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数的優位:2023 J1 第2節 サンフレッチェ広島×アルビレックス新潟

前半は圧倒的に支配したが後半にシュートを浴びまくってアディショナルタイムに謎のアディショナルタイムが追加されるという試合展開に生きた心地がしなかったが、なんとか凌ぎ切った俺たちの新潟。こういう試合をものにできるのは大きい。

とにかく前半と後半で全く違う展開になってしまった訳だが、その辺りをちょっと記録しておこうと思う。

広島のムチャクチャなプレスを攻略した前半

前半の展開はこれに尽きる。広島のこのプレスは昨シーズンJ1で猛威を振るって逃げ切ることができたチームが存在しなかったとかなんとか聞こえてきたけど圧倒的な新潟スタイルでボールを繋ぎまくって2点も決めた。強すぎるだろ俺たちの新潟という興奮を全新潟が堪能した前半。

広島の基本フォーメーションは3421だが、新潟が自陣でボールを握ると前線のベンカリファ、川村、満田が一気に襲いかかってきて苦し紛れのパスを中盤が回収という仕組みである。とにかくボールホルダーにアタックアタック!パスコース限定させてハントハント!なスタイルである。

ボールへのアタックと連動したパスコースへのプレスが効果的な広島の守備。いわゆるチャレンジ&カバーの徹底。

が、前半13分に新潟がサクッと先制ゴールを決める。決めたのは新潟初披露の太田修介。山梨県出身で町田からやってきた背番号11の高速サイドアタッカーである。吉岡里帆がと海苔の佃煮が好きな26歳が自分が何者なのかを示した。おめでとう!

この動画には映っていないが、この前の広島の守備がかなりマズい状況だったので記録しておきたい。新潟ビルドアップに対してその守備はあり得ないですよというレベルのことが起きていた。リセット後に生まれる心のエアポケットをうまく利用した新潟。中央前向きでボールを持たせちゃダメ!ゼッタイ!

それが良く現れていたのが野津田のとりあえず撃っとけミドルを小島が余裕でキャッチした後のシーン。時間で言ったら前半12:15くらいから。その直前のシーンでも前線2人の中央を割る形でヤンにボールが入っている。

キーパー小島がキャッチした後、中央の秋山にボールが入るばかりではなく余裕で前を向かせてしまう。秋山なら僅かな隙間に縦パスを打ち込むことができるので鈴木孝司の偽9番が活きて堂々たる中央突破が成立する。

新潟式ビルドアップのファーストチョイスは中央攻めで、中央から攻めたいけど守備が簡単に中央を突破させてくれないからハーフスペースや大外を使いますというものである。中央を突破させてくれるんならハイ!喜んで!と居酒屋チェーンの店員のように活発に動くのが新潟である。

このことが太田のゴール直前に起きていたし、太田のゴールも堂々と真ん中にボールを転がした結果となっている。千葉の縦パスがエグいし、この一本で決まった感がある。伊藤涼太郎のパスもエロい。守備の足がギリギリ届かない絶妙なスルーパス。

こんな感じで新潟に悠々と中央でボールを持たせて前まで向かせてくれる優しい広島の前半守備だった。

前半24:05からのシーンも前線守備2人が秋山に対して寄せないので簡単にボールを持って前を向いて伊藤にボール預けてターンからのファルソ・ヌエベ鈴木孝司である。鈴木孝司からのパスが弱くてインターセプトされてしまったが太田に通して決定機を演出するには十分すぎる状況を作り出していた。

とはいえ、広島の守備がマズいというよりは新潟のビルドアップ&攻撃のクオリティが高すぎたと表現したほうが良い。

常に3対1や3対2、4対2の状況を作り出すことに長けている俺たちの新潟だし、秋山なんかは守備と守備の中間ポジションかつ守備の視野に入ることのない背後ポジションを取るのが本当に上手い。

このポジションの取り方、秋山はヤンより洗練されているような気がするし、この動きを流れの中でスムーズに行えるのが秋山のストロングでもある。昨シーズン途中から才能の蕾が一気に開花した俺たちの秋山。最高。

あまりにも理想的な試合運びだったので2点目も貼っておく。

これぞ小島のキック、これぞファルソ・ヌエベ鈴木孝司というゴールである。偽9番のお手本かよ。落ちる9番、9番を追い越すトップ下、フィニッシュは9番という出来過ぎな2点目。伊藤涼太郎のキックがいつでもエロい。

そんな楽しい前半だったが後半に入って事態が一変する。

守備方法変更で一気に流れを掴んだ広島

問題の後半である。広島は中盤3人を交代して戦術変更。

新潟ビルドアップが数的優位を構築してボールを回すのならば数的優位を作らせなければ良いということでボールホルダーとパスコースの全てに人を当ててくる。

結果的に数的同数でビルドアップせざるを得なくなってパスの出しどころが無くなってしまう俺たちの新潟。状況によってはビルドアップの途中で千葉がゴールラインを踏んでまで数的優位を作り出そうとしていた。

数的同数を当てることでパスコースを塞ぐ広島の後半守備。三戸が自陣深くまで落ちてきて千葉はゴールラインを踏むほどのポジショニングをせざるを得ない。高(ヤン)へのボールはハントされるリスクがあるしハントされたら決定機提供となる。

ヤンや秋山、途中から入ってきた島田なんかを3人で囲んで2対3や1対3の状況を無理矢理作り出すなどやりすぎ感アリアリな後半のスキッベ監督だが、スコスコと中央の秋山にボールを入れられてた前半途中で修正せずにハーフタイムで修正しているところを見るとリアルタイムでプランを修正するっていうのは相当に難易度高いんだろうなと思わざるを得ない。本当に凄いプロの世界。後から考えれば前半は本当になんだったんだと思わずにいられない。

やりすぎなヤン包囲網。このシフトを敷かれると流石に苦しい。

という感じで、そんな形に嵌め込まれた新潟と一定水準を十分すぎるほどクリアしている広島のビルドアップの前に新潟はボールを握れなくなってしまい後半の45分間はタコ殴りのサンドバックとなる。途中で塩谷のゴラッソ炸裂とかあって生きた心地がしない。塩谷のやつは良いゴラッソだった。

お願いだからもうやめて!アディショナルタイム5分だったのになんで7分に増えてるの!新潟のライフはもうゼロよ!と鳴り止まない悲鳴と止まらない冷や汗を画面越しに感じながらなんとか試合終了。とりあえずネスカウは頑張れ。次の出場ではボールキープと前線での被ファウルでフリーキックゲットみたいなプレイに期待している。

広島戦を観た他クラブのスカウティングとしては「やりすぎ数的同数でビルドアップを封じてしまえばいい」「新潟からボールを取り上げてしまえばいい」ということを考えるかもしれないが、それは広島のスカッドとスタイルあってこそ実現できる対策だったりする。他のクラブがどのような形で新潟のビルドアップ対策をしてくるのかはサッカーファンとして楽しみな部分。

当然新潟に勝って欲しいんだけど対策されるくらいにはJ1でも強い新潟ではないでしょうか。この先どんな対策が飛び出してくるのか今からワクワクしている。

今年も毎試合楽しめそうな俺たちの新潟です。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。