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掃除の価値 - 結果なのか、プロセスか。

松下幸之助という人物
松下幸之助さんはPANASONICの創業者で、PANASONICは日本国内では有名な電機メーカーの会社です。少し、PANASONICと松下幸之助さんを紹介をしておきます。

PANASONICは1935年12月15日に創立しました。本社は日本の大阪府の門真市というところに置かれています。2019年度の時点では資本金は2587億円、2022年の時点では売上高は7兆円にものぼる大きな会社です。
その会社を立ち上げた松下幸之助さんです。この方は、どのような人だったのでしょうか。

彼は、1894年11月27日に日本の和歌山県という場所で生まれました。1899年に松下幸之助の父が米相場で失敗し破産したため、一家で下駄屋を始めましたが、その後、事業はうまくいかず店を畳みます。松下幸之助は、小学校4年で中退し、9歳という年齢で、宮田火鉢店に丁稚奉公に出されました。
その後、日本の大阪府大阪市にて導入された路面電車を見て感動し、電気に関わる仕事を志し、16歳で大阪電灯(現在の関西電力)に入社し、7年間勤務、その間に電球ソケットを考案、この電球ソケットが創業のきっかけになりました。
松下幸之助はお金のある家庭で生まれた方でもなければ、しっかりとした教育を学校で受け続けた人でもありませんでした。しかし、前述したような大きな会社を一代で築き上げ、「経営の神様」と称され、松下幸之助塾というものを立ち上げ、政治家の育成にも尽力されました。

そんな彼がこだわったものがあります。それは掃除です。

松下幸之助はなぜ掃除にこだわったのか
松下幸之助が掃除にこだわっていたことがわかる文章がいくつか残っていますので、ご紹介します。

「私の若いころには、掃除一つをとっても自分の家の前だけでなく、向う三軒両隣の家の前も掃除したもので、お互いにお隣さんに負けずにやろうというところがありましたが、こうした気構えが最近あまり見かけられなくなったのは、少々残念なことです」
(『松下政経塾報』1982年7月1日)

「この新工場へ移った年の暮れのことである。全員が、恒例行事である年末大掃除を行なった。ひとわたり工場の掃除がすんだ。みんな、着物を着替えて帰り支度にとりかかっていた。大将(注・松下幸之助のこと)が見回りに来られた。『ご苦労さん、きれいになったな』と、褒めながら、便所の戸を開けられたのだ。実は便所だけは、誰も掃除をしていなかったのである。大将の顔色がみる間に変わった。『もうお前らには掃除はまかせん。』大将自らコテを持って来て、便器にへばりついた汚物を取りはじめたのである。現在の水洗便所とは違って、当時の工場の便所は汚なかった。(えらい悪いことをしてしもた)『大将、わしがやります!』雑巾を手に、私は夢中で飛び出した。私に続く者が2-3人いただろうか。いっせいに便所掃除をした。汚ないとか、臭いなどという気持はまったくなかった。自分が一番尊敬している、一番大事な大将に便所掃除をさせる――。そのことだけで、私は恥ずかしくてならなかった。やっと掃除が終わった。『ああ、ご苦労さん。汚ないのによう辛抱してやってくれたなあ。』大将のニコニコした顔があった。駄賃にたいこ焼き3つずつをもらった。」
(後藤清一『叱り叱られの記』日本実業出版社、1972年)

彼の掃除にまつわるエピソードは多々残っています。掃除が人の修養に役立つという信念を持っており、ある講演では、掃除による辛抱が、人を成長させることを訴えています。
また別の話では、便所掃除をちゃんとやらなかった弟子に対して「掃除は製品作りと同じだからちゃんとしなきゃならん」と叱りつけたこともあります。
彼の掃除に対してのこだわりは強く、掃除をちゃんとすることで人間形成ができ、それに伴って企業も成長することを説いているわけです。

KIREIは何をもたらすのか
適切に掃除をすることで、その場はとてもKIREIになります。これには2つの側面があります。
一つは空間や場所がKIREIになること、もう一つはKIREIにすることで人格形成がなされること、です。

場所や空間がKIREIになることで、衛生面が向上し、健康が維持されます。
結果的には病気にかかりにくくなったり、寿命が伸びることも数々の研究レポートで紹介されています。また、KIREIな空間に身を置くことで、精神的なイライラが軽減されたり、家族関係が良好になったりすることもあります。

もう一方では、前述の松下幸之助がこだわったことにも通ずる人格形成です。掃除というのは誰でもできる行為です。(もちろん徹底的にKIREIにするには技術や知識が必要ですが。)そして、掃除は自らがやらなければその場所はKIREIになりません。さらに言えば、掃除は誰も進んではなかなかやりたくはありません。
自分がどのような考えを持って掃除をするのか、どのような手順で掃除をすれば効率よくできるのか、掃除をする際に何に気をつけなければならないのか、考えることは様々です。そういったKIREIにするプロセスや考え方で人の基礎が作られ、結果的に人の集団である企業の結果にも影響を与えるということです。
KIREIは、結果である空間と過程である人格形成という2つの側面で、非常に大きな影響を与えると言えます。

ちなみに、掃除にこだわったのは、松下幸之助だけでなく、自動車で有名なメーカーであるホンダの創業者である本田宗一郎もその一人です。

本田宗一郎による働くものの徳義心

皆さんは、この掃除に対してどのような考え方をお持ちでしょうか。ぜひコメントで教えてください。

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