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スタイル×スタイル:2024 J1 第17節 町田ゼルビア×アルビレックス新潟

Jリーグファンの多くが注目したスタイルとスタイル、信念と信念の真っ向勝負は俺たちの新潟が内容を伴った勝利という結果に終わった。足元チャカチャカサッカーァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!

いろいろとヒールな扱いを受けている町田だがやっているサッカーは普通に勝つためにやるべきことを徹底しているサッカーだし、現有戦力で実行できる一番合理的なサッカーをやっていた。黒田監督の振る舞いが結果的に町田をヒールにしてしまっているだけみたいな。とにかく勝利への意識がJリーグで最も高いチームであることは間違いない。

そんなアウェー町田戦の記憶を記録しておこうと思う。

事前情報だと町田は前線からのプレスでビルドアップを潰してカウンターがメインみたいな話を聞いていたのだが、前線からのプレスというのはそこまで印象に残らなかった。というのもそれ以上に新潟のビルドアップが洗練されていたので脅威に感じなかったというだけだし、町田もそこを理解してミドルブロックにしていたような気もする。前線からのプレスだけならポポヴィッチ時代のほうがインパクト強かった。

この試合だけなのかもしれないが、町田の守備はボール奪取位置の高さに拘らず中央で奪うということが非常に効果的だったし、面白いように中央で刈り取られてカウンターを当てられる新潟という構図の前半でもあった。経験不足の奥村がことごとくペナルティエリア手前で網に引っ掛かるし藤尾のカウンターは本当に綺麗だった。審判がオブストラクションだけどな!

そんな町田のスーパーポジトラアタックを上回る新潟の攻撃力でねじ伏せたし、なんなら町田がやりたいであろうカウンターを何度も決めていたのは新潟のほうである。藤尾のやつは事故みたいなもんだ。審判がオブストラクションだし。

ちなみに新潟カウンターについてはこの試合で刺さりまくったというだけで町田対策として用意していたものではないと思っているし、新潟はスタイルとしてビルドアップで守備を引き込んで偽9番で最終ラインを釣ることで生まれるギャップに2列目が飛び出すというのを常套手段としている。それがこの試合でブッ刺さったというだけだしシーズン最初からブッ刺さりまくっておいてほしかった。

町田のJ2時代、黒田体制1年目から聞いていた噂のロングスローだがロングスロー自体は特に脅威はなくて、町田視点だと決まったらラッキーで新潟視点だと事故発生みたいな扱いになるプレイだと思う。ロングスローの厄介なところは守備側がボールを回収しても即時カウンターを当てられないところなんじゃないかなとか思った。

町田はロングスローの際にほぼ全員をペナルティエリア内に入れてくるので守備側も同じ人数をペナルティエリア内に配置するしかなくなってしまう。結果として町田がセカンドボールを回収すればチャンス継続だし守備側が拾ってもカウンターを当てる先がない。そして町田は全員が全力でセット守備に戻ることが徹底的に教育されているのでロングスローからひっくり返されることはまずありえないというのが町田のロングスローの仕組みなんじゃないかなとか思った。

いつでもどんな状況でも全力で守備に戻ることができるという町田のストロングというバフがあってこそのロングスロー戦術なんだなということは新発見だった。広島のロングスロー対策が完璧だったと噂になっていたがどんな対策だったのか非常に気になる。

なお、試合を通して町田強いな!と思ったのはプレスやロングスローではなくセットプレイだった。町田は昔からコーナーキックのデザインセンスがズバ抜けていたわけだが、これはもう町田の文化になってさえいるんじゃないかと思う。町田サポーターはここを誇りにして良いと思う。そして町田というクラブも意図的に有能なプレイスキッカーを獲得してるような気がする。この試合のキッカーは鈴木準弥だったのだがキックの質がとにかく高かったので、町田に移籍加入する選手が蹴れる選手なのかどうかというのには注目したいし、今後どんなデザインセットプレイをしてくるのかにも注目である。

最後に俺たちの新潟のゴールシーンを振り返っておきたい。どのゴールも気持ちよかったし最高だった。

まずは小見の先制点。

ギラギラしていた。ギラギラしているときの小見は本当に凄いのでネットで何を言われても気にせずギラギラしまくってほしいしファーストチョイスは自分が撃って自分が決めるというマインドでプレイしてほしい。その状態でフリーロールをやれば絶対に輝くはずだからギラギラしながらゴリゴリドリブルしてドカーンと蹴ってズバーっとゴールネットを揺らしまくってほしい。

