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王の帰還(高木善朗):2023 J1 第23節 アルビレックス新潟×湘南ベルマーレ

王が帰還した。待ち望んでいた王が帰還した!

前半早々に2失点してしまいションボリしていたビックスワンだったが後半に王が帰還して勝ち点1をもぎ取った。

怪我から復帰したものの思ったようなパフォーマンスを出せていなかった高木だったが、この試合ではらしさを存分に発揮しての大活躍。そのままハットトリック第逆転劇で伝説アゲインしてくれても良かったんだが。

そんな高木のプレイを記録しておきたい。まずはボールタッチを確認しておこう。

この試合における高木のボールタッチ。左サイドが多め。

後半開始直後にゴメスからボールを受けると高木らしい滑らかなターンで前を向いて小見にパスを出す。出だしから滑らかなこの日の高木。

50:20のシーン、湘南のプレスが強くてボールを前に運べない新潟だが、高木が左サイドに落ちてきてボールを受ける。高木はそのままダイレクトで新井に返して守備を縦に揺さぶる。その後は狙い通りに空いたスペースで悠々と前向きでボールを受けて前進させる高木。

この直前15秒前まで右サイドでボールを扱っていたかと思っていたのに、なぜか左サイドタッチライン際にポジションを移している高木。ゴメスがボールを持ったまま内側に切り込んで守備を釣ってから左サイドで浮いている高木にインサイド表で守備の間を通すパスを出す。左ペナ角外でボールを受けた高木はゴール正面に飛び込んでくる星目掛けてインスイングのクロスを入れるがボールが合わず。

54:05のシーン、ゴールキック起点で泰基がハーフウェイライン手前の高木に鋭い縦パスを通すとダイレクトで左サイドのゴメスに叩いてボールを前進させる。ゴメスからボールを受けた孝司が相手タックルでボールロストかと思われたが高木が拾ってプレーオン。そのまま左ペナ角手前からインスイングのアーリークロスを巧に放り込む。

55:25のシーン、相手のトラップミスを見逃さずにボールを狩りに行く高木。後ろから上手く奪ってカウンター発動かと思われたが小野瀬のイエロー覚悟の無理矢理引っ張りに阻止されてしまう。

60:30のシーン、左ペナ角でボールを受けると事前に繰り出していたアーリークロスを匂わせることで守備の動きを限定させてから内側に切り込む。小見とワンツーで正面からシュート!と思われたが守備の網に掛かってしまう。ディサロの足が激しく掛かっていたように見えたがジャッジはノーファウル。抜け出して右足を振り抜く高木の未来を見てみたかった。

70:00のシーン、長倉がタイマンタックルで奪ったボールを預かると前を向いて最前線に待機している孝司へ素早くパスを供給。その後、孝司は長倉とのコンビネーションでシュートまで持ち込むが決めきれず。このシーン自体は長倉の凄さを象徴するようなシーンだが、リンクマンとしての機能を完遂した高木がいてこその流れでもある。

74:35、待望のゴールシーンとなる。なんとも高木らしいコントロールショットである。

守備を2人引きつけて絶妙の斜め楔を打ち込んだ松田が偉いし、それを曲芸っぽくコントロールして自分が撃ちたいのを我慢した長倉も偉いし、シュートコースが無いからフリーの高木にキッチリ預けた島田も偉い。見事に守備4人の隙間を縫ってゴールへ吸い込まれる高木のキック。湘南キーパーソン ボムグンのプレジャンプのタイミングを見計らって蹴ったのかどうかは本人しか知り得ないと思うが、結果的にソン ボムグンの両足が地面から離れた瞬間に蹴り込んでいるのでキーパーはボールに反応することができない。タイミングをずらされたキーパーは腕を伸ばすも距離が足りず、ボールはゴールへ吸い込まれた。ビューティフル!

80:00のシーン。ここまででアーリークロスと内側への切り込みを見せている高木が左サイドのタッチライン際でボールを持つと守備側は強制的にアーリークロスと切り込みの2択を迫られることになるし、近くに長倉もいるのでワンツー抜け出しという第三の選択肢も突きつけられる。

このシーンにおいて高木はボールを突っかけてそのまま泰基へ目掛けて素早くアーリークロスを蹴り込んだ。この時、湘南の最終ライン守備が整っておらず薄かったので、今後も同じ状況が作れるのであれば高木アーリークロスからのゲットゴールというシーンを目撃できるかもしれない。

このシーンは特に象徴的だったが、高木がサイドでボールを持った際、「アーリークロス」「切り込み」「コンビネーション抜け出し」の三択を仕掛けることになる。この状況は今後も多く見られると思うので観戦時には高木のサイドボール保持という状況に注目してもらいたい。

