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越後の槍(長谷川巧):2023 J1 第21節 コンサドーレ札幌×アルビレックス新潟

悪天候の中でみんなよく頑張った!感動した!いやっほう!

完全に総力戦となった試合、終盤では前線プレス要員としての秋山が投入されるなど交代策からも絶対に勝ち点3を持ち帰るという強い気持ちをバシバシ感じた。

そんな総力戦において、最も輝いていたのは後半63分に右サイドハーフとして投入された長谷川巧であることは間違いないだろう。

本来ポジションは右のサイドバックなのだが、1列上げた右サイドハーフにコンバートされた巧のハイパフォーマンスが非常に素晴らしく、泰基のセンターバックコンバート同様に大当たりの予感しかない。新潟の選手層で切り盛りするために仕方なくなのか1列上げたほうがストロングを示せると判断したのかは不明だが、とにもかくにも素晴らしいコンバート大成功である。

それではプレーを個別に見ていこう。

後半63分にポジションとしては松田に代わってピッチに入ることになる。この直前、新井がDOGSO(決定機阻止)で退場となっていたのだが、そういった流れでピッチに入ることになる。

65:30におけるファーストタッチのシーン、ゴール前でヤンが後ろから引っ掛けたボールを回収すると直後に飛んでくる相手のタックルにも全く動じずボールをキープする。そのままスルスルと持ち上がって裏抜けを狙う小見にフライスルーを通そうとするが軌道の高さが足りず守備に引っ掛かる。小見の走り込みも良かったのでパスが通っていればというシーンではあったがチャレンジとしては良い判断だった。

優れた状況判断とクリーンなタックル

65:55における守備のシーン。並びとして442ブロックの2列目右を任されることになるが、左センターバックを走らせて大外抜けを狙うというのがこの時間帯の札幌の基本だった。大外を走らせてハーフスペースの宮澤が攻撃を組み立てるという形。

この状況において巧はボールホルダーの宮澤をしっかり視界に収めた状態でバックステップして大外もケアをするという地味な好プレイを見せる。結果として宮澤は何もできずに後ろを向くことになるのだが、巧はこのタイミングで宮澤目掛けて一気にボールハントするためのダッシュをする。

「宮澤が後ろを向いて視界から巧が外れた瞬間に一気に寄せる」というこのプレイ、宮澤は巧の存在を認識できないのでボールを狩りやすいし、なによりもこの状態でボールを狩ることができれば巧はスピードに乗った状態でボールを扱うことができるので一気にカウンターを当てることができる。加えて、巧の前には守備が2人しか残らない形になるので全員で走れば大決定機創出である。いつかこのパターンで電光石火のカウンターを決めてほしい。

66:20のシーン、押し込まれながらもゴール前でボールを引っ掛けてルーズボールの奪い合いとなったので元気に突っ込む巧。駒井とガチムチ肉弾戦を繰り広げてスタジアムを沸かせる。73:45には宮澤のドリブル突破を完璧なフットボールコンタクトで張り倒す。クリーンタックル!

67:30にはボールホルダー宮澤で左大外を中村が走ってくるというシーンが再現されるが全く同じケアの方法で守備を遂行する巧。愚直にやり続けることの大切さ。その後に大外中村にボールが入ってしまい藤原が大外に出向いてボール対応せざるをえない状況となり、藤原不在で空いたポケットに菅が走り込んでくるがきっちりと埋めて菅に何もやらせない。

巧はこういったスペースをケアする守備が本当に上手い。

後半70:30にも右サイドで繰り広げられる菅とルーカス・フェルナンデスによる内→外ダイアゴナルラン&カットインドリブルのイリュージョンプレーに対しても慌てることなく藤原にコーチングしつつ外をケアさせて、巧自身はカットインをキッチリ潰すという地味ながらパーフェクトな守備を披露してくれたし、76:20からのシーンでは札幌のボール回しに守備が翻弄されてブロックが壊れ掛けていたものの、巧が上手く立ち位置を取ることで右サイドにおける宮澤のスペースを埋めて前に走らせないようにしていたりする。84:25にも菅の単騎突破をフィジカルコンタクト無しでサイドに追い込んで潰したりしている。

スペースを埋める、ボールホルダーにアタックする、マークを受け渡す、マークを引き受けるなどの優先順位付けと判断とポジショニングが非常に的確な長谷川巧なのである。

縦突破させず、カットインもさせず、スルーパスも出させない。そういった地味だけど重要な守備をしているのが長谷川巧なのである。

なお、巧の守備で特徴的で印象的なのはボールホルダーと対峙した時の立ち姿だったりする。

両足を大きめに広げて腰は落としすぎず、左右対称となるように両腕を下ろす。ボールホルダーの動きに合わせて小刻みにステップを踏んで、奪いに行く際には一気に詰め寄るというものになるのだが、これはもうシルエットクイズで「正解は長谷川巧!」と言えるくらい特徴的な立ち姿ではないだろうか。軸足を中心にして円を描くように体の向きを変える所作も非常にスマート。美しい。

ボールホルダーと対峙する巧。縦もカットインも突破されることは稀。[アウェイ柏戦(ルヴァン2023)にて撮影]

この立ち姿が合理的なのかどうか素人には判断が難しいが、両足を広げて小刻みに動かれると対峙したボールホルダーは目の前に大きな壁が立っていると感じたりするのかもしれない。

