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サガン鳥栖の(とんでもない)守備戦術:2024 J1 第22節 アルビレックス新潟×サガン鳥栖

鳥栖は対戦するたびに独特かつ屈強な守備戦術をしてくるチームだと思っていたのだが、この試合では今までの鳥栖とは違い意図の読めない守備戦術をぶつけてきた。今回はそんな鳥栖の守備戦術について書いてみたい。

以前の鳥栖の守備戦術については過去の記事を置いておくのだが、本当に洗練されていて戦術と戦術が噛み合う試合だったのに今回はよくわからない試合になってしまった。もしかしたら俺の期待値が勝手に高くなっていただけかもしれない。大量失点で負け惜しみ言ってるわけじゃない!

試合開始の序盤はどのチームどの試合でもワチャワチャするので気にするところではないのだが、当然のように鳥栖はスタイルとしているハイプレスでガンガンいこうぜ!の姿勢を見せつけてくる。くるのだがボールホルダー1人+パスコース2人の計3人に対して6人のプレスを当ててくるのはやり過ぎである。デンが余裕のキックモーションでゴメスにロブを通す。

新潟ビルドアップ隊の3人に対して6人でプレスを掛けてくる鳥栖。リスキーすぎる守備だがこの試合では抜群にハマった。

そんな状況関係ねぇ!と言わんばかりにゴメスの背後から2人がかりでプレスしまくる鳥栖。ゴメス1人に対して後ろからプレス2人+対面1人の3人体制でボールを奪いに来る鳥栖はボールへの執着が凄い。その後は谷口と小見のコンビネーションで抜け出しを狙うが、やはり鳥栖の守備3人体制に絡まれて転ばされてしまうボールホルダーの小見。ファウルは取ってもらえない。ボールを奪った鳥栖は5人が半径5メートルに密集しながらボールを運ぶ。改めて見ると試合開始直後からカオスだった。

盤面を描きながら思ったのだが、3人に6人を当ててもパスの出しどころを消してしまえばボールの逃し先がなくなるので数的不利にはならない!局所的に圧倒的有利だからそこで奪うのだ!ということだったのかもしれない。ロブを飛ばされても4人が後ろから挟み込めば実質4対8だ!みたいなことだったのかもしれないのだがどう考えてもリスキーすぎる。

その後、新潟が最後方からビルドアップする際にまたしてもレシーバー1人に対して守備を複数人ぶつけるという圧力を掛けてくる鳥栖。新潟は余裕の表情で浮いている選手を経由してボールを運び、鳥栖のハイラインの裏に松田が抜け出してチャンスメイクかと思われたが松田が間に合わずタッチラインを割ってしまう。

その後も鳥栖はとにかく前線と2列目の選手が縦に横に走りまくってハントを狙う。島田と秋山を高い位置の守備3人で防ぐという方法だろうか。そんなことしたら新潟の誰か浮きまくりになるじゃん…  と思ったら阿部が冷静にゴメス目掛けてハイライン裏へポンするがボールに関係ない場所で小見がオブストラクションのファウルを取られてしまう。納得感ゼロ表情の小見とボールを叩きつけそうな勢いのゴメス。

新潟のパスコース1人に対して複数人で潰しに掛かる鳥栖の守備。当然新潟の誰かが浮くので冷静にゴメスへロブを通す阿部。

一方、新潟の守備も序盤は元気一杯にプレスだが、鳥栖とは異なりセオリー通りにボールホルダーへ1人がアタックして、鳥栖のパスコース3人に対して新潟も3人でマンツーマンプレスしてパスコースを潰す対応を行う。

その後も鳥栖はボールホルダーへアタックするがパスでかわされてボールを前進させられてしまうが後ろから猛ダッシュして死角から潰すという守備を行う。新潟が前方へボールを蹴り出すと鳥栖の最終ラインが回収してターンエンドとなるまでがワンセットだったのかもしれない。

