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ミラーゲーム:2022 J2 第39節 モンテディオ山形×アルビレックス新潟

試合を通して見れば劣勢だったがストライカーの仕事で勝ち点1をもぎ取った俺たちの新潟。

実況の「小見が幅をとる、堀米は中を選択した、中央突破か?谷口シュートを狙ったぁぁぁぁぁ!」の言葉の並びも新潟最新型スタイルを象徴していて非常に良い。

こういう負けを負けにしない試合ができるのは本当に強者の貫禄だし、優勝するような強いチームはこういう試合が多い。

この試合は新潟は4231で山形は4213という似たような布陣でスタイルもポゼッション中心の両チームという実質ミラーゲームだったので、ミラーゲームというキーワードで試合を紐解いてみる。

フォーメーションなんてただの記号です

この一言に尽きる。

山形4213と新潟4231という似たような基本フォーメーション。

フォーメーションは似ていても選手の戦力や特徴が違えば戦い方も変わるというのがサッカーの面白いところである。

将棋はスタート陣形と駒の種類や数が同じという条件で対戦する戦術ゲームだがサッカーの場合にはスタート陣形も選手も好きに決めて良いということになる。

とりあえず双方の選手の特徴を見てみよう。山形の選手全員を知っている訳ではないので選手名鑑の力を大いに借りる。並べてみたらあんまり大差なかったというのは内緒だ。

同じフォーメーションでも選手の特徴が違う。

とにもかくにも、同じフォーメーション同じスタイルでも配置した選手のストロングを生かして試合を優位に進めなければいけないのがサッカーというゲームである。

「戦力差をもって戦術とする、戦術はロナウド」みたいなチームあったり札束で殴ったけど結果が全く出ないチームもあったりする。強いから大きいから勝てるとは限らないのがサッカーである。サッカーって本当に面白い。

ではこの試合、双方のストロングはなんだったのかというのを確認していこう。前提として新潟も山形も「繋いでビルドアップ、攻撃は攻撃的に、守備は442」を信条とするスタイルである。

ディサロの無限プレスと鈴木と谷口

この試合で見た目が一番派手だったのはディサロの無限プレスだった。ディサロ一人に田上と早川史哉が終始アワアワする展開が続いていた。むしろ最後までアワアワしていたが、最後まで致命的なボールロストせずに試合を終わらせたのは偉い。もしかしたらアワアワしているのは見ているサポーターだけでピッチレベルでは安定していたのかもしれない。見ている方はいつもみたいに繋げないな… という感じでアワアワした。史哉のエアバトラーぶりはこの日も健在だった。身長170cmのエアバトラーは希少価値高い。

山形ディサロは後半73分に交代するまで本当に猟犬として走り回っていたし、そのご褒美として幸運を招き込む形のゴールも決めた。

一方の新潟鈴木孝司はストロングのストライカーぶりを発揮できずに前半で谷口に交代となってしまう。交代で入った谷口は攻守に渡り結果を出し、鈴木孝司とのコントラストが強く出てしまう結果となった。

別にこの試合の鈴木孝司は目立たなかっただけで全然悪くなかったし、結果として松橋監督の交代策が当たっただけではあるので特に気にする必要もない。鈴木孝司は中央前線エアバトルやボールキープで強みが出せるが、この試合ではその機会が少なかったというだけの話である。ワイドな位置に流れたり偽9番として振る舞うことができる谷口の方が山形との相性が良かったというだけの話である。

爆速ターボ加藤とゴリゴリできないイッペイ

この日の加藤大樹、相変わらず速かった。速いだけではなくフィジカルも強いので吹っ飛ばされる守備もいるのではないだろうか。とにかく前を向かせちゃいけないし背後を突かれてはいけない選手である。大外を走り抜けるというよりはハーフスペースのレーンを走り抜けることが多いし効果が良く出ていた。

新潟は加藤に絶対に走らせないという強い気持ちで三戸や藤原が壁になっていたが最終ライン野田の正確なキックで壁を破壊するという山形の戦術。前半17:05のシーン、ペナルティエリア内にダイアゴナル爆速ターボする加藤は激しかった。

一方の新潟イッペイは怪我から復帰して試合感が戻らないという要素があったのかもしれないが持ち味のゴリゴリドリブルを見せることなく前半で交代となってしまう。

イッペイの場合は大外ゴリゴリパワフルにボールを運んだ方がストロングというような気がするが本人の意向なのかチーム戦術なのかはわからないが大外張っとけよりもペナルティエリア手前、ポケット手前で待機することが多かった。結果としてボールを受ける回数を確保できずにマッチアップするはずの半田陸の体力を削ることもできなかった。というよりも半田の見た目地味だけど効いている守備に何もさせてもらえなかったイッペイという形だったのかもしれない。

イッペイが輝けなかったのは左サイドよりも右サイドの方が適正ありという要素も少なからずあったと思う。ゴリゴリドリブラーは純足サイド、カットインドリブラーは逆足サイドで輝くことができる。ボールを利き足の外側に置くか内側に置くかという話で、ゴリゴリドリブルなら対人守備から遠い場所でボールを持てる純足サイドの方が活きる。

ピッチ上の全てを把握する山田とファンタジスタ伊藤

怪我により前半途中で退いてしまった山田。もっと見たかったな、怪我が長引かなければいいなというのはいちサッカーファンとしての願いである。まだまだ22歳、華のあるフットボーラーとしてこれから10年は楽しませてほしい。

山田にボールを持たせたらヤバイということで山田にボールが入ると2人掛かりで潰しに行く俺たちの新潟。高木も他チームの視点から見るとこんな感じなんだろうなと思わせてくれる山田は本当に魅力的なフットボーラーである。

