ネクスト・ブレイクはシマブクカズヨシ:2022 J2 第34節 アルビレックス新潟×大分トリニータ
3バック戦術における新潟対策のド定番となってしまった523ペンタゴンブロック。大分のペンタゴンはマジで硬かった。メンバーが落ちているにもかかわらずこれは強い大分。前回対戦時のハイラインは一体なんだったんだ。
硬いくせにアタッカーも備えているという大分にウノゼロで負けたという試合だが、この試合で先発した若手アタッカーのシマブクカズヨシのプレー解説をしてみよう。
大外で受けてドリブルとパスの二択を突きつける
シマブクの特徴は現時点でそこまで強烈に打ち出されていないが、ドリブルのリズムが独特であるということは初見で認識できる。このドリブルで相手を抜き去るというのが現時点のストロングになってくる。
まずはボールタッチの分布を確認してみよう。スタートポジションは右のサイドハーフ。適正ポジションは左サイドと聞いていたが右サイドでの起用が続いている。
得意な形としては大外でボールを持ってタイマン勝負に持ち込むというもの。シンプルにドリブルとパスの二択を守備に突きつける。
分布の絵には出てこないが、積極的にボックスの中に走る動きを幾度となく見せている。
前半1:55のシーン。カウンター当たり気味の流れで伊藤からのスルーパスを受けようと裏抜けを狙うが走り抜けきれず。結果、タイミング早めにダイレクトで入れたグラウンダークロスは力無く相手守備に悠々とインターセプトされてしまう。もっとスピードに乗ってボールにタッチできれば決定機だったのでゴリゴリとゴールに近づいてからの選択肢が欲しかった。
前半4:10のシーン。シマブクから高木にボールを預けることによりボールが左サイドに展開され、重心が左サイドに寄ることで生まれたゴール前のファーサイド。ここにスルッと走り込んでクロスを要求するシマブク。これは良いオフ・ザ・ボールだった。
前半4:50のシーン。最後方に落ちていた島田からのピンポイントフィードに対してオフサイドギリギリのタイミングで抜け出すシマブク。だったのだが伸ばした足が若干届かずボールはピッチの外へ。こういう一発抜け出しもシマブクはできるので同じストロングを持つヤムケンも頑張ってほしい。
前半6:20のシーン。デンの地味に芸術的なミドルフィードをピッチ中央で島田が受ける。島田は大外に張っていたシマブクにボールを預けてパス&ゴーを発動させるもシマブク逆サイドの伊藤へのサイドチェンジをチョイス。
このシーン、島田のパスで最終ラインにギャップを生むことができていたし、島田もギャップに飛び込む全力ランをしていたので結果としてはシマブクの判断ミスとなる。逆サイドの伊藤もフリーだったので選択としては悪くなかったが、その選択を活かす技術が足りなかったというシーンとなる。こういうのをひとつひとつ対応できるようになってほしい。
推進力の高いドリブル
続いてはドリブル。モリモリ推進なドリブルが基本になる。
前半9:30のシーン。センターサークル付近でボールを受けてモリモリとドリブルをスタートさせる。途中目の前で守備2人に壁を作られるが巧なボールコントロールでペナルティエリア前まで運ぶ。
これは単騎でボールをモリモリ前に運んだ良いプレイ。これからもこういうシーンをたくさん見たいし、これが当たり前になれば「どうせパスで前進してくるんでしょ?」という相手を惑わせるアクセントになる。
前半25:20のシーン。高(ヤン)が引っ掛けて生まれたセカンドボールを最速回収してポジティブ・トランジションなモリモリドリブル行くぞオラー!とアクセラレーションなドリブルをスタートさせるが三竿がイエロー覚悟のプロフェッショナルに止められてしまう。
結果として三竿にイエローは出なかったが、イエロー貰ってくれてもOKだし、そのままドリブル突破してもOKというシマブクのストロングを印象付けるドリブルだった。
こういうプレイを見るとシマブクは将来ポジトラ王になっているのかもしれないし、アルベルト版ロメロフランクになっているのかもしれない。
前半40:00からのシーン。やっぱり大外で受けてから増山にタイマン勝負を仕掛けて縦突破を見せてからの切り込みからの左足クロス。いいところに飛んでいったけど緩いボールになってしまい難なくクリアされてしまう。ギュイィィーン!と飛んでいくボールが蹴れるようになる日を待っています。
前半54:25のシーン。大外でボールを持って内側に膨らみながらドリブル突破で守備を抜き去ろうとするがファウルで止められてしまう。
ファウルで止めるしかない推進力の高いドリブルは十分なストロングなのでこれからも洗練させてほしい。増山や三竿とタイマン連戦してあんまり負けていなかったのは偉い。
パス&シュート
続いてはパスとシュートを確認していく。
前半21:50のシーン。ゴール前ド真ん前でボールを受けて目の前には守備1人とキーパーだけというシュチュエーションで左足を振り抜くがシュートは僅かに枠の外。
ミートもしていたし落ちるボールも蹴れていたので決まっていたらビューティフルゴール認定だった。この形でバシッ!と決まる日が来ることに期待。
前半34:10のシーン。大外高い位置でボールを受けてから守備に対してドリブルとパスの二択を突きつける。選択したのは高木への平行パスからのワンツー抜け出し。
最終的にはふんわりクロスが無人のスペースに飛んでしまうが増山とのタイマンで二択を突きつけて勝利して最終的に攻撃の形で終わらせるという一連の流れは素晴らしいものだった。
前半35:40のシーン。大分のあり得ないパスミスをゴール前中央でハントするシマブク。これは超決定機!と全新潟が立ち上がったが突撃肉弾守備に阻まれてシュートは空振りに。飛んできたボールをコントロールしきれずにクソデカトラップになってしまったのが悔やまれる。惜しい!