前半も5分が過ぎてワチャワチャタイムもそろそろ終わりかなと思ったのだが、相変わらずボールホルダーの後ろからチェイシングしてハントを仕掛ける鳥栖。前半5:40のシーンは右サイドで松田を3人で囲みながらのボール奪取である。

その後も新潟のボールホルダーとパスコース1人の2人に対して3人で囲む鳥栖。ならばとロブを蹴る新潟だがさっきまで通っていたロブが鳥栖にインターセプトされてしまう。これが今日の鳥栖の基本的な守備戦術だったのではないかと思う。思う… というのはあまりにもリスキーすぎて意図的にやっているのか結果そうなっただけなのか良くわからないからである。試合後インタビューの川井監督もなんか歯切れ悪かったし、このハマりにハマりまくった守備が意図したものなのかどうかは良くわからない。結果として新潟はボールを繋げずに奪われていたという事実だけが置かれている。

複数人で囲んで繋がるロブをあえて蹴らせてハントする鳥栖の守備。

鳥栖があり得ないプレスで追いかけてくるので新潟はセオリー通りにロブでサイド奥にボールを飛ばすのだが、今日の阿部はプレッシャーが掛かっていない場面でもキックが安定せずにタッチラインを割ってしまう。鳥栖のありえないプレスが誘ったミスなのかどうかは知らないが、新潟からしたら噛み合わないを通り越して悪い方向に噛み合ってしまった試合だったのだろう。本当に全てがうまくいかなかった。

その後もビルドアップ隊4人に対して6人が飛び出てくるというファイヤーすぎる鳥栖の守備が続くのだが、前半11:55のシーンではゴメスがフィジカルコンタクトを受けてよろめきながら出した小見へのパスを原田がインターセプトしてマルセロヒアンのカウンター決定機に繋げていて再現性があるので、これがこの試合における鳥栖の守備戦術になってくるのだろう。大量リードしたあとは普通にブロックと控えめなプレスで対応する鳥栖でもある。

リスク承知で人数の釣り合わないプレスを掛けてサイドへのロブを誘って刈り取る。この仕組みが今回の鳥栖の守備戦術であり、リアルタイムで観戦していた際、「人数の釣り合わないプレス、なんというセオリー無視な守備なんだ!」という強いインパクトが俺の頭の中に残った。そして前半12:50に鳥栖のコーナーキックからキーパーファンブルの失点を喫してしまい流れが完全に鳥栖のものとなってしまう。DAZNの画面から伝わるスタジアムの雰囲気もなんか淀んでしまっていた。

この日の4失点のうち3失点は崩されて失点というわけではなく、普段なら絶対に起きないようなミスとか「お前らはマドリーか!」と言いたくなるほどの理解不能なゴラッソとかなので、ただただ鳥栖の日であって新潟の日ではなかったというだけである。本当になんでそれが決まるんだよ!というゴールばかりなのである。なのであるのだが鳥栖の2点目は教科書通りのマンツーマンプレスからの最終ライン飛び出しハントからのカウンターからのコントロールショットなので非常に美しいゴールだったことは認める。横山がなんか凄いし俺の知ってる鳥栖の守備はこれであって4人に対して6人が噛み付いてくるプレスじゃない。

一方、鳥栖がどんなに理不尽な形でゴールを奪っても新潟はロジカルにゴールを積み重ねていったのでこの先を悲観する必要は全く無い。

まずは前半16:40からのシーン。デンのボール回収からゴメスの痺れる縦パスをトリガーにしてし小見の抜け出しとペナ角タイマンからの技ありクロスからの谷口ヘッドというロジカルかつ芸術的なゴールで同点に追いついた。

2点目はデザインコーナキックでニアに寄せておいてからのファーでマイケルというゴール。ゴールを割っていないかもしれないという判断で蹴り込んだハセモと小見も凄く偉い。

後半83分に生まれた3点目も殴り続けた結果としての藤原である。試合最終盤の劇的ラストシーンとなるはずだった世界がフッと止まった小野ヘッドの飛び込みは絶対に決まったと思ったのにボールはなぜかネットの外に転がっていた。どうして!

