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『ロックのウラ教科書』記事の付け足し

2018年4月から連載しているMikikiの「鋼鉄のジャズ女」ですが、今月の記事が公開されました。

昨日もHELLFESTが今年の開催中止というアナウンスがあり、今年もメタル界隈のライブやフェスは厳しい一年になりそう。
ですので、なるべくお家で楽しめることを取り上げたいなと思って思い付いたのが、この本の紹介でした。
3年前に発売され、私も発売後すぐの時期に読んでおり、Facebookページでは一度書いたことがあったと思います。これ、本当に興味深く楽しい内容の本でして、発売時期から時間は経っていますがいつお薦めしてもいいよねと思って、今月取り上げました。

版元のリットーミュージックの紹介サイトに目次があります。

名盤レコーディングのこぼれ話やテクニカルなトピックが満載で、何気なく聴いていた名盤がとても新鮮に聴こえてくること間違い無いです。また、裏方のスタッフが苦労と工夫を想像しながら聴くことができて、レコードにより愛着が持てるかと思います。

マイクの種類も沢山出てきますし、専門用語も出てきますが、ちゃんとわかりやすく書いて下さっているので、ミュージシャンじゃなくても幅広い音楽ファンにお薦めの内容。

Mikikiの連載記事にも書いていますが、記事内に「NHORHM3枚目のレコーディングの時に、この本を持参した」と書きました。

NHORHMのプロジェクトは4枚CDをリリースしていますが、全部レコーディング・エンジニアは安宅秀紀さんで、ベテランのエンジニアさんです。どこでもいい感じにして下さるので、超安心。
毎回スタジオは違うスタジオを使っており、3のレコーディングはTAGO STUDIOで録音しました。群馬県高崎市のスタジオで都心から離れるため、1泊2日の録音。録音1日目が終了した晩に居酒屋で長くお話しできる時間があって、なかなかそんな時間も普段ないので、時代時代の録音の話を少し聞かせてもらっていたんですね。

私は90年代にメタルを聴いていたので、メタルの音といえば、例えばメタリカのブラックアルバムや、ドリームシアターの「Images & words」だったりします。
だからだと思いますが、当時高校生の私がもっとメタルを知りたいと思って80年代のメタリカを聴くと、ギザギザ尖ってはいるけどあまり迫力がなくこぢんまり聴こえていました。
90年代当時の全体的にキラキラで、サスティンが長めで大きなアリーナで演奏しているような、でもバスドラムの音はドムっと耳元で鳴っているようなリアルさで、音像のスケールが全体的に大きいものに慣れていると、特に10年前ぐらいの近過去のロックのアルバムは、古く聴こえるのだと思います。

ジャズでも、勉強しだした最初の頃は、バド・パウエルの録音は聴きにくくて仕方なかった。トリスターノの曲をとても格好良く弾いているピアニストがいて、では本物のトリスターノのアルバムを聴こうと思って聴くと、音が古くてトランスクライブするのはきついなあと思ってずっと放置していたり、音質に左右されることがかなり多かったと思います。

しかし、音質も慣れるもので、この頃のこのアーティストはこんな感じ、このレーベルはこんな感じ、などと時代の音に慣れてくるとストレスに感じないですし、当たり前と思って聴いてしまうようになります。

そこを、この本では〈当時の最新の取り組みはどんなものだったのか〉書いてあり、知識があると豊かに聴けるものだなあと改めて実感しましたので、連載で取り上げました。知ったら聴くのが絶対楽しくなると思います。

時代の音といえば、そのNHORHM3のレコーディングの時に安宅さんに「時代のトレンドが当時一番極端になった録音」と紹介してもらったこの音源は、衝撃でした。

歌が聴こえない…
こんな録音をどメジャーで売っていた時代があったんですね。

それから、記事を書くために改めて本を読んでいて思い出しましたが、数年前お亡くなりになったエンジニアの赤川新一さんにTAGO STUDIOで録音して頂いた時、確かスタジオ開始の一件目の録音ということで試行錯誤して、各ブースにモニタースピーカーを設置して録音したことがありました。えっこれマイクに入ってノイズにならないの?とびっくりしましたが、とても良い録音でした。

その時の録音はこちら。



あと、原稿を書いていて最終的に削ったレコーディング・エンジニアさんの話としては、エンジニアさんって録音の時は必要以上に喋らないんですけど(演奏者の集中を阻害しないように気配も消してらっしゃいます)、関西のエンジニアさんはよく喋る方が多い印象です。あくまでも私の身の回りの話ですが。


安宅さんに録音してもらったメタル・カヴァー3枚目。#4の歌もジャズシンガーなので一発録音・修正もなしです。ジャズ・ミュージシャン同士だと、クリックなしでその場で一発録音が、歌でも当たり前です。


時代の音で印象的なのは、コルトレーンの「The Lost Album」が数年前に発掘され発表された時、最初に音を聴いて絶句しましたよね。
今、この音が新譜として聴けるなんて、と、偉人の遺産と圧倒的な音楽の磁場と当時の録音に、かなりぶちのめされました。


今回も沢山読んで頂いてありがとうございます。

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この連載も、もう来月で丸3年です。


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