[読書メモ][Kindle]『SLAPP スラップ訴訟とは何か』(烏賀陽弘道)

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こうした「相手に苦痛を与える動機で提訴される訴訟」は日常茶飯事である。

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のぼりや看板による意思表示は憲法の「表現の自由」の範囲内だという最高裁判例がある。

Location: 602
「論点のすり替え戦略」=ディスビュート・トランスファー・ストラテジー(dispute transfer strategy)

Location: 639
提訴するのは原告側の意思ひとつで決まる。何ら基準はない。

Location: 754
「萎縮効果」(chilling effect)

Location: 847
「法廷で裁判官の前で話せば書面を書く必要はない」というわけにはいかない。日本の民事裁判官は法廷での証言より、書面を信用する傾向が強いからだ。同じ内容ならできるだけ書面にするよう、弁護士は勧めるだろう。

Location: 985
ところが現実には、あたかも判決がパブリック・イシューそのものにまで判断をしたかのような誤解が、一般世論はもちろん、報道にも広がってしまう。

Location: 1,934
判例(裁判官の判断=判決)が法律として機能する英米法の国であるアメリカで、多くの州で反スラップ法が明文法化されていることは注目に値する。これは、裁判官の判断である判決によってスラップ被害防止判例が覆されないためである。

Location: 1,978
カルフォルニアは全米で人口がもっとも多い州(3717万人、全米人口の12%)

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一審判決まで1~2年はゆうにかかる日本の民事裁判

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まず、大きな前提として、アメリカの民事裁判では名誉毀損を立証する責任は訴えた側にある。日本では「名誉毀損ではない」ことを立証する責任が被告側にある。この立証責任の構造だけ取っても、日本はアメリカよりはるかに名誉毀損を成立させやすい。

Location: 2,115
マリス(Malice)とは「相手を傷つけようという憎悪に基づく意思」を指す。アクチュアル(Actual)には「形になって存在する」という意味がある。

Location: 2,222
日本では最高裁判例以外の下級審の判例は他の裁判所を拘束しない。

Location: 2,226
「スラップ被害を防止する」とは要するに被告側の裁判コストを軽減することである。そしてスラップ提訴を抑止することである。

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アメリカ各州の反スラップ法にも「提訴そのものを禁じる法律」はない。「裁判を受ける権利」は合衆国憲法で保障された重要な権利だからだ。だからAnti SLAPP Lawという言葉を「スラップ禁止法」と訳するのは間違いである。

Location: 2,261
民事訴訟がスラップという形で悪用されると、何の法律的な抑制や制御もない「ノーチェックかつ合法的な暴力」として作用してしまう。しかも訴える側に一方的に有利にできている。つまりスラップは民事訴訟という裁判制度に開いた「法の抜け穴」であり、システムのバグである。

Location: 2,272
そもそも原告と被告の「強者」「弱者」は相対的なものにすぎない。

Location: 2,299
裁判所が市民から信用されなくなることは、すなわち民主主義というシステムの危機である。現在の日本は、この危険な道をまっすぐにたどっているように思える。

Location: 2,440
アメリカでは「言論によって逮捕されたり刑事訴追されることはほぼない」ことになる。

Location: 2,451
スラップのように、訴訟を攻撃手段として使う場合、この構造が提訴側に有利に作用することはいうまでもない。

Location: 2,473
原子力発電所から放射性物質が大量に放出され、万単位の人々が被曝し、広大な面積が汚染されるという事故は、人類の歴史でも3回(スリーマイル島原発、チェルノブイリ原発、福島第一原発)しか起きていない歴史的惨事である。

Location: 2,721
精神的に疲弊させることが相手の目的なので、あなたが怒れば怒るほど、悲しめば悲しむほど、落ち込めば落ち込むほど、相手の思うツボである。怒る必要も、悲しむ必要も、落ち込む必要もない。

Location: 2,723
提訴されても不名誉ではない。「侮辱された」と思う必要もない。提訴は「利害が対立した人間が一方的な言い分をいっているだけ」である。

Location: 2,744
裁判自体が「裁判制度を悪用したいやがらせ」だとしっかり記憶にとどめ、力をセーブして行動するのがよい。

【誤植】
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誤:「提訴する側=比較弱者・提訴する側=比較強者」であることも、現実の訴訟では起きる。
正:「提訴する側=比較弱者・提訴される側=比較強者」であることも、現実の訴訟では起きる。


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