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新潟式5バック攻略:2022 J2 第7節 ジェフユナイテッド千葉×アルビレックス新潟

衝撃の敗戦で全新潟サポーターの時間が止まったミッドウィーク。辛い!

とりあえずそれは忘れて、この試合で新潟の思惑通りに進んだプレイについて解説する。前半5-4-1で引いて守る相手に対して繰り出した見事な5-4ブロック崩し。

寄せて広げて中央に縦を通す

前半の千葉に対して新潟が繰り返しやっていた仕組みはこれ。具体的な時間帯として前半40:30のシーンをピックアップ。

最初のフェーズとして、センターバックとボランチの高(ヤン)や島田がパス交換しながら5-4ブロックの4の部分を中央に寄せる。

この時、5-4-1の1については脇でボールを出し入れすれば実質フリーでプレイできるので完全に空気で扱う。気持ち良くボールを回されてどうにもならないけど追いかけるしか選択肢が与えられない櫻川ソロモンが不憫。

同時並行で新潟のサイドバックはタッチラインを踏むくらいの勢いでワイドに高く張り出し、サイドハーフの至恩と松田は内側のレーンに入って5-4ブロックの中間にポジションを取る。

こうすることで5-4ブロックの5と4の2つのラインは新潟の大外を気にせざるを得ないし、強力なアタッカーが陣取っている内側も気にしなければならない。いわゆる「ピン留め」の状況が発生する(ピン留め=守備が迂闊に動けない状況)。

さらに追加の工夫として、至恩と松田は5-4ブロックの後側、守備の死角にポジションを取る。こうすると守備は前方にあるボールから目を離すことができないばかりか至恩と松田を目視不可となる。

目視できない至恩や松田に後ろから走り込まれると守備からしたら突然選手が目の前に現れたというビックリな状況になり、結果としてフリーでボールを受けることが可能な至恩松田。

このパターンに嵌めてしまえば、5-4ブロックが至恩や松田を気にして動かなければ大外にボールを供給して深くまで突撃できるし、守備が至恩や松田の動きに付いていけば5-4ブロックの網目を広げることができる。至恩や松田に守備が集中すれば悠々と大外にボール供給もできる。

この前半40:30プレイ、最終的にはボランチの島田からトップ下の高木へ鋭い縦パスがフリーの状況で通って高木ターンからのチャンスメイクとなる。

こういったことを繰り返していた前半で、前半は本当にうまくいっていた俺たちの新潟。本当に全てがうまく行っていた。うまく行っていた!

対策として施された433ブロックへの移行

千葉もただやられっぱなしで眺めているわけではなく、ユン監督はハーフタイムで433ミドルブロックへの移行という対策を施してくる。これがバッチリはまって後半は千葉がペースを握ることになる。

屈強な守備である541からアグレッシブな433に切り替えた意図として、5-4ブロックだと4の壁を1枚抜かれたらゴール前となってしまう。それを防ぐために中央突破で来るのならば433という3ラインで壁の枚数を増やそうということになる。

縦パス1本でゴール前まで運ばれないように433ブロックで壁の枚数を増やす千葉の後半守備。中央に拘る新潟との相性が抜群で中央でボールを奪ってカウンターに繋げる。

結果としてコレがメチャクチャはまって新潟はピッチ中央でボールを失ってカウンターを受けるという無限ループ。カウンターでメチャクチャ躍動する末吉塁。

とはいえ、後半58:00には拘り続けた中央攻めで鮮やかに433の壁をくぐり抜けながら前進して最後は中央ど真ん中でワンツー魔神の松田が至恩にボールを預けてワンツーでフィニッシュ!とか、イッペイがフィードに合わせて裏抜けフィニッシュ!みたいなシーンもそれなりにあったけど千葉の屈強な最終ラインにフィジカルで弾かれる。マジ鈴木大輔神。

そんなこんなでこんな結末。辛い!

おまけ:至恩のゼロトップ

この試合終盤には谷口を下げて至恩が中央に入るゼロトップの形となる。ゼロトップとなったのだが効果が出ていたとは言い難い。

そもそもゼロトップは圧倒的なアタッカーをトップ下の位置に置いて最終ラインを歪ませて、サイドや中央に生まれるスペースで質的・数的優位を発生させるシステム。

至恩のゼロトップをやるならこんな感じでウィングアタッカーを活かさないとゼロトップの威力は発揮されない。

いかにしてウィングに躍動してもらうか、いかにして圧倒的ドリブラー or アタッカーの位置的優位で相手センターバックとサイドバックの動きを操るかというのがゼロトップとなる。

超絶ドリブラーでセンターバック2枚を動けなくして前方2人でサイドバックをピン留めする。その形が作れれば両ウィングがフリーになって突撃できるし、仮にセンターバックの1枚が至恩にアタックしてくれれば前2人に大きなスペースが与えられて大チャンス。サイドバックがウィングのケアで広がればやっぱり前2人にスペースが生まれて大チャンス。ロマン溢れるゼロトップ。

みたいな視点で見るとウィング松田を下げて中央配置の伊藤を入れた合理性がない。そもそもゼロトップとかやるつもりなくて中央突破という作戦だった可能性が高いんだけど、そうすると今度は谷口を下げる合理性がない。

疲れている順番に変えたら至恩ゼロトップの形になってしまって試合を通じてチャレンジしていた中央突破から切り替えられなかったというだけの話だと考えるのだが後の祭り。

ゼロトップせざるを得ない新潟の台所事情ですが、鈴木孝司の復帰とゲデスの参戦に期待するでゲス。メチャクチャ悲壮感漂うYoutubeのサムネイル!


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。