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湘南プレスを攻略したい(532プレス攻略):2024 J2 第15節 湘南ベルマーレ×アルビレックス新潟

普通に勝てた試合だったと思うのだが終わってみたらなんか負けてたという感想の試合。畑の突破力がエグすぎて目ん玉飛び出た。

湘南の532守備が機能していたのかしていなかったのか正直判断できないのだが負けは負けなのでこの試合の新潟が532守備をどのように攻略しようとしていたのかを記録しておきたい。湘南の守備はいつ対戦しても独特なのでこれが湘南のスタイルなんだろう。

湘南の守備、532になったのは前半途中からで20分くらいまでは独特なプレスで新潟のビルドアップを封じようとしていた。配置とかフォーメーションとかはあんまりなくてボールの出先を潰すというものだったが絵にすると結構リスキーな守備のようにも思う。盤面だけで見れば千葉から落ちてくる鈴木孝司に縦パスを通して谷口にフリック or スルーパスで完結するものだが気合いの対人守備でボールの出先を潰すというもの。実際に大岩なんかは全力で孝司を潰しに掛かっていたかと思えば星を潰すためにサイド高い位置までプレスに行っていたりする。全力守備すぎる。

前半序盤の湘南の守備。

湘南はこれでずっとこれで行くのかな?大丈夫かな?と対戦相手ながら心配になったのだが、この守備は序盤のワチャワチャタイム限定だったようで15分くらいからは落ち着いた532守備になる。とはいえ、やることは基本的に変わらず独特プレス継続だし、昨シーズン対戦時にも感じた「それやるんなら523でプレスかけたほうが合理的では?」という守備方法。

532守備は中央を運ばせないように封鎖しつつサイドに防波堤を作ることを目的としたブロック守備でありプレスを掛けるものではない。そんなことをしたら本来の目的の中央封鎖ができなくなってしまう。なのだが、これが湘南スタイルなのだろう。結果として新潟は負けてしまっている。532プレスは山口智監督の守備戦術の代名詞になるんじゃないだろうか。

湘南の532守備。ブロックのセット位置が高く、ボールが出たらプレスを開始させる。

この配置なら新潟が狙うのは大きなスペースを与えられているサイドバックの高い位置になるのは当然である。普通に藤原や星にボールを入れる新潟だが、その際にサイドバック目掛けて飛んでくるインサイドハーフのプレス。平岡や池田がもの凄い勢いて詰めてくる。加えて同時にウィングバックの畑や鈴木もプレスで突っ込んでくる。

532の形から突っ込んでくるのがインサイドハーフの1人だけならサイドでトライアングルを作って新潟定番のロンド地獄に持ち込めるのだがウィングバックまで詰めてくると狭い場所での3対2の状況となってしまう。こうなるとロンド地獄の精度が落ちてしまい結果としてボールをロストする確率も高くなる。

この状況の新潟としてはウィングバックが飛び出すということは大外高い位置にいるサイドハーフがフリーになるということでもあるのでそこを使いたい… のだが今度は両脇のセンターバック、ハルプフェアタイディガー(口が回らない)がサイドハーフに詰めてくる。が、ハルプフェアタイディガーが持ち場を離れれば長倉や孝司が浮くのでそこにボールを供給できれば… となるのだがそれを絶対に許さない湘南の守備戦術ということなのだろう。

532の陣形からインサイドハーフが元気に飛び出してくる湘南の守備。ウィングバックも同時に詰めてくるのでロンド地獄に持ち込めない。

この守備をどうやって攻略するかということになるのだが、メタゲームとしてすぐに思いつくのはサイドにボールを置いてインサイドハーフを釣ればハーフスペースが空くのでそこに偽9番ムーヴする孝司長倉に差し込めば良いよな、ということになる。が、これは前回対戦時に試みたものの守備に引っかかりまくって序盤で2失点してしまったやり方でもある(なお、その後に王の帰還で同点に追いついた)。

インサイドハーフが出てくるならハーフスペースが開く、ウィングバックも飛び出してくるなら大外高い位置が開く。仕組みだけならこの絵のとおりになる。

今回もインサイドハーフがハーフスペースを開けるものの縦パスを供給できない俺たちの新潟。理由はわからないのだがピッチ上では結構なプレッシャーがあるのかもしれない。狩られたら高い位置から即カウンターな訳だし。

湘南のインサイドハーフのプレスはタッチラインに追い込む形で掛けていくのでハーフスペースの縦を狙おうにもサイドから中央にボールを戻せないとかがあったのかもしれない。新潟はビルドアップ時にサイドバックが大外目一杯に広がっていたのでボランチとの距離も遠くなりがちではあった。

試合を通して何度も狙っていたように、ラインを高く設定した守備に対してサイドにボールを置いてからプレスを引き込んで裏ポン擬似カウンターするとか、サイドでロンドの流れから奥村が内側で受けて中央突撃とか、安易にサイドにボールを渡さないで小島とデン千葉がパス交換して最前線のプレスを誘ったりとか、いろいろ工夫はしていたけどイマイチ攻略しきれずという試合だった。後半に入るとディサロが出てきて前線のプレスがパワーアップして秋山潰しの色が強くなって流れが悪くなり、逆転されたあとは交代を使った541ブロックで締めという終盤における完璧な試合運びをされてしまった。

ちなみに新潟のゴールシーンは千葉のピンポイントロブからの流れで思ってたのとなんか違う!というものだった。空いたウィングバックのスペースを使った谷口の見事なムーヴ!とも言える。決まればなんでもいい!