間違いなく新潟のスタイルに嵌るのでマリノス育成枠として来年新潟という可能性はないだろうか。トップ下供給過多ということになってしまうが山田は本当に良い。今シーズンの山形は小西と山田のシナジー爆発とかしたんだろうか。

一方の伊藤はアシスト、スルーパス、ラストパスが全てリーグトップという圧巻のプレイヤーである。ちなみに伊藤に次いでスルーパスリーグ2位なのは山田。

伊藤涼太郎、ゴール前で誰もが予想しないファンタジーなパスを通してゴールにつなげてしまうのは本当に痺れる憧れる。この試合でもゴール前で何が起きているのか理解が追いつかないパスやドリブルで気がつけばペナルティエリア内みたいなシーンが多かった。ゴール前の魔術師。マジシャンズオレンジ。

三戸のトップ下起用

この試合で新潟サポーターをザワつかせたのは秋山と伊藤を下げて星と松田を入れるという交代策だろう。

秋山の位置に星が入るのはセオリーだが、追いかける展開でトップ下の伊藤を下げて松田を入れるという対応は斬新すぎて驚いた。結果としては直前に兆候が見えていた三戸のトップ下起用。

この起用方法についての狙いは明確で、遠くてもゴール前中央からアタック&シュートしてゲットゴールになる。三戸はペナルティエリアの外から左右どちらの足でもパワフルなシュートを打つことができるスペシャリティがある。これはシーズンも最終盤になるが来シーズンに向けての良いオプションになるはず。この試合では三戸トップ下起用が明確な効果を出したかと言われるとちょっとわからないのだが、超攻撃的にはなったし効果はあったと思う。

岡山が金沢に敗戦となったので残り三試合で3位岡山との勝ち点差は9となった。得失点差が新潟の35に対して岡山は16なので、この時点で決定はしていないものの事実上の昇格決定と言っても良い。ここからひっくり返ることは無いと信じたい。

次節はおそらく満員となるであろうビッグスワン。勝って昇格を決めてもらいましょう。

オープンチャットでのリアルタイム解説

試合開始前

前節決定的な仕事をした秋山はどんな輝きを見せてくれるでしょうか。

山形はクラモフスキー監督のサッカーがどのくらい仕上がっているかに注目しますが、それは同時に新潟スタイルの完成度を確認する行為になります。おそらく攻守共にミラーゲームっぽくなるような気はしますが山形はウィング張り出しというスタイルも予想できます。

山形は完全に崖っぷちですのでこの状況が心理的にどう働くのかエモーショナルな試合展開になるのかなど、戦術よりも感情で唸る試合に期待します。

半田陸がローマからオファーという報道もありますので藤原との比較も面白いでしょう。

前半終了時

予想通りのミラーゲームです。予想通りに山形はサイドサーフというよりもウィングですね。

組み立ては両者同じで守備は山形がプレス多めです。ディサロの気持ち入ったプレスとタックルは威力1.5倍増しではないでしょうか。ゴールも感情を爆発させていました。気持ちの良い選手ですね。

新潟がいまいちセカンドボール回収できない一方で山形は押し込んだ状態から回収しまくります。そんな流れからゴールが生まれたので凌ぎきれなかった新潟という結果になります。

アタッキングサードにおいて新潟は中央突破で山形はサイドにウィングを走らせてワンツーなんかを絡めて大外からクロスです。右の國分が非常に良く効いていますし左の加藤は相変わらず爆速ターボです。

山形の山田は新潟伊藤のように圧倒的な存在感でしたが負傷退場となりました。山田は本当に素晴らしいプレイヤーなので軽傷であることを願います。

とにもかくにも今日は田上史哉のコンビがよろしくありません。ディサロとの感情プレスとの相性最悪ですね。

ハーフタイムで田上史哉のビルドアップになにか修正入れてくるでしょうか。

中央突破の解説を書いたnoteです。

試合終了時

あれだけの劣勢を見事な中央突破で引き分けに持ち込みました。上々の勝ち点1です。

田上史哉の問題は最後まで解決できませんでしたが前半で機能していなかったイッペイを下げて小見投入して大外張っとけ作戦で流れを作りましたし効果は大きかったです。

イッペイはどうしてもIHの位置に入ってしまうのですが、それがボールの出口となりません。この辺りはチームの戦術なのかイッペイのパーソナリティなのかはわかりません。

そしてまさかの伊藤を下げて三戸トップ下、星を入れて攻撃力マシマシというのは十分な効果がありましたが松田が酷すぎて勝ち筋を何度も潰すチャンスブレイカーぶりです。これは以前も全く同じパターンでチャンスを潰しまくっていたので今後の松田起用に影響が大きいはずです。

守備では65分以降に一気にスイッチが入りましたね。谷口のプレスと三戸藤原のタックルからの自分で回収というプレーは圧巻でした。

岡山が引き分け以下となれば次節スワンで昇格決定という舞台を整えたと前向きに捉えておきますが、クオリティとしては満足いかない試合でした。

(鈴木に代わって入った谷口について)

谷口は偽9番だけではなくサイドから侵入する動きもできるので守備は的を絞りにくくなりますね。

谷口が空けた場所には三戸がスライドで入りますね。高木の時は高木が入ったりもしていましたが伊藤は後ろでステイの選択肢が多いですしその方が活きますね。

谷口がサイドにスライドして三戸が真ん中からコンパクトな振りのミドルというシーンは見たいですね。

後半は交代で本当に良い変化を出せました。それだけに田上史哉が最後までアジャスト出来なかったことと松田のチャンスブレイカーがネガティブなコントラストとして写ってしまいます。

残り3試合、楽観的ではありますがこのサッカーこの選手この監督スタッフなら昇格できると思います。そのくらい今日の試合は「良くない試合だけど結局負けなかった」みたいな訳の分からない強さがありました。

「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。