スペースに飛び込む槍

83:00と85:25のシーンではシン・長谷川巧を良く表現したプレイを見せてくれた。本人のコメントを引用するならば「スペースは大好物」である。

まずは83:00のシーン。小島のゴールキックを起点にして目の前に転がってきたセカンドボールを拾いに行く巧だったが拾いきれず、なのだが藤原がしっかり拾ってクリア兼ロングスルーパスでサイドに流れる小見に通すと結果的に攻め残りしていた巧がペナルティエリア付近まで上がってボールを引き出そうとする。最終的には巧がペナルティエリア角で宮澤を背負って本職フォワードかと思うようなフィジカルを活かしたポストプレイでボールを受けてターンして一気に決定機まで持って行こうとする。タイマン相手の宮澤はたまらず倒してゴール前でフリーキックゲットである。もうちょっとでPKゲットという位置だった。

巧のフィジカルの強さと体の使い方の上手さの相乗効果で生まれたこのプレイ。新しい長谷川巧を全新潟が目撃した瞬間でもある。このプレイは本当に凄いインパクトだった。

そして85:25のシーン、我々は更に大きなインパクトを与えられることになる。

セカンドボールを小見が拾って新潟のターン発動というところでボールを持ったのは巧。右サイド深くからタッチライン際をドリブルで駆け上がり、途中守備に引っ掛かるものの味方が回収してくれて縦突破継続ずっと俺のターン!ということで菅を逆裏街道ドリブルという超絶オシャレなプレイで抜き去って一気にペナルティエリアまでボールを運んでしまう。スペースは大好物!実質60m以上をドリブルで爆走したんじゃないだろうか。

このプレイは最終的にファウルで止めらてしまうが、あと少し内側に入っていたらPKゲットアゲインというスーパープレイだった。この逆裏街道ドリブルをリプレイじゃなくてスポットで寄せて抜いたDAZNカメラが凄い。これは奇跡のワンシーン。

加えて、179cmの身長と当たり負けないフィジカルを活かして小島のゴールキックのターゲットになるという、これまた地味ながら非常に重要なプレイも見逃せない。ターゲットになるだけではなく、ポジショニングの良さとフィジカルの強さを活かしてセカンドボールを積極的に拾えるというスペシャリティも持っている。高く描かれる放物線スローインを相手に抱きつかれながらも収めようとする場面もあったり、とにかく屈強すぎる長谷川巧。

越後の槍として今後も突き進んでもらいましょう!

おまけとしてルヴァン2023のアウェイ柏戦における巧の勇姿を載せておきます。これからも良い写真を撮らせてくれよな!

試合雑感

新しい新潟のスタイルが固まるかどうかという試合になりそうなスタメン。星&三戸が流動的に動いてビルドアップと攻撃を組み立てるというのが基本の戦術となるが、それはデンと泰基の縦パスのクオリティが高いからこそという部分もある。

控えメンバーに不安が多いが現有戦力でやってもらうしかないのでやってもらおう。

相手はミシャの札幌で酷い悪天候です。新潟のやりたいことができない展開になるとは思うが、まずはどこまで新しいスタイルが通用するかがこの試合のチェックポイントになる。

そんな感じで不安を抱えて観ていたが、新潟の新スタイルが良く機能していた前半だった。そして今日はゴール前の守備が非常に良い。

札幌は流石のアタッキングサードで人数を掛けて仕留めにくるが集中して跳ね返す俺たちの新潟。松田の守備が他のメンバーに比べて技術も気持ちも一段劣るので、前半終盤の時間において札幌にねちっこく狙われていた。狙われていたのだが実質藤原が全部守ってくれるし幸いなことに金子は逆サイドにいるのでおおごとにならずに済んでいる。破られるとしたら松田の守備だと思う。

前節神戸戦では見ることができなかったが、今日は小島やデンや泰基からインサイドキックで孝司に縦パスが良く入ります。これは新潟ならではのプレイなので存分に堪能したい。

で、そんな孝司に元気に食いついてくる左利きの大型センターバック岡村大八。元気に食いついてくるので岡村が空けたスペースにラン&フリックが決まりそうなものだがDAZNだと画面に映らなくて札幌の最終ラインどうなっているのか良くワカラン。大八が食いついているし札幌は仕組みとして前掛りなので最終ラインは薄くなっているはずだとは思うのだが。それにしても岡村大八のムキムキ感が凄い。凄いのだがウチの泰基のほうが圧倒的なので森保監督は大八じゃなくて泰基をちゃんと見てくれたんだろうか。

後半、守備の集中を切らさずに先制できるだろうかと思っていたら途中から残留を決める一戦みたいな感覚になって喉カラカラ。凌ぎ切った!これは大きすぎる勝ち点3!

最後は秋山が前線にに入ってプレスするということまでやってくれた松橋監督。これは勝利への執念というしかないだろう。田上も非常に気持ちの入ったクリアを何度もやってくれていた。本当に全員でもぎ取った勝ち点3で強いぞ俺たちの新潟!

そして、今日の試合はなんと言っても巧だろう。攻守共に耐えることができたのは巧無くしてあり得ない。アタッカーとしての巧が本当に素晴らしかったし守備力も結果として松田より上がりました。巧はこれから泰基のように一気に伸びるかもしれない。厳しい台所事情において、コンバートすることで潜在能力を引き出す松橋監督が有能すぎる。

とりあえず今日の勝利を噛み締めずにはいられない。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。