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『Space Jazz Trio vol.2』 Enrico Pieranunzi

2020年5月9日、コロナ自粛期間中のFacebook投稿より(2020年10月加筆修正済み)

88年『Space Jazz Trio vol.2』です。これも今は「Vol.2」という簡単なタイトルで販売してるみたいで、今、フィジカルで手に入るのかどうかわかりませんが、サブスクにはありました。

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先日『vol.1』について書きましたが、同じくyvp作品、これまた変わった音作りです。硬い音に加え、なんだか変なリバーブがかかってる。

でも、『vol.1』とアンサンブルの充実度は雲泥の差で、とても充実した内容になっています。特にベースのピエトロパオリのアンサンブルに対する動き方が一気に有機的になり、別人みたいです。ドラムの影はやっぱり薄いです。私が好みじゃないだけかもしれません、Roberto Gattoが来日した時はウホウホ喜んで聴きに行きましたが、このドラマーがあまり好きじゃないだけかもしれません。

1曲目も、間のインプロヴィゼーションもブルース、「Qui Sait?」もブルースの変形だったり、全体的にコンポジションよりはアンサンブルを中心にアルバム作りをしている感じですが、『vol.1』の「もう少しいかないの?」というのを、見事に全部解消してくれているような内容。コンポジションも実は隠れて良い曲が多くて、エンリコ・スタンダード(?)の「Alba Prima」もここで初出。この曲は、のちにMads Vindingのアルバム『Kingdom』でも収録されるんですが、そちらはヴィンディングが「エンリコのやって見たい曲全部やってみましたー! どう?どう?!」みたいな勢いがすごくて、もちろん沢山回数聴いてるんですけど、ちょっと過剰な勢いを感じてしまいます。エンリコのお呼ばれ感ががこれはこれで面白いんですが、Alex Realとあまり相性良くないのでは、と思っちゃったりします。ドラムとしてすごく格好良いんですけどね。

「Hindsight」と「Song for my brother」はトランスクライブしていました。
「Hindsight」は非常にアンサンブルも素晴らしく、特にベースのバッキングが非常に素晴らしいです。全体的にベーシストの動きが素晴らしくて、確実なところでヨイショッとピアニストの背中を押してくれていて、聴いてて気持ち良い。「Blue Ballad」も非常に良いです。

このエバンス系統のピアノトリオのベーシストの役割って、やる方はかなり難しいのだと思います。ドラムとのコンビネーションは当然のことながら、全体のハーモニーも見えてないといけないし、メロディーも紡げないといけない。
しかも、ラファロを聞いていたら、自分からクリエイティブなことをしてそうなんですけど、必ずその動きのきっかけはエバンスの一手で、その一手を思いもかけぬ方向に広げて戻してくれるので、ラファロは好き勝手にクリエイティブなことをやっているわけではありません。結構対位的に動いていたりするし、オーケストラとして全体を見ているからこそできる動きというのもあって、そのバンドが有機的になるためのベースのバッキングは、ピアニストとしては、いや〜美しいなあと思います。
聞こえていてもついていけない時なんて、いくらでもありますが、一度イベントで自分のトリオの演奏の時に、アレッサンドロ・ガラティが遊びに来てくれたことがあり、ゲストで私のトリオに乗って弾いてくれたら、もう車(バンド)が快適に走る走る。私が運転できるよりもはるかに運転に長けた奏者が乗ってくれると、メンバーのポテンシャルがよくわかるので、だからこそこのお二人にお願いしているのだと、自分の力不足がロックかけてるんだなあと、自分が成長するためにはやはりこのお二人にお願いするべきだなと、改めて思ったことがありました。

話がずれましたが、ピアノ・トリオって最小限のコンボであり、自由度は高いけれどバチっと決めることもできて、やる方もとても面白いんですよ。その面白さを、即興性の方に振ったのがyvpの方のトリオです。
『vol.1』から『vol.2』へ、このアンサンブルの飛躍に注目して聴いて頂けるととても楽しめると思います。
変な録音ですけどね。


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