ人をミソジニストといい、これは他の単語と組み合わせてスラング的に使われる。たとえば「ミソジニストのオタク」と言う意味で「ミソオタ」、また「男」「オス」と組み合わせて「ミソ男」「ミソオス」などとも言う。たいていの場合、その人がなぜミソジニストであると思ったのかは根拠は示されず、聞いても答えられない。

 表現規制にまつわる議論における「ミソジニー」note用途は主に「論敵をミソジニスト呼ばわりする」もしくは「気に入らない表現や事象に『ミソジニー』が潜んでいることにする」のどちらかである。

「ミソジニー」の使われ方を風刺したウェブコミック

 ミソジニーの正確な定義や認定法は、多くのフェミニズム用語と同じく非常に不明瞭である。もちろん、直接的に女性を罵倒したり「女性は○○である」との偏見が作品内で実際に描かれている場合にだけ「ミソジニー」認定されるわけではない。
 ジョーン・スミスは著書『男はみんな女が嫌い』の中でミソジニーは「現代の西洋文化に異常に浸透している」としている。つまりは「世の中のあらゆる事象について、性差別が潜んでいると非実証的に認定する」という、いつものフェミニストしぐさの際に使われるレッテルに過ぎない。

 要するに自身や何かの作品をミソジニー呼ばわりされても「ああ悪口を言っているんだ」という程度の理解で差し支えない。

 実際、常識的に考えて逆だろうと思われるような作品がミソジニー認定されることがある。例えば【エイリアン(映画)】は、勇敢かつ有能な女性を主人公としていることで有名な作品であるにもかかわらず、クイーン・エイリアンが敵として登場するのでミソジニー作品である(第一作にはクイーンはそもそも登場しないにもかかわらず)。

 ここでフェミニスト達の実際の使い方(単なる罵声・レッテル)は措いておいて、ミソジニー=女性嫌悪と呼ぶに値するものは何なのかを真面目に検討しよう。
 特定の女性を嫌悪しているというだけでミソジニストというのは明らかにおかしい。アドルフ・ヒトラーという人物が嫌いだからといってそれを「男性嫌悪」と呼ぶわけにはいかないのと同じである。
 また、女性は○○だというような何らかの意見を持っている人はミソジニストだろうか。これもおかしい。これだと「女性は男性より筋力が弱い(から男性が助けて当然だ)」とか「女性にとってこんな萌え絵はキモイ(から公共の場から排除せよ)」という意見もミソジニーになってしまう。これではフェミニスト達こそミソジニストだということになる。
 従ってミソジニーと呼べるものがいるとすれば「女性一般に対する、なおかつ感情的に憎悪・嫌悪」であり、それを持つ人がミソジニストということになる。
 しかしそんな人がいるのだろうか。
 フェミニストに「ミソジニスト」呼ばわりされがちな属性の人――たとえば保守的な人や「オタク」層――であっても、そうそういないはずである。
 つまりミソジニストと呼ばれている人の事実上すべては、単に特定の人物もしくはタイプの女性が嫌いであるか、単に女性一般に対して何らかの「意見」を持っている人に過ぎないのである。
 したがって「ミソジニー」なるものは現代社会では事実上存在しないと言える。

 ならば「社会にミソジニーが溢れているとする私達フェミニストの世界観は、間違っていた」と結論して以後使わなければ良い...…のだが、そこで言行を改めず「ミソジニーが存在することにするために、ミソジニーの定義を変えよう!」とあがくのがフェミニストである。
 ケイト・マンの著書『ひれふせ、女たち ミソジニーの論理』は、上記のような無理が生じないようにするため、ミソジニーの定義を変更し「家父長制秩序を支える機能をもつ」「人を支配するためのシステムの一形態」として理解するべきだと主張する。
 仮に変更したところで、それまでフェミニスト達が使っている言葉が「お前は女嫌いだから言ってるんだろ!」という単なるレッテルでしかなかった事実は一切変えられないのだが。

 しかも変更後の定義に使われる「家父長制」というのもまたフェミニストが何でもかんでもに貼り付けるレッテルでしかないため、結局「ミソジニーとは、フェミニストに逆らう奴のことだ」という罵倒以上のものになりえないのである。

 ちなみに、さっそくこの変更後の定義でフェミニストを追いこむことができる。
 フェミニストは反ポルノやアンチオタク的言説が大好きで、これらの創作物はフェミニストのみならず、まさに「家父長制」の権化たる保守的オヤジ層にこそ目の敵にされてきたものであるからだ。彼らはこうした表現への規制・弾圧をまさに家父長制の保護のためにやってきた。

 つまり、マンの定義に従っても結局、フェミニストこそがミソジニストだということになってしまうのである。

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