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「丁寧」と「丁寧すぎる」

電車のアナウンス
日本では鉄道が発達しており、路面電車のみならず、地下鉄やモノレールもあり、地上、地下、上空と電車が行き来しています。そのこともあってか、都心部の東京では、車を利用するよりも電車を利用する人が多く、車離れも多くなっています。
電車では、最前列車両には運転する人、最後尾車両にはサポートする人がいて、最後尾車両の車掌が電車のアナウンス等を行います。そのアナウンスが丁寧すぎるくらい丁寧で、外国人からよく驚かれます。実際にどのようなアナウンスが流れるのか、集めてみました。

JR東日本/東北新幹線のアナウンス/新青森駅-盛岡駅
「本日も東北新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、はやぶさ号、東京ゆきです。全車指定席で、自由席はございません。次は盛岡に停まります。車内はデッキ、トイレを含めまして、全て禁煙です。お客様にお願いいたします。携帯電話をご使用の際は、周りのお客様のご迷惑となりませんよう、デッキをご利用ください。駅および車内への危険物の持ち込みは禁止されております。不審なものや行為にお気付きの場合は、乗務員または駅係員までお知らせください。また客室の自動ドア付近に、SOSボタンを設置しております。緊急事態にはSOSボタンを押して、乗務員にお知らせください。」

JR東日本/山手線のアナウンス/恵比寿駅-渋谷駅
「次は渋谷、渋谷。お出口は右側です。東急東横線、東急田園都市線、京王井の頭線、地下鉄銀座線、地下鉄半蔵門線、地下鉄副都心線はお乗り換えです。電車とホームの間が空いているところがありますので、足元にご注意ください。」

JR西日本/大阪環状線のアナウンス/京橋駅出発
「今日もJR西日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、JRゆめ咲線直通、大阪、西九条、ユニバーサルシティ方面、桜島ゆきです。いつも座席の譲り合いにご協力いただきまして、ありがとうございます。各車両に優先座席を設置しています。この席を必要とされるお客様がいらっしゃいましたら、ぜひお席をお譲りくださいますよう、ご協力をお願いいたします。」

日本の電車の中はとてもKIREIで、清掃も行き届いています。電車に乗っている人も車内で電話で話すこともなければ、とても静かに乗っています。万が一、車内が汚れた場合、車掌がかけつけ速やかに清掃します。そして、こういったアナウンスが車内には流れます。

文章にすると非常に長いですが、電車に乗っている間はこれらは長く聞こえません。自分が降りる駅に近づけば耳をそばだてアナウンスを聞いています。いつも乗っている電車ならばそこまで不要でしょう。

しかし、これらのアナウンスは「初めてその電車に乗る人」「目の不自由な人」には非常に有効です。つまり、この非常に長く聞こえるアナウンスは、多くの人にとっては「丁寧すぎる」と感じるかもしれませんが、前述したような人にとっては「丁寧でわかりやすい」と感じるわけです。

商品パッケージの注意書き
次は商品パッケージを例に挙げてみましょう。日本の商品パッケージ(特にお菓子等の加工品)には必ず「◯◯に注意しましょう」といった注意書きがあります。この注意書きには電車のアナウンスと同じようなものがあります。実際に見ていきましょう。

商品パッケージに書かれた注意書きの一例

ロッテ/キシリトールガム
一度に多量に食べると、体質によりお腹がゆるくなる場合があります。ガム表面の赤色の粒は原料由来です。かんだ後は紙に包んでくずかごに捨てましょう。

カンロ/4Dグミアップル
特定原材料中、乳を含む製品と共通の設備で製造しています。開封後はお早めにお召し上がりください。高温や時間の経過により、溶けたり風味・色・形が変わる場合があります。切り口や袋のはしで手を切らないようにご注意下さい。本商品は弾力のある食感が特徴のため、のどにつまらせないよう、少しずつ、よく噛んでお召し上がりください。品質に不都合がある場合は下記住所へお送り下さい。(以下省略)

もちろん食べ物以外(例えば、化粧品やサプリメント等)のパッケージにも商品への注意書きはたくさんあります。

これらのパッケージも普通に読めば、「いや書きすぎで丁寧すぎるだろう」と思うかもしれません。ですが、アレルギーのある方や妊娠中の方はこれらの注意書きをよく読みます。『これは食べても良いものなのか』と考えるわけです。そういった方々からすれば、これらの注意書きは「丁寧でわかりやすい」ものになります。

ものの捉え方は「誰からの目線」なのかで変わる
2つの例を挙げましたが、大事なことは「丁寧であるのか、丁寧すぎるのか」は視点によって変わるということです。これは、KIREIにおいても同じです。
どこまでKIREIなのがKIREIと言えるのか、これも人によって大きく変わります。潔癖症な方からすれば、ちょっとした汚れも気になります。全く気にしない人は、汚れや不衛生さが酷い状態になるまで気づきません。

しかし、日本がKIREIな国であるがゆえに、小さな汚れが目立ちやすいということだけではなく、人々の視点が他者に向きやすくなります。他者の視点を気にすることもありますが、これは裏を返せば、他者のことを考える視点を持つことができるというのも事実でしょう。そうすることで、他者に優しくなれることもあります。

様々な丁寧さや他者への優しさは、KIREIから生まれると言えるかもしれません。


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