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やめておけば、よかった01

01最低男と最低な自分

後悔してることなんて、数えだしたらキリがない。

私のつまづきなんて、きっと生まれてからずっと…。それでも何とか生きてこれたのは、僅かな希望と、夢のお陰。けれどそれも木っ端微塵になりそうで、頭が痛い。私、一体どうして、こうなっちゃったんだろう……。

身体に悪いと分かっていても止められない煙草。煙を吐いて気分を味わいたいだけで、ろくに肺に入れてないんだから、さっさと辞めてしまえばいいのに。これを手放すと私の中に何も残らない気がして捨てられない。

「……一緒にいる時位は吸わないでくれないか?」

眉間に皺を寄せて、あからさまに煙たい顔をして、嫌な感じ。何でこんな奴と一緒にいるんだろう。何でこんな奴に、どうして、何でナンデ?

伸びたヒゲに指を添えて、いたずらに頬を引っ張ってみる。よく伸びる…変な顔。

「何をしてるんだ、子供じゃありまいし」「ダメなの?私…あまりワガママ言わないじゃない。このくらい許してよ」

笑って許してくれるかと思ったら、裏切るように溜め息を吐いて…怪訝な表情のまま頭をくしゃっと乱した。

「ワガママを言わない?ならこの状況は何なんだ…俺は早く帰りたいんだ」

首筋の裏から体温が下がるような…息をするのも苦しい、やな感じ。男と女がベッドの上で戯れて。やるだけの事をしておきながら、それが私だけのワガママって言われたら、さすがに優しくなんてなれない。

「最低な人ね。アナタも、私も」                      「自覚があるなら帰ろう。なに、また時間が作れそうな時は連絡するから」

そう言って勝手にキスをして、さっさとネクタイを締めて支度を始めた。この人は、いつからこんな人になったんだろう。付き合い始めた時は、もっと不器用で可愛げのある笑顔を向けてくれてたのに。

「奥さんと娘さんによろしく。そしてサヨウナラ。もう、会わないから」

一瞬、彼の動きが止まったように見えたけど、そのままドアを開けて帰っていった。聞こえないふりをしてるのか。きっと彼は何事もなかったかのように連絡を寄越してくるんだ。最低、本当に、サイテー…。

「私も最低……もう、やめたい」

佐藤 ひな。32歳、OL。五年付き合っていた元彼が一年前に結婚。つまり二股されていた挙句に捨てられて、奥さんが妊娠してる間は不倫女に充てられて……。救われない、クズ。

一人には広すぎるベッドで、ただただ窓を眺めていた。何で私はこんなことをしてるんだろう。顔も知らない彼の奥さんと産まれる予定の赤ちゃん…私は既に二人の人間を不幸にしてる。

こんな私に、幸せになる権利はあるのかな…。


…………To be continued

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