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「君たちはどう生きるか」起~承前半までネタバレ&考察

「君たちはどう生きるか」、雑にまとめると「スター大集合!ジブリ好きなら分かるあの映画のシーンオマージュ集!」って感じでした。
とりあえずカエル苦手な人とドラえもんの魔界大冒険が苦手な人は見ない方がいいです。犬猫は死にません。鳥好きはちょっと注意。ストーリー仕立てって感じではないですが結末はなしで物語の「起」から「承前半」までネタバレします。公開初日にネタバレなんて無粋、と仰る方も一度1.の項目だけ読んでください。早くネタバレ見せろ!って方は2まで飛ばしてください。
というかネタバレしても見ないとわかんないですよこれ!

1.   脳が老化すると新しい映画やアニメに触れる時事前情報なしだと見れないよね
筆者は昔本の虫でありとあらゆる本を読みまくっていました。あたりの本は勿論、はずれの本も最後まで読んで「つまらなかった」という感想を持つところまで行けました。若い頃はこんなふうに、何かしらの新しい情報(コンテンツ)を消化するのに大したコストはかかりませんでした。それはアニメや映画、あらゆる創作物に対してそうでした。
しかし大人になってから、どれだけ人気だろうが作っている人がすごい人だろうが、事前情報なしには新しい創作物を消化する体力がなくなってしまいました。あらすじやネタバレなどを知らずに視聴しようとしてもどうしても途中でしんどくなってやめてしまうのです。ですので最近は何か気になるアニメや映画を見つけても、まずはあらすじやネタバレを見て、ある程度消化できると見極めてからコンテンツに触れるようになりました。
そんな私が視聴するか大いに迷ったのがこの「君たちはどう生きるか」です。私はジブリ映画と共に育ったと言っても過言でないほど人生の節目節目でジブリ映画に影響を受けてきました。日本で育った人は皆少なからずそういうところがあるかと思いますが。とにかく、そんな子たちにとって、リアルタイムで新作を視聴できる機会なんてそうそう巡ってこない訳です。それが今回巡ってきた。けれど一切の情報は伏せられている。
はい、しんどいですね。しんどい。
コクリコ坂からとかはもう大いに宣伝されてましたし、なんとなく学生青春ものっぽいなーって予想は立てられてましたから大丈夫でしたが、今回の情報はポスターの鳥だけ。こいつが主人公?誰?私できれば千と千尋みたいなワクワクするのが見たいんですがそっち系ですか?ネタバレ呟いてくれるまで待つ?でも折角リアルタイムで見れるのに?
そんな感じで散々悩んで、結局栄養ドリンク一気飲みして脳に栄養入れて何とか見てきました。という訳で、新しいコンテンツを消化するのがしんどくなってきた方々の為にざっくりとしたあらすじとオチを書いていきます。

2.あらすじ&ネタバレ
繰り返しになりますが、今回の映画はストーリー仕立てではありません。なので突然場面描写がフワ付きますがご了承ください。
【起】
まずは冒頭。舞台は戦争中の日本東京。空襲で主人公「まさと」のお母さんがいる病院が火事になり亡くなります。
その後疎開することになり、まさとのお母さんの実家に引っ越すことになります。父はまさとのお母さんの妹と再婚(お前………!)、妹のお腹の中には既に子供がいます。そんな事態にまさとはやはり受け入れられず他人のような態度を取ります。そして未だに火事になった病院の中から母が助けを求めてくる悪夢を見たり、学校でよそ者扱いで喧嘩になって学校を休むようになります。その時頭に大きな傷がつき、妹さんに泣いて謝られます。
その後、大きな青い鷺が母の声真似をしたりして主人公に絡んできます。(ポスターの鷺に似てますが違います)憤る主人公を揶揄った後、鷺は大きな湖の奥にある雑木林の中に飛んでいき、何かの塔に窓から入って隠れてしまいます。主人公も追いかけますが、入り口が崩落しており入れず連れ戻されます。その後再び鷺が主人公に絡み、「お母さんは生きています、(塔に)おいでください」とウシガエルを大量に呼び出して主人公を誘います。(あの…………、チェンソーマンでマキマがネズミまみれになるシーンあるじゃないですか。あんな感じになるので、カエル苦手な人はマジで見ない方がいいです)そんなまさとを救うため、妹さんが天に向かって矢を放ち鷺が逃げていきます。
そこから色々あって、妹さんが身重の体でその塔に入っていき、そのあとを追いかける形でまさととおばあちゃん(名前忘れた)が入っていきます。棟の中は異世界のようになっており、まさとは鷺に母親そっくりに作られた何かを見せられ、目の前でドロドロに溶ける様を見せられます。(鷺はマジ何がしたいのか分からなかった)
結局まさとは鷺に勝ち、鷺は塔の主である御屋形様に「愚かな鳥よ 〇〇(妹さん)のところまでお前が案内しろ」と告げ「下」へ連れていかれます。
(※作中ではまさとが住む現実世界を「上」、異世界を「下」と呼んでいます)

