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新潟式523ブロック攻略2024:2024 J1 第16節 アルビレックス新潟×アビスパ福岡

湘南戦に続き、終わってみたらなんか負けてたという試合になってしまった。

怪我人が多くて万全の体制で戦えないという状況下でもスタイル全開で新潟対策をしてくる相手にメタ攻略を仕掛けてきちんと戦術も機能しているだけに結果がでないのは本当にしんどい。シーズンも試合単品もイマイチ流れに乗れない俺たちの新潟。

さて、この試合の福岡戦は予想通りに福岡の屈強な守備をいかにして攻略するかという構図になった訳だが、今回福岡が繰り出してきたのは442ブロックではなくポゼッション対策の定番として定着している523ブロックだった。

この福岡523ブロックを新潟はいかにして攻略しようとしていたのかを解説してみたい。

福岡の523守備。中央とハーフスペースを封鎖しつつサイドは5バックで埋める。

523守備の基本としては2-3のペンタゴンブロックで中央ボランチにボールを入れさせず、仮に入ったとしてもペンタゴンの籠の中で潰すというのが第一にある。そして、これだけ中央に守備を集めるとサイドが空いてしまうことになるが、そればペンタゴンのスライドだったり5バックなどで対応するというのが基本的なものとなる。

この日の福岡、新潟の偽9番をどうやって捕まえるのかという問いに対しては元気いっぱいにセンターバックが飛び出すことで偽9番がボールを受ける瞬間にピンポイントで潰すということをやっていた。ドウグラスなんかは孝司もみつつ奥村のポジションも意識しながらとにかくボールが入る瞬間を絶対潰すという守備をしていた。奪ってしまえば中央からカウンターを当てることができる。シンプルで強い。

この守備に対する新潟の対応として、最終ラインが中央でボールを持ちながら秋山と奥村にボールを入れることを匂わせ、ペンタゴンを小さくさせることでサイドに空いたスペースへロブや足の速いグラウンダーで通すというもの。その際には孝司や長倉だけではなく谷口などもペンタゴン付近に落ちてきたり高い位置に居座ったりして福岡の最終ラインを撹乱させる対応も欠かさない。

中央を意識させることでサイドのスペースが空く。フォワード陣が落ちることで最終ラインを釣り背後のスペースも狙う。

このやり取りにおいてサイドでボールを受ける際、新潟のポジション取りの上手さが際立っていた。

ペンタゴンを中央で固めさせておいてからサイドというのは当然の振る舞いになるが、サイドで受ける際にサイドバックが2-3ブロックの3よりも後ろでボールを受けるということを徹底していたりする。

この受け方、文字で読めば簡単なプレイに思えるかもしれないが、センターバックからブロックの先に通すということはロブを蹴ったりペンタゴンに引っ掛からないルートを作ったりする必要があるし、それを実行する技術も必要となる。

配置でペンタゴンとサイド守備を動けなくさせておいてからロブで通す新潟のビルドアップ。ペンタゴンこと2-3ブロックの形が歪んで広がれば孝司や長倉への縦パスコースを空けることになってしまう。

この攻守のやり取りが試合を通して続くことになったのだが、メタゲームとして非常に面白い展開である。サッカー観てるなって感じがする。

具体的なシーンを見てみよう。

上記の絵のシーンでもある前半11:00のシーンでは紺野が堪えきれずに千葉にアタックにいった瞬間を見計らってロブを繰り出している。手玉に取るとはこういうプレイだなというお手本。直後の12分のシーンでは小見が福岡センターバックの井上を上下に揺さぶっている間にデンがボールを餌に佐藤を釣り出して裏の藤原にスルーパスを通す。

前半15:10のシーンでは紺野が元気いっぱいにアタックしてくるのでその裏で史哉が受けて守備をサイドに寄せる。このとき、福岡はプレスによってペンタゴンの原型を留めることができなくなっているのでハーフスペース高い位置に繋がる縦パスを通すことができている。

前半25:30のシーンは中央にボールを付けることでサイドのスペースを空ける見事なビルドアップだった。秋山がペンタゴンの外の低い位置でボールを持って前を向くと、ペンタゴンの中に陣取っている奥村にボールを預ける。この形になることで慌ててペンタゴンを圧縮する福岡だが落ちてきている孝司に縦パスが入り、ピンポイントでアタックしてくるドウグラスを感じながらペンタゴンの裏でフリーになっている史哉へ展開する。この後はドウグラスが戻りきれない最終ラインにウィンガー谷口が素早くクロスを放り込み、長倉と小見がゴールを狙うもブロックされてしまう。この流れで決まっていれば本当に素晴らしかったタラレバ指数の高いプレイ。

