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フィジカルを超えたフィジカル:2021 J2 第9節 栃木SC×アルビレックス新潟

この試合、新潟のスーパーゴールが飛び出してビックリだったので何度でも確認してみよう。

これはもう4月の時点で年間最優秀ゴール決定じゃないだろうかというヤムケンのスーパーゴール。

ロメロ欠場をきっかけに前節から出場して存在感出しすぎているんだけど、ロメロと同じポジションで出場してもロメロとは違う役割でチームの勝利に貢献するという、なんという新潟の選手層。

さて、今回確認したいのはヤムケンバイシクルではなく千葉の試合終了間際の衝撃同点ヘッドである。このヘッド一発の何が凄かったのかについてちょっと書いてみる。

フィジカルに絶対の自信を持つ栃木のセットプレー守備

対戦相手の栃木のスタイルは攻守ともにフィジカルである。肉体こそ全て!漢(おとこ)なら肉体で語れ!ファウルは取られない前提でプレーしろ!という感じでクラブハウスにはウェイトトレーニング設備とプロテインがメチャクチャ充実してそうなスタイルで空中戦を得意とすることから、地上戦を得意とする新潟とはとにかく相性が悪い。

ボールを蹴り上げられたら空中で弾き返されて以上!ボールを手放すタイミングが遅れたらハードタックルされて以上!(この日の主審はファウルを流しがちで更に辛い)な感じで、日向小次郎ばりの強引なドリブルが無いだけ良いのだが、フィジカルの中でも特に空中戦に絶対的な自信を持っているチームである。

空中戦に絶対の自信を持っている栃木だが、どんな時に空中戦が発生するかといえば攻守共にゴール前への蹴飛ばしとか、ゴールキックの競り合いとか、フリーキックやコーナーキックのセットプレイになる訳である。

ちなみに以前、コーナーキックについてちょっと書いたことがある。

で、今回の栃木のコーナーキック守備はゾーン守備だったんだけど、ざっくり雑に説明すると、フィジカルやエアバトルに自信を持っているチームは大体コーナーキックでゾーン守備をしてきたりする。

フィジカルやエアバトルで確実に勝てるという自信があれば、攻撃側の動きに振り回されてスペースを空けてしまうよりは、各人が範囲を決めて飛んできたボールを何も考えずに(というのは言い過ぎだが)弾き返した方がより確実に守れるという理屈になる。

逆にフィジカルで劣勢なのにコーナーキックし守備をやると攻撃側のフィジカルさんに高い位置からズドン!とやられて簡単にゴールを割られることになってしまう。

ここまで説明して気づいた人もいるかもしれないが、ゾーン守備をやるときに一人くらいはフィジカル弱い奴がいるんじゃね?という疑問があったりするが、まさにこれがコーナーキックゾーン守備の弱点だったりする。

ゾーン守備は守備の人が基本動かないという原則があるので、攻撃側はフィジカルが弱い部分をピンポイントで狙い撃ちできるという状況になる。マンツーマン守備であれば守備側が意図的に攻撃側のフィジカルさんを避けるという対応を取ることができるが、ゾーンだとそうはいかないのである。

ということで、コーナーキックゾーン守備の攻略セオリーは、「一番フィジカル弱そうなところに、こっちのフィジカルさんを飛び込ませろ」になるのだが、栃木のメンバーはみんなフィジカル強すぎて困ったことになった新潟。

試合前から予想はしていたけど、コーナーキックをゲットするもののバイン!ボイン!とみんな弾き返されてぐぬぬな展開がされるうちに逆転されたりして、はわわとなっていたら千葉ズドンである。ヒャッホーイ!

千葉はセンターバックというポジションもあり、フィジカルが弱い訳じゃ無いけどリーグで恐れられているかというとそこまででもないプレイヤーである。

そんな千葉が、「ビッグスワンが僕を呼んでいたから!次の試合はアウェイ愛媛でビッグスワンに行けないけど、お土産いっぱい持ってビッグスワンの笑顔が見たいから!」と叫びながら栃木のフィジカルの裏からヘッドで叩きこんだ劇的ゴールである。

ちなみに、すぐ手間にはマイケルがいたり、その直前にアルベルト監督が田上を投入していたりして、栃木のフィジカルにフィジカルで打ち勝つ姿勢を見せていたのも熱いポイント。フィジカルには屈しないという強い気持ちを感じた。いや、まぁ実際には栃木守備3人の頭がギリギリ届かない高さにボールを蹴った星のキック精度が凄かったんだけどね。

フィジカルをストロングとしている相手にフィジカルで勝つ(別に勝ってないんだけど、なんとなくみんな勝った気分になってるので... )というストロングバスターな新潟がどうにも止まらない。

これは凄い新潟。


「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。