下にて、まさとは海に囲まれた孤島にいます。遠くの方に見える黄金の門に駆け寄ると、「我を学ぶものは死ぬ」と書かれており、立ち尽くす主人公を急き立てるように大量のペリカンが押し寄せ門を破り「歩け!歩け!」と主人公を突っつき急き立てます。門の奥には巨大な支石墓(奴国の王墓とされる須玖遺跡とかが有名です)があり、中央の暗がりが不気味に蠢きます。その時一緒に来たおばあちゃんが若返った姿で現れて、船で主人公を連れ出すと黒い水のような、人の姿を象った何かと白いもちもちな生き物が住む場所へ連れていきます。(以下おばあちゃんを元おばあちゃんと呼びます)
元おばあちゃんは巨大な魚を捌き売ります。「殺生はあたししかできないから」と言いながらまさとにも捌かせます。その時魚の臓物をぶちまけてしまったまさとに元おばあちゃんは「臓物を零すな!〇〇(白いもちもち)たちが浮く時の滋養になるんだ」と𠮟りつけます。
その後まさとを自分の家に連れて行きスープを飲ませたり世話をし、その夜白いもちもちが大量に裏庭から“風船のように浮いて”空へ飛び立ちます。それを二人で見守っていると、そこにペリカンの群れがやって来てもちもちたちを食べだします。焦るまさと達のところに、「おひ様」?という名前の炎に包まれた女性が現れ、トトロでサツキとメイが小さな苗を大きくするときのあの仕草をして炎を降らし白いもちもちともどもペリカンを撃退します。その後色々あって元おばあちゃんと別れ、鷺とともに妹さんを探す旅に出て、インコの帝国に突撃して色々あります。色々。
承前半までのネタバレはここまでとなります。わかりましたかね?わっかんないですよねえ‼︎だから私もネタバレしてもいいと思ったんですもん。SFだけど哲学的っていう難解さなのでとりあえず見ましょう。見れば分かります。
これ以降のネタバレは控えますが、一回見ただけでも千と千尋の異世界に入るまでの通り道やトトロの例のトンネル、ハウルの動く城の小屋、もののけ姫の森、ナウシカ世界の植物、ラピュタ、猫の恩返(インコ帝国のところ。もうちょっとぐろいけど)等のシーンのオマージュがいくつもあったので、「あっこれ知ってる!」とアハ体験的に楽しめると思います。気になる方は見ましょう!コンテンツにお金を払いましょう!

3.部分的考察
ここからは映画を見た人にしか分からないだらだら考察です。まだ見てない方は読んでもよく分からないと思いますのでここでページを閉じてください。
筆者は「下」の世界を黄泉の国または煉獄に似たはざま世界と思って考察しています。

3―A.舞台装置
舞台となるお屋敷はこの世とあの世の境にあると考えられます。
見ていただいた方は分かると思うんですけど、引っ越した先の家はめちゃくちゃ広いお屋敷で、敷地内にこれまた巨大な湖(というかもはや川)があるんですよね。その向こうに林があって例の塔があって、鷺は劇中何度も川のところから主人公に「こちらにおいでください」と誘いをかけるんです。そして多少無理やり連れていかれた先には例のお母さんみたいな何かがいてドロドロ溶けて消えると。黄泉平坂のオマージュが少し入ってるんじゃないかと思うんですよね。黄泉平坂ではイザナミを亡くしたイザナギが黄泉の国へ行って連れ戻そうとしますが、今回は鷺がまさとをそそのかして母を連れて帰らせたいと思わせ、自ら黄泉の国(塔)へ向かわせるよう企んだように感じました。立ち位置的にはイブにリンゴを食べさせようとした蛇みたいな感じですかね。その後鷺は妹さんが放った矢に驚き逃げていくんですが、あれも破魔矢的役割だと思います。宮崎先生なりの「鷺が怪異に似たものである」という表現かと。