2点目は藤原ロールによる藤原ゴール。

サイドバックがフィニッシュワークでペナルティエリア中央に走り込んでゴールを決めるというダイナミックなプレイどうしてそこに藤原奏哉というには十分すぎるほどの藤原っぷりである。神戸戦でも似た形でのゴールを決めているので完全に自分のスタイルとして確立している藤原である。DAZNの画面の外から超スピードでダイアゴナルに飛び込んでくる藤原の姿は何度でも目撃したい。

最後は秋山の絶品キック。

新潟のセットプレイには至高の秋山がいる。右足で蹴り出されたボールは美しい虹を掛けて町田のオウンゴールを誘発する。エクセレントすぎる。これから何度でも鮮やかなキックで魅せてほしい。

今までが苦しすぎたというのもあり、結果も内容も本当に最高の試合だった。

試合雑感

両陣サポーター以外も注目するであろうスタイル×スタイルの一戦。サポーターとしてはCL決勝よりも楽しみな一戦である。

お互い万全の体制で戦いたかったものの新潟は怪我人が多すぎて稼働できないメンバーが多すぎる。メンバーが足りません。とにもかくにも今の新潟が欲しいのは勝ち点3以外のなにものでもない。メンバーが足りなくてもスタイルは一切ブレることなく質も高くやれているのでこのままやるだけだ。結果が出ないのは巡り合わせが悪いだけ。魅力的で美しく、観るものの感情を揺さぶる素晴らしい新潟のサッカーをやるだけだ。

などと観る側も試合開始前から気持ちが入っていたがこの試合は本当に良い新潟だった。ギラギラしている。

試合内容としては、町田はアタッキングサードにボールと人を呼び寄せてから中央で奪ってカウンターというのを狙っている。奥村なんかが一番危ないというか網に掛かってしまうのだがアタッキングサードホイホイに掛からないようにしてもらいたい。気持ち良く攻めさておいてからホイホイというサッカーである。ちなみに小見はホイホイよりギラギラしていた。

そして終わってみれば素晴らしい内容と素晴らしい結果となった。観たいものが全部観れた試合だった。

新潟も町田もお互い自分たちがシーズンを通してやってきたことをこの試合でもそのままやっていただけだったが前後半のコントラストは面白かった。

新潟はゴールを決めても浮かれずに表情を変えずに淡々と試合をコントロールしていた。小見アンパンマンとかあったが一瞬の出来事でしかなく、涼太郎がJ1昇格を決めた試合や伝説を作った試合と同じ表情をしていた。今日のこいつらは面構えが違っていた。

相変わらず長倉は異次元だし小見のギラギラ感マシマシがこの試合に与えた影響は相当なものだろう。小島デンマイケルからの絶妙ポジショニング史哉へ繰り出されるロブも気持ちよく決まっていた。後半は完全に試合を制圧していた俺たちの新潟。

一方の町田は噂で聞く以上に勝つために必要なことをひたすらやるだけというサッカーだった。ロマンも何もないのだが歴史を積み重ねていく中で勝つことがアイデンティティになっていくのだろう。サイバーエージェントが企業としてこの先どうなるかは知らないがレアルみたいなクラブになったら面白いかもしれない。EUROの放送もありがとう!

町田のサッカーは本当に単純で、自陣で奪って全員が全力でカウンターを決める、最速でリスタートしてカウンターを当てる、カウンター喰らったら全員が全力で戻るというだけのもの。町田の敗戦がほぼ決まった残り1分でも全力で全員が戻るシーンは黒田イズムを象徴していた。

こういう基本的なことを徹底したうえでセットプレイを徹底的にデザインして質の高いキックを蹴る、この日は鈴木準弥のキックが驚異的だったが途中で下がってくれて本当に助かった。

あとは噂のロングスロー。決まれば儲けもんくらいかな?という印象だったのだがロングスローを凌いでもボールを前に運べないというのが厄介極まりない。町田はボックス内にめちゃくちゃな人数を突っ込んでくるので新潟も同じ人数をボックス内に入れなくてはいけないし、結果としてボールを拾ってもカウンターに繋げられないという状況にしかならない。

こんな感じで、結果も内容も新潟関係者だけではなくJリーグファンにとっても印象的な試合だったのではないだろうか。

素晴らしい試合だった。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。