見出し画像

【ラブジョイの法則】

 自身の意見を押し通すために、さもそれが子供のためであるかのように主張すること。アメリカでは他に「ラブジョイ防御」「ヘレン・ラブジョイ抗弁」、「ヘレン・ラブジョイ症候群」、「子供たちのことを考えろイズム」などの俗称がある。日本でいう「子供を楯にする」行為。

 ヘレン・ラブジョイというのは米国のコメディアニメ『ザ・シンプソンズ』に登場するティモシー・ラブジョイ牧師の奥さんである。基本的に意地悪なおばさんキャラで、彼女がこれ("Think of th children.","What about the children ?"など)を口癖のように乱発するところから生まれた慣用句。

ヘレン・ラブジョイ

 もちろん『ザ・シンプソンズ』がこの論法を発明したわけではない。シンプソンズ以前にも1964年の映画『メリー・ポピンズ』の作中でほぼ同じセリフが使われたことがある。というよりこうした良識派気取りの者が子供を盾にするこの種の論法は普通に現実に存在するので、特定のフィクション作品に「起源」を求めること自体が無理であろう。
 しかし『シンプソンズ』脚本家のビル・オークリーはこの言葉の使われ方を風刺するため、ヘレンに意図的に言わせていることを明かしている。この言葉をアメリカで嘲笑の対象になるようにしたのは同作の功績のひとつと言えるだろう。

 表現規制議論では規制側が「こんな表現は、子どもに見せられない!」という形で持ち出すことが多い。弁護士の田中早苗が、規制を押し通すために意図的にこの言葉を用いたことを白状したことについて、北原みのりが著書の中で口を滑らせている。

「ポルノ表現が女性差別である、という風に訴えていたら、きっと時間がかかったでしょうね。今回の規制をかける時に、私は意図的に子供に見せることができない、という風にしたの」

北原みのり『フェミの嫌われ方』新水社

別の用例の一つが2020年にツイッター上で韓国系フェミニストが広めたハッシュタグ【#スーパー戦隊を子供に返せ】【#仮面ライダーを子供に返せ】である。このタグは同年7月20日発売の『週刊プレイボーイ』に、戦隊シリーズに出演する女優のグラビアが掲載されたことに抗議して生まれた。むろん、彼女がプレイボーイ誌にグラビアで登場したからといって、子供たちは何一つ困ることはない。完全に自分の要求を通すためだけの、典型的なラブジョイの法則の一例である。

参考リンク・資料:

 資料収集等、編纂費用捻出のための投げ銭をお願いします!↓

ここから先は

14字
この記事のみ ¥ 100

ライター業、連絡はDMでどうぞ。匿名・別名義での依頼も相談に乗ります。 一般コラム・ブログ・映画等レビュー・特撮好き。