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【備忘録】普通の中に沈む心がある

普通の中に沈む心がある。
海の様に深いところに沈むあの感覚である。
徐々に光が遠くなっていく。
深海ではなく水面でもない。
静かに濁った水の色である。

普通の中に沈む心がある。
この夜ができるだけ続いてほしいと願うあの感覚である。
深い闇の中で街の寝息が聞こえる。
一人であって、独りではない。
ここだけで許される孤独である。

普通の中に沈む心がある。
孤高へのあこがれを捨て去ろうとするあの感覚である。
群れが南へ向かう時、踵を返して北に行く。
主体ではなく限りない受動。
天邪鬼であることの否定である。

普通の中に沈む心がある。
昔に見た夢を見るあの感覚である。
森は今でも同じ木を並べ、霧の中にある。
北極星ではなく月を見て歩く。
位置が変わらぬことへの恐怖である。

普通の中に沈む心である。
普通の中に沈む心がある。
普通の中に沈む心があった。


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