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現状維持人間

 1年半通った美容室を変えた。アパートを改装して、席も2席しかない隠れ家的なお店。美容師さんもお店の雰囲気も良くてできることなら一生ここに通いたいと思うくらいだった。

 半年前、お店から電話がかかってきた。予約を取るときにこちらから連絡することはあってもお店からかかってくることはない。嫌なことがよぎる。案の定、お店を閉めることになったという悲しいお知らせだった。最後の予約をとってお気に入りの美容室とお別れをした。

 さて、ここからが大変だ。とにかく環境を変えることが苦手な私にとって、美容室を変えることは、バンジージャンプをする以上に勇気のいることなのだ。だから余程のことがない限りそのままでいたい。思い返すと中学から大学まで通っていた美容室を変えたのも社会人になって物理的に通えなくなったことが理由だった。

 結局はきっかけがないと私は環境を変えようとしない。物理的に変えざるを得ない状況がそのきっかけになる。つまりは現状維持人間なのだ。

 できるだけ同じことを繰り返して生きる。それが世界に対して敏感な私の生存戦略。そんなことを新しい美容室で髪を切ってもらいながら考えていたら、あっと言う間に半年間伸ばした髪の毛は綺麗に整っていた。

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