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デジタル庁では、マイナポータルや地方自治体独自の電子申請システムの利用による行政手続のオンライン化の推進に加え、窓口での手続における住民の負担を減らすことと、地方自治体職員の業務負荷の軽減を目指し、自治体窓口DX「書かないワンストップ窓口」の取組を地方自治体と密に連携しながら進めている。

自治体窓口DX「書かないワンストップ窓口」とは、デジタルに不慣れな方などが地方自治体の窓口に来られた際も、デジタル技術を活用することで、職員の負担を軽減しつつ、住民サービスの向上、マイナンバーカードのメリットを享受できる取組だ。

デジタル技術の進展によりサービスのデジタル化が飛躍的に高まる中、国民がデジタル社会の恩恵を受けられるように、地方自治体の住民サービスについてもデジタル化の推進を本格的に取り組むことが求められる。

総務省から出された「令和4年版 情報通信白書」の「高齢化の推移と将来推計」によると、少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2040年には5,978万人(2021年から19.8%減)と推定される。これは1960年の6,047万人以来6,000万人を超えていた生産年齢人口が初めて6,000万人を切ることを意味する。5,978万人と6,047万人を比べると同じように見えるが、65歳以上1人を支える生産年齢人口の人数をみてみると、1960年では11.2人であるのに対して、2040年では1.5人と推定される。

単純計算で生産年齢人口の負担は2040年の方が約7.5倍増えているといえる。これほど労働力不足が深刻化する中で、地方自治体の業務を従来どおりのやり方で高い品質を維持することには限界がある。そのため、職員数が減少する中で高品質の窓口サービスを継続させていくためには、DXを推し進め、さらなる業務効率化が必要とされている。

「書かないワンストップ窓口」は深刻化する労働力不足を打開する一手といえる。
北海道芽室町の町役場では、「夫婦と子供3人(高校生、小学生、保育園)の5人家族が町に転入してきた」想定で職員が実際の手続きを体験している。その結果、情報を書類に記入した回数は、氏名55回、生年月日28回、住所11回、電話番号10回とかなりの回数に上り、手続きに2時間18分もかかったそうである。同じ情報を何度も繰り返し記入するだけでなく、書類の様式がばらばらで日付の記入も西暦・和暦の統一がされていない、押印が必要な手続きと不要な手続きがある、など手続きする住民だけでなく、受け付ける職員も大変であることが分かる。

この手続きを「書かないワンストップ窓口」に置き換えてみるとどうなるだろうか。デジタル庁は、自治体の窓口で来庁者の手続きを簡単に行えるようにする「窓口DX」のパッケージシステムを提供している。提供されるシステムは複数あり、その中からそれぞれの自治体が自分たちに一番あったものを選ぶことができる。神奈川県では、茅ヶ崎市が県内で初めてデジタル庁の提供するシステムを利用して、1月30日から「書かない窓口」を開始している。夫婦、祖父、子供三人の6人家族が茅ヶ崎市に引越すための手続をする時に、これまで必要だった氏名・続柄・生年月日の記入回数を「書かないワンストップ窓口」導入後でみてみると、住民届・小児医療証/児童手当認定・後期高齢者医療保険の3つで、氏名が4回、続柄と生年月日は0回と、「書かない窓口」導入前に合計40回必要だった記入が4回と激減したことになる。

これだけの差が生まれると、手続きにかかる所要時間も大幅に削減され、住民・職員の両方で負担が劇的に軽減されることになる。デジタル庁によると、2024年3月末までに17の自治体が「書かないワンストップ窓口」を導入するそうである。また、4月以降の導入に向けて、すでに94の自治体から導入の準備のためのアドバイザーの派遣要請を受けて順次派遣しているそうである。

デジタル庁は、この他にも、マイナンバーカードと指定難病、小児、高齢者等の医療費支援のための給付証、病院、クリニックの診察券を一体化するシステムや行政への手数料の支払いをキャッシュレスにするためのシステム、公金受取口座を使ってさまざまな行政からの給付をスムーズに行うためのシステムなどを提供していくといわれている。マンパワーが期待できない時代であるからこそ、デジタル技術による効率化された社会サービスが不可欠となる。河野太郎デジタル大臣が推進する様々なデジタル化により、全ての国民が豊かな生活をおくる社会が目の前まで来ているのかもしれない。

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