課題の多い守備
これはもう若手アタッカーあるあるになってしまうが、守備については特筆すべきところが現状ない。小見も同じ課題を抱えている。
プレスを掛けるタイミングがレギュラー陣に比べると明らかに遅いし、ボールが出てから追いかけるので結果として前からプレスではなく後ろから追いかけるような形で守備をすることになる。
ネガティブ・トランジション発生時のプレスバックなら効果はあるだろうが、ブロックを敷いた状態からこの走り方をしても意味はない。結果としてタイマン相手の増山に悠々とかわされるシーンは目立っていた。前半23:35で増山へのスルーパスに対して体をねじ込んでブロックしたシーンは良かった。
これらの守備課題、ヨーイドン!のタイミングがレギュラー陣に比べて明らかに遅いので、このあたりが改善されることで良い守備ができるようになると思う。
現状、ワンタッチでボールを回されると何もできないのは小見も一緒なので2人で頑張ってほしい。前プレスに行ったら行ったでボールホルダーに誘われる形になって効果的な守備行動を取れずに悠々とハーフスペースに縦パスを通されたりもしてしまう。失点直前に通された縦パスは典型的な守備のミスとなる。
現状、伸び代だらけのシマブク。これから先もワクワクするプレーをし続けてほしい。
オープンチャットでのリアルタイム解説
試合開始前
ヤン島田のコンビで先発は久しぶりでしょうか。
大分が相変わらずハイラインをやってくるかどうかというのは最初のチェックポイントになります。
前回対戦時は大分からしたら頭抱えるような失点でしたので今回は同じ失敗を繰り返さないように慎重な入りとなるのかもしれません。
大分はアタッカー陣が控えにも豊富に揃っていますが個人的には左サイドの増山はいつになったらブレイクするのだろうかと見ています。別に今日爆発しなくても良いのですが高校選手権でのインパクトは大きかったですね。
新潟も大分と同じく控えにアタッカーを揃えておりますので、拮抗した試合展開になった時の交代タイミングと内容がポイントになるかもしれません。
後ろには岡山が不気味な足音を鳴らしていますが、まずは目の前の勝ち点3を取ってもらわなくてはいけません。
前回大分戦の時に書いたハイライン戦術の解説になります。
前半終了時
これは大分の守備が硬すぎて新潟が攻められません。今シーズン過去一硬いのではないでしょうか。3バックのチームの守備戦術は523というのが完全にトレンドになっていますね。
大分は基本523のペンタゴンですがヤンと島田の立ち位置でトップのサムエルがペンタゴンの真ん中まで落ちたりします。
結果、ヤンと島田に一切ボールが通りませんし外を経由した瞬間に激ハントが飛んできて結果奪われます。増山のフィジカル強すぎです。
新潟は状況を打開するために島田をサリーダで最終ラインに落としてボールを動かそうとしますが効果はそこまでありません。
30分以降は大分も集中が切れてきたのか新潟が馴染んできたのか、その両方かはわかりませんが新潟が良い形を作り始めます。ハーフスペース狭いスペースにズバズバとパスが通るようになりました。
シマブクが良い形を作るけど決められないというダメな時の小見みたいなのですが、一発決めてくれればオールOKなのでなんとかワンプレイに期待です。
大分がこの守備の強度を最後まで保てるかどうかが後半の見どころになります。新潟は30分以降のペースで殴り続ければ決定機は訪れるはずです。
大分の先制点はクロスのお手本でしたね。新潟の守備というよりもあの形になった時点でミス以外に防ぎようがありません。完全に詰みです。
これは戦術的にも感情的にも良い試合ですね。どんな結末となるでしょうか。
試合終了後
大分強かったですね。新潟のパスが微妙に噛み合わなかったことを差し引いても強かったです。新潟対策ここに極まるという感じです。
新潟は後半から島田にフリーマンのように動いてもらってボールを上手く動かしました。秋山インの時に島田を残したのはこの部分が大きかったのではないかと思います。
新潟は3枚交代でブースト掛けて機能もしましたが大分の交代もエグいものでした。大分はこれでもメンバーが落ちているのですから普通に強いですね。前回対戦時のハイラインは一体なんだったんでしょうか。
秋山はどんどんスペシャルなプレイヤーになっていきますね。あのプレイができるのは秋山だけでしょう。守備もポジショニングも合格点ですしあと何年かは新潟でプレイしてほしいですね。
ライバルチームの今節の結果、どうなるでしょうか。
(シマブクの守備と全体的にズレることの多かったパスについて)シマブクみたいなの守備は若手アタッカーあるあるですね。小見も同じ状況なので時間を掛けて良くなるはずなので私は気長に待っています。至恩もアルベルトで一気に改善されたところがありますので。ヤムケンは割と最初からある程度できていました。
上のレベルに上がれるかどうかはこの守備が重要だったりするので伸び代と捉えておきましょう。
パスがズレるのはなんだったのか正直わかりません。解説の永井雄一郎さんは4バックのと5バックやブロックの違いで、距離で言ったら2m狭くなっているというような要素が心理的にも響いているのでは?と解説していましたが、この辺りはプロレベルのプレイヤーじゃないと理解できない世界なのかもしれません。
本当に1mとかボール1個とかの距離でパス失敗というシーンは多かったですね。
前の試合、パスがズレる話を具体的に説明してくれている方がいました。納得感のある説明ですね。
やっぱりプロってすごいんだなと思いました。