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子供達から学んだこと

昨日は、私にとって、忘れられない日となった。

ベビーグランドピアノを買ったのだ。子供三人ひきつれて、ショールームのおじさんピアニストに幾つか弾いて貰い、一番温かい音色の、子供達の弾くチェロに合うだろうものを買った。入店して10分で決めたので、おじさんが「本当にいいの?」と何度も聞いていたけど、本当にいいのだ。12歳のあの日の自分と、42歳の今の自分。ここに来るべきして、来たのだ。このピアノを、買うべきして、買うのだ。そんな気持ちだった。

私は6歳からピアノを習い始めたが、譜読みが難しくなると共に、耳コピで弾くのに限りが出て辞めてしまった。辞めるまで6年、耳コピで弾き続けているのを、先生は殆ど気が付かなったのではないだろうか。大好きだったピアノが苦しみと挫折となり、ある日突然辞めて30年。以来、触る事さえなかった。

幼い頃から家庭ではクラシック音楽が流れていたためか、異常に耳がよく、雨の音や家電、急ブレーキの音などの生活音が音符に聞こえ、それは時に苦しみにも繋がった。中学に入ると、世の中の騒音が音楽に聞こえて、数年間家を出るのが嫌になった期間を経て、アメリカに留学し、今がある。

思い返せば、辛い時期も嬉しい時期も、心の中には音楽があった。年月を経て鈍った耳は、子供達の音楽の練習に毎日付き添ううちに、以前の鋭さを取り戻した。子供の頃諦めた譜読みは、子供達とのチェロの練習のお陰で、かなり上達し、今では娘たちの弾くサンサーンスやハイドンの協奏曲も、彼ら程のスピードではないが、読めるようになった。

来週から、ピアノのレッスンを再開する。夢を追い、叶えるためだ。いつか、子供達の弾くチェロの伴奏ができるようになりたい。それが、今の私の夢だ。

明日配達されるピアノを置くスペースを掃除しながら、あの子供の頃の挫折、苦しみも、無駄じゃなかったと感じている。あの時の挫折があったから、今この瞬間が嬉しいのだ。ピアノが我が家に来るのが嬉しいし、ピアノの練習ができるのが嬉しいし、来週からのレッスンが楽しみで仕方ない。

この先、子供達が経験するだろう苦しみや挫折も、長い目でみたら、そうではない、将来喜びに繋がる事だったりするのだ。

それを、肝に銘じておこうと思っている。

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