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【それいけ!アンパンマン】

 やなせたかしによる絵本原作のテレビアニメ。
 日本テレビで1988年10月に放送が開始されて以降、現在も放送中であり、『サザエさん』『ドラえもん』に次ぐ日本第3位の長寿アニメ番組。
 原作者の平和思想から、悪を倒すことではなく、お腹をすかせた人々に自分の顔を分け与えることを主な活動とするヒーロー「アンパンマン」が主人公。彼と創造主であるジャムおじさんをはじめとするパン工場の人々、一応はメインのヴィランにあたる悪戯者の「ばいきんまん」一味、そのほか主に食物を擬人化した多数のキャラクターなどが織りなす一話完結型の物語群である。
 多世代にわたって日本の児童文化を支え続けているアニメ作品のひとつであり、いわゆる「当たり障りのない児童向けアニメ」の代表格である。それゆえに誰もがある程度知っていることからも、暴力表現の規制にまつわる議論においてしばしば「このような理由で規制がなされるなら、アンパンマンさえ対象になってしまう」という規制批判の議論によく登場する。

 しかしながら、決してこれは誇大な議論では無く、国内外の規制派がターゲットにすることも時折あることから、表現規制への欲求というものは際限がないことの証左でもある。

 そもそも、アンパンマンが押しも押されぬ児童文化の名作となる前の当初から、「顔を食べさせるなんて残酷」という叩かれ方をしていたという。

 実際に2019年、ネットメディア「オトナンサー」によるインタビュー記事で、創価大学文学部教授の渋谷明子がアンパンマンの「暴力描写」を問題視する発言を行い、話題となっている。


 また2021年にはイランでのアンパンマン規制が日本のネットで話題となった。
 イスラム教国であるイランではラマダン(断食月)中に、食べ物の画像に規制がかかるため、アンパンマンの顔にもモザイクがかかっており、一方で悪役バイキンマンは無論食べ物ではないため顔出しOKであり、あたかもアンパンマンの方がいかがわしい悪者であるかのような絵面になるという。

 この話の元ネタはどうやら、在日イラン人のお笑い芸人であるエマミ・シュン・サラミ氏の著書『イラン人は面白すぎる!』に掲載されている話のようである。
 ただしサラミ氏はこれを自身がイランにいた「80年代のホメイニ政権下での体験」だと断っており、特に規制が厳しかった時期の話であることには注意が必要である。
 同書によれば当時、ラマダン中は食べ物規制がかかったテレビ番組として、グルメ番組や料理番組のほか、映画『ティファニーで朝食を』などドラマなどでも食事シーンはすべてカットされていたという。
 なお驚いたことに『一休さん』もイランで放映されており、有名な水飴の話がカットによって意味不明になったというエピソードが紹介されている。

参考リンク・資料:

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