3-B.塔の「下」の世界
冒頭で書きましたが、下の世界黄=泉の国、煉獄という訳ではないように感じます。それは冒頭の金の門に書かれた「我を学ぶものは死す」という文言と、その奥のお墓のシーンで否定できます。死後の世界に更にお墓があるのもおかしいですし、何かを学んだら死ぬなら死後の国でもう一度死ぬ事になりますからね。ですが先ほど述べた白いもちもち、ゆるキャラみたいな見た目なのにスクリーン上で一瞬だけ生まれたての子供のように人間の手足に変化するのが見えるんですね。そして元おばあちゃんが「“上”に昇って生まれるんだ」と明言してますので、白いもちもちは罪を償い終えた魂だと考えればつじつまが合いますし、黄泉の国のシステムには非常に近いと思います。とりあえずの理解としては元おばあちゃんやおひ様のような生者や亡者が混在する黄泉の国のような異世界でいいかと思います。

 3-C 人間を食べるインコ
この世界では何かと鳥が強いのですが、ペリカンよりずっと広大な帝国を作り上げているのがインコ。王を中心として帝国主義の下暮らしています。
コイツら(ごめんなさい)は赤ちゃんがいる人間は見逃しますが赤ちゃんがいないまさとには全く容赦せず、血にまみれた鉄の台に寝かせて切り刻んで美味しく食べようとします。何故鳥の帝国の主役にインコを選んだのか少し考えたのですが分かりませんでした。人の言語を習得できる鳥だからとか?
それは置いておいて、インコの庶民たちは皆黄緑とか赤とかよくある色なのに、王様だけ真っ白いインコだったのが印象的でした。セキセイインコの白いインコは珍しいんですよね。アルビノ種は寧ろ迫害される側なのに、動物的本能が抜け落ちて珍しさ=高貴さのような形で称えられるようになったんでしょうか。ちなみにその珍しインコは御屋形様にこの世界に連れて来られて文明を築いたようなんですが、御屋形様には忠誠心を持って接していました。この二人の関係がよく分かりませんね。

 3―D 巨大な石と御屋形様
まさとが御屋形様のところにたどり着いた時、御屋形様は白い石を使って積み木のようなものをしています。御屋形様が言うには積み木=世界を構成するもののようらしく、御屋形様は石の力を借りてこの世界を作っているとのことでした。この塔は隕石が降って来て出来たと説明がありましたが、その隕石の力を借りて使いやすくしたものが白い石かと思われます。冒頭にも支石墓が出てきましたが、この世界では石は神聖且つエネルギーを持つもののようです。ラピュタの飛行石然り、巨大なエネルギーを持つものとして描かれていますが、地球の中央部のマグマが冷え固まってできたのが石なので宮崎監督にとって石=地球のエネルギーのメタファーなのかもしれませんね。

 3-D 「あなたなんて大っ嫌い!」
これはもう考察する必要すらないですけどね…………。まさとに向けられた妹さんのこの発言ですが、彼女の立場からしてみたら「姉が亡くなり(おそらく)家のしがらみで後妻にとあてがわれ、旦那とは円満だし子どもが出来たからいいものの姉の子には疎まれるし怪我をさせてしまうしつわりは辛いし旦那には頼れないし疎ましいし…………」という大変につらい状況な訳ですよ。それでようやく立場を忘れて穏やかに眠れる場所に来たのに愛憎混じった姉の子が迎えに来たらキレますよね、そりゃ。というか、妹さんのベッドの頭上にあったあの謎の紙、あれ赤ちゃんのベッドメリー(ベッドの上でくるくる回るやつ)のオマージュですよね。妹さんは赤ん坊に戻りたかったのかな。玄関先で生々しいキスしてたくせにね!

 3―E 「忘れてしまってもいい」
ラストの方で、まさとが下の世界から持ってきた石の欠片を見て鷺が「向こうの世界の事まだ覚えているのか?強烈なお守りだな。だがまあどんどん忘れるさ。あばよ、友達」と意味深なことを言い残し去っていきます。これはモロに鷺=宮崎監督からジブリと共に育った私達に向けてのメッセージだと思いました。「下の世界」は黄泉の国でもあり、「ジブリ作品」という夢物語の話でもあるのです。どれだけすごい経験をしても一生細部まで覚えていることは出来ないし、下の世界での出来事もジブリ作品もいつか遠き日の思い出になってしまうかもしれません。しかし、その時の経験や、ジブリ作品で感じた感動や気付き、思い出が私たちの人生を変えた事実は変わりません。「君が私や私たちの作品をいつか忘れてしまっても、必ず何かが君の中で変わるだろう。それを大切にしてほしい。その上で、君たちはどう生きる?」そんな問いを投げかけられているように感じました。皆さんの解釈ももしよかったら聞きたいです。

4.さいごに
行くかどうかずっと迷っていましたが、行ってよかった。その一言に尽きます。今までの集大成と言える内容で、なんとなく今回で本当の引退のような気がしてしまいました。ジブリに出会えてよかったです。ありがとう。

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