左サイドでボールを持つ高木。アーリークロスや切り込み、コンビネーションによる抜け出しなど複数の択を守備に押し付けることができる。

80:50のシーン、守備を背負いながら泰基の縦パスを受けてターンするも絡みつく守備に動きを封じられる高木。なのだが諦めない高木はシャツを引っ張られながらも倒れずに守備を振り払ってドリブルで前進を試みる。最終的にはファウルで止められてしまったが、勝利への執念を見せつけてくれた俺たちの高木。

87:30にはフリーキックのチャンスにキッカーとしてボールを蹴り込む高木。ファーで浮いているデンを目掛けて蹴り込んだが惜しくも湘南の守備に弾かれてしまう。弾いたボールはそのままゴールラインを割ってコーナーキックとなり、再びボールを蹴り込む高木。そこまで悪くなかった三戸を下げて高木を投入した意図はキッカーとしての役割が大きかったのだろう。

90:25のシーン、泰基が頭でクリアしたルーズボールをピッチ中央でキッチリと収める高木。守備の背後ブラインドを通すパスを出したがコントロールしきれずに守備に当たってしまう。が、諦めの悪い高木は跳ね返ったルーズボールに対して体勢を崩しながらも再び松田にボールを繋ごうとチャレンジする。このボールがスッポリと松田に収まったので松田はドリブルでペナルティエリア内へ向かって積極的に仕掛けてみせる。なんか今日はノリノリキレキレの松田だった。このパフォーマンスを常時発揮してほしい。

そして92:05、綺麗に決まった王の帰還。

守備の足が出てくることを完全に読み切ったステップとボールコントロール。鮮やかすぎてぐうの音も出ない。

その前の新井のスルーパスが出た時、どうして飛び出した湘南の最終ライン!という謎はあるのだが、たぶんそれまでガツガツ君なハントだったので新井のパス供給先はポツンと浮いているヤンしかいないと思っての飛び出しだったのだろう。結果として、新井のパス出しと孝司の抜け出し、湘南の飛び出しのタイミングがシンクロ率100%で重なったことにより生まれたゴール。孝司の股抜きクロスもバフ掛かってた感が凄い。

最後は高木のニア上強振シュートでキーパー絶対に取れないやつをブチ込んだ。ここにキッチリ蹴れる高木のキック精度が頼もしい。新潟のエンブレムを叩いて魂を讃える俺たちの高木。

見事なまでの王の帰還。白鳥の王はこれからも輝き続けるのだ。

試合雑感

勝てば残留に大きく前進する試合でゴメスの完全復帰。巧の躍動にも期待するしかない。札幌戦のパフォーマンスがそのまま出せれば躍動できるはず。今日は星スタートなので序盤からモリモリ攻めてくるだろうか。

そして長倉がベンチ入り。出番があるかどうか不明だが注目の選手となる。

などと期待しながら見終わったあとの感想。

エンターテイメントとしては面白い試合だった。高木の2得点というのも今シーズンのハイライトになるだろう。

しかしながら、サッカーとしては両者ともクオリティに満足しきれない試合で、4得点のうち高木の1点目以外は攻撃の上手さではなく守備のマズさによるものだと捉えたい。前半途中まで双方雑にプレーしている印象が強かった。

試合としては湘南の守備が532プレスだった。523ではなく、なぜに532でプレス?と謎だったのだが、ハーフスペースを縦一本で通そうとする新潟のパスを狩るためのものだったのだろう。前半30分くらいまでは面白いように引っ掛かっててそのままカウンター発動という感じで湘南の守備大当たりとなった。この面白いように狩られている時間帯で新潟は2点失ってる訳で、ゴールの奪われ方もよろしくなくて観戦モチベーションが著しく下がってしまった。

とはいえ、新潟は2失点してから無理に縦に通そうとせずダメなら戻すを徹底して、結果いつも通りに滑らかなビルドアップを遂行できるようになった。既に2点ビハインドなのだが。スワンに観客が多いと空回りしがちな俺たちの新潟。

後半に入るとそこまで悪くなかった三戸を下げて高木がが入る。今日の主人公登場である。交代の意図はキッカー確保という位置付けもあっただろうか、コーナーでは質の高いキックを蹴り込んでいた。

湘南は失点直前までは杉岡を中心に良くまとまっていたものの体力には限界がある。そんな状況で投入された新戦力の長倉。デビュー戦としては満点だろう。長倉はスペースを見つけるのが本当に上手い。ドリブル突破ではなくスペースを見つけてフリーで受けることができるので勝負せずに勝負に勝ってしまう。ゴメスとの滑らかな連携が頼もしい。これは素晴らしすぎる。

他に印象的だったのは巧の元気一杯に中央へ飛び込む姿とか、2点ビハインドでヤケクソ気味に泰基を上げてファイヤーフォーメーションとか、気付けばフルタイム出場の考司とか、なんか今日はキレキレだった松田とか。松田は常時このくらいキレキレでプレーしてほしい。振り返れば満足度高い試合だった。

他にもなんかあったような気がするのだがキリがないのでこのくらいにしておく。

楽しめたという意味で良い試合だった。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。