前半33:30にはペンタゴン目掛けて孝司が落ちてきてドウグラスとボランチ松岡をの2人を同時に釣ることでペンタゴンを広げて縦のパスコースを確保し、千葉と長倉の縦パスホットラインが美しく成立する。後半58:00にはデンと千葉が横パス交換しながらペンタゴンを揺さぶりつつ奥村がボランチの前寛之をピン留めすることで小見へのダイアゴナルなパスコースを作る。そうやって敷かれたパスコースの上を寸分違わぬコントロールでデンがペンタゴンを縦に切り裂くグラウンダーのパスを通す。美しすぎる。

こういうのを当たり前にこなす俺たちの新潟が誇らしい試合内容ではあったのだが本当に結果だけが付いてこない。ゴールシーンだってどうやっても止めることができないゴラッソなフリーキックと不運な吸い込まれである。ツイてない。

試合もシーズンも、とにかくひとつでいいから流れを掴んでほしい。

試合雑感

なんか普通に強いスタメンじゃないかな?とか思ってしまうのだがアディショナル離脱者が出てしまって相変わらず厳しすぎる台所事情。

リータやゴメスは本当にベンチに入れて良い状態だろうかという疑問はあるのだが座らせるしかないのだろう。

新潟の離脱者、巧みたいな筋肉系ならフィジカルトレーニングどうなってるんですか?と言えるのだが試合中のアクシデントによるものが多いのは本当に不運でしかない。シーズン前半戦をなんとか乗り切りたいのだがカップ戦を勝ち上がることで連戦が続くというジレンマに挟まれている俺たちの新潟。

さて、ホーム福岡戦といえば伊藤涼太郎伝説となるのだが今回は伝説とかいらないので普通に勝ってほしい。本当に勝つだけでいい。

福岡の守備は屈強な442プレスかブロックだとは思うのだがブロックなら奥村がライン間受けターンでメタメタにしてくれるはず、なんてことを考えながら前半が終了したのだが感想としてはお互いのストロングがぶつかり合う素晴らしい試合である。ゴールシーンはマジなゴラッソなのだが自信満々で開けた壁の真ん中を巻いて蹴り込まれたら小島神でも無理。スーペルゴラッソ。

注目していた福岡の守備、523で構えてで秋山と奥村に中央でボールを渡さずにセンターバックにプレッシャーを与えるという練度の高い523である。ポゼッション対策の守備は普通はこうなるはずなのだが前節の湘南は532プレスという一風変わった守備だった。あれには勝ちたかった。

湘南の話はどうでもいいとして、福岡の523に対して新潟は中央を匂わせつつ藤原と史哉が前の3の裏にポジションを取る。その場所目掛けて最後方の真ん中からボールを供給供給するというのが基本になる。

これが通ると523の一列目の3を容易に突破できるし真ん中の2はサイドに広げられないので新潟は中央付近から前進することもできる。このやりとりが基本となるのだが、落ちる長倉や高い位置の奥村にボールが入りそうになると福岡のセンターバックが飛び出してガツガツと潰しにくる。良く予習している福岡である。良いメタゲーム。

この試合のもうひとつの特徴として谷口のウィングというものがあった。この日の谷口は大外一点張りで推進力を出すウィングの仕事をひたすらやっていた。ボールを受けるのに結構深くまで落ちてきていたのだが、落ちすぎかな?という印象を持つほどだったので谷口から何か起きそうな予感がしていた。結局何も起きなかったんだけど。

他にも千葉から長倉への縦パスゴールデンコンビが素晴らしいし長倉の変態トラップも絶品である。失点したということ以外は本当に素晴らしい新潟のサッカーをやっている。スタジアムの雰囲気で逆転できると思った前半終了時だった… のだが、後半の流れとしては攻守のやり取りは前半と変わらず時間の経過と共に熱量が下がっていく試合になってしまった。

輝いた部分をピックアップするならば、最後の史哉のゴールはスラした長倉のサッカーセンスが色々おかしすぎるということになる。松田もコンビネーションで守備を外して長倉目掛けてピンポイントできちんと上げた。やればできる松田。

松田はファーに速いクロスを蹴り込んで史哉に合わせるが前節湘南戦における約束事のはずだったと思うのだがキックの体勢が整わなかったのか緩いキックになり、長くだが普通に決めることもできたようにも見えたが結果としてボールにバフを掛ける長倉のスラし。決まったのが松田インの直後とかだったら試合全体にバフを掛けることもできていたプレイだった。試合展開のせいで盛り上がらないがこれは結構スーパーなプレイである。

とにもかくにも湘南戦に続き勝てた相手だったという印象。試合もシーズンもなかなか流れを掴めない。

乗り切って欲しい。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。