結果が結果だけに何を言っても負け惜しみにしかならないが、結果が出た鳥栖側は何とでも言えるし新潟側はストロングを攻略された形になってるし、新潟サポの視点としてはアイデンティティを破壊されてとにかく大ダメージな試合となった。

ただただ本当に噛み合わなかったというだけだったし、鳥栖とか湘南みたいな自社開発系プレスに新潟はめっぽう弱いということが理解できたことを収穫として捉えておけば良いと思う。広島とかマリノスのマンツーマンプレスは普通にクリアできているし、町田や鹿島なんかのプレスにも対応できてる。ガンバのプレスも正攻法ではあるが前回対戦時の強度が尋常ではなかったので次の対戦楽しみだったりする。

見たことない守備戦術にも勝てるようになる日がくるということを考えれば、まだまだ伸びしろだらけの新潟なのである。

試合雑感

6月の無敗新潟からすると強いな!としか感じないスタメン。札幌戦でハセモがかなりフィットしていたのでまずはハセモに注目したい。

控えの注目はダニーロと青空、そして古巣対戦となる小野。稲村は札幌戦で左サイドバックとしてのスペックも存分に発揮していたので見てみたいところではあるのだが交代は普通に史哉が出てくるだろう。ゴメスと稲村の交代だと役割が同じなので変化がだせなさそうだし。

6月の勢いそのままに7月は全勝を決めたい、そのためにまずは鳥栖戦で勝ち点3をゲットしておきたい。今日の鳥栖は河原がベンチスタートで河原のいない鳥栖とか新鮮すぎる。

川井監督の鳥栖は攻撃よりも守備に特徴があるチームだと思っているのだが今日はどんな守備を仕掛けてくるだろうか。普通にマンツープレスだとは思うのだが523ブロックとかも考えられる。そのあたりに注目してみたい。

などと川井監督の鳥栖の守備に期待していたらなかなか酷いサッカーとなってしまっていた。俺の中で川井監督の評価はこれ以上ないくらいに下がりまくり。どうしてこうなった。

負け惜しみにしかならないが、この日はいわゆる噛み合わないというやつになり、鳥栖がセオリーや規則性を無視したことをやっているのでゲームとしてのコミュニケーションが成立せず鳥栖が自分達のやりたいことだけやった結果新潟が理解出来ずに壊れたという試合だったと思っている。鳥栖が強かったわけでも新潟が弱かったわけでもない。むしろ4人交代で流れを無理矢理変えた新潟を誉めて良い。

カオスに対してダニーロというカオスをぶつけたら秩序が生まれたという展開になったのは笑ってしまったが、それ以外はロジカルかつエモーショナルに追い上げた新潟である。サッカーとしては圧倒的に新潟だったので何も悲観する必要は無いし、鳥栖のこのサッカーに付き合わされたことが腹立たしくて仕方ない。マイケルの2点目も藤原の3点目は決まるべくして決まったゴールだし、小野のヘッドも決まるべくして決まるはずだったのだがこれがサッカーというものなのだ。EUROでも連日そんなシーンばかりだ。

とはいえ鳥栖の横山は規格外だったし朴 一圭は相変わらず良いキーパーだった。朴 一圭のスペース埋めとキックが非常に良い。マルセロヒアンもなかなかのチートだったし長沼のゴラッソは… まぁこの試合を象徴していた。全く理解できないがゴラッソである。鳥栖のサッカー、あれなら引いて守ってヒアンによろしくが一番強いような気がする。DAZNの播戸解説員は向いてないと思った。

非常に痛い敗戦なのだが悲観する必要は全くないので、一歩一歩確実に歩んでもらいたい。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。