湘南の守備戦術を攻略しきれなかった新潟という試合なのだが、この試合ではクロスやコーナーキックにも特徴が見えた試合でもある。それはそれとして今後にそれが大爆発した時のお話として。

厳しい台所事情でも新潟のスタイルで勝つことはできそうだなと感じることができた試合でした。

試合雑感

奥村稲村という明るい材料は増えたものの相変わらず厳しい台所事情な俺たちの新潟。これ以上怪我人が増えないことを祈るのだがボランチがいなくなった結果としてのヒーロー奥村なので本当にわからない。

湘南は間違いなく3バックの布陣で守備時は5バックになる。5バックが541なのか532なのか523なのかはわからないのだが深い位置からのクロスは上げられない前提でどんなゴール前になるのかに注目したい。秋山のアーリークロスから長倉ヘッドとかが理想だし奥村カットインからのなんか凄いシュートなんかもロマンに溢れている。

守備は前節マリノス戦できちんと出来ていたしセカンドボール回収もできていた。湘南の3バックは大外を縦に使ってくるような気がするので小見にはサイドを離さず中にも入れさせずという集中した守備をしてもらいたい。

そんな期待を込めたものの終わってみたら負けていた。

普通にやれば普通に勝てた試合を自分達で難しくしてしまった試合だったと思う。DAZN解説の林陵平解説員の解説が的確すぎるので俺のコメントなど非常に稚拙なものになるのだが記録として書いておく。

湘南は良くも悪くもひとつのことをひたすらやり続けるチームだった。攻撃はサイドの推進力でボールを運んでグラウンダークロスをマイナスに蹴って中央に走り込んでくる選手がフリーでシュート。畑の推進力が驚異すぎた。

この試合のポイントとなったのは湘南の532守備。

プレスプレスで飛び出してくるのはウィングバックではなくインサイドハーフで532の3の両端になる。このプレスが前半空回りで後半も強度は上がったもののそこまで屈強というものではなかったと思う。

メンタルの話なのか余裕でいけるでしょみたいな感覚になった結果なのか湘南のプレスが画面越しみ見る以上の迫力だったのかは知らないが湘南のプレスがハマってしまう。新潟はそこからペースを掴めず時間が過ぎてしまい、あれほどサイドの守備を離さないでくれよと小見に言っていたのにサイドの爆発推進突破神の畑を手放して前に出てからの流れから逆転ゴールが生まれてしまう。別に小見が直接的な原因ではないだが観戦ポイントに設定していた俺としては頭を抱えるしかない。

林陵平解説員は「湘南のインサイドハーフを広げてハーフスペースに縦パスを」と言っていてセオリーはその通りなのだが昨シーズンの湘南戦においてはそのやり方で通そうとした新潟の縦パスが結構な頻度で引っ掛かっていた。この辺りはインサイド・アルビレックスな何かがあったのかもしれない。

この試合で目立っていたのは間違いなく長倉だったし秋山のコーナーのライナーボールは長倉用の射出だったのではないだろうか。跳び出て頭に当たればそのままゴールという質のキック。

あとは稲村フィードが色々おかしい。

長倉のフィジカル、奥村のスタイル、稲村のフィードと尖りすぎてる選手を立て続けに獲得しているのでリータや青空がどんなに尖ったフットボーラーなのか楽しみしかない。

結果はなんとももったいない試合だったのだが、質はどうあれ戦術的には面白い試合だった。勝ち点3欲しかったな。

そういえばジャッジ。笛自体は問題なかったのだがカードの出し方の不公平感が凄かったです。最初の藤原イエローが基準になって、こりゃ安易なファウルできないなとか思ったのに、湘南のそれはイエローでないんですか?みたいな場面が多くてピッチ上の選手は結構感情的になっていたが後半は割と落ち着いたジャッジになっていた。本当に藤原イエローはなんだったんだ。

後日、ルヴァンカップの秋田戦では奥村が相変わらず躍動して青空は特別指定時代の至恩が決めた金沢戦みたいなゴールで一夜にしてヒーローになっていたりするので本当にわからない。怪我人続出という巡り合わせでチャンスを掴んだ白鳥たち。稲村は最初からガチ度が振り切れてて200%くらいある。

次節は伊藤涼太郎伝説の生まれたホーム福岡戦。期待すると何も起きないからいつも通り観たいんだけどニューヒーローが活躍しているので何かに期待せずにはいられない。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。