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「振付師の言っていた感情はどう見つけられるだろう」ソフィー・トーマスさん(「ASTRAEE」) インタビュー(3)

―衣装づくりに関して、ソフィーさんはすべての工程を1人でやっているのですか?

全部1人でやっていますね。

―オーダーを受けてから完成品を渡すまで、どのくらいでできますか?

最初の連絡から、だいたい2か月くらいと思っていただけたら、いいものが仕上がります。
実際につくり始めたらすごく速いんですけど、その前の実際にデザインを描き上げるまでに時間がかかります。
曲を聴くだけではなく、テーマとかヒントになっているようなものをすべてチェックするので。
まあ、理想は2か月なんですけど……結局みんな、「来週試合があるからお願い」とかっていう依頼になっちゃうんですよ。
私も、なかなか断れない性格なので(笑)。
もちろん全員「来週まで」っていうことはできないですけど、よく知っている人から「ごめん、でもどうしても」って言われてしまうと、何日も徹夜して作業しますね。

―ブノワさんが、「ソフィーはとにかく速いし、僕の求めているものをすぐにわかってくれる」と言っていました。

そうなんですよ、ブノワが「2週間しかない」というような依頼をしてくるんです(笑)。
まあ、彼とは長いことやってきているし、求めていることもわりとすぐにわかる関係ですしね。
ということで彼からの依頼には、「わかったわよ」と言わざるをえないです(笑)。

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―この仕事のために、日々、意識して行っていることなどはありますか?

この仕事のためというわけでもないけれど、アートはなんでも好きですね。
建築とか美術館、絵画、モードも好きだし、外国に行けば美術館巡りするし、映画、シアターも行きます。
アートにかかわるすべてのものがもともと好きですし、私にインスピレーションを与えてくれますね。

―そういうものが、デザイン画を描くところに活きてくる、という感覚ですか?

もちろんそれもありますけど、衣装に関しては、振付師が説明してくれることが大きいです。
このプログラムがどんなもので、どんな感情を表現したいのかとか、一番わかっているのが振付師です。
だから振付師からいろいろと細かく聞きます。
それから、振付師の言っていた感情はどう見つけられるだろうとか、どこでこういう気持ちになるんだろうとか、自分も同じように体験できるように曲を何回も何回もかけていきます。

―感情とか表現を探すために聴く、んですね。

そうです。ノイローゼになりそうなくらいね(笑)。

―社交ダンスの衣装とフィギュアスケートの衣装の相違点は?

似ているところがとても多いですね。
似ているのは、身体をとにかく美しく魅せること、そして、競技としてルールに則ってもっともいいパフォーマンスができること。
それが大きな2つの柱です。

違うスポーツなので、違うといえば違います。
いつも意識しているのは、私はダンス出身なので、スケートの衣装をつくるときにはダンスから、ダンスの衣装のときにはスケートから、なにかちょっと取り入れていこうということです。
外見でも少し違ったエッセンスでもいいんですけど。

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―たとえばパパダキス&シゼロンの衣装など、単色でシンプルなデザインなのに動くと複雑でムードが出るような衣装がありますが、そうした衣装は、どんなつくりになっているのでしょうか。

たとえば一色に見えるとしても、ドレープにしたり、同系色の生地を重ねる形などでグラデーションを入れたりするのが、好きなんです。
動くと初めて見える部分があると、その衣装を着た演技がとてもミステリアスな深いものに変わっていくと思います。

ドレスがあまりにも完成されすぎているもの、ドレスだけで完結してしまうようなものはつくらないですね。
その人の体型にぴったり合った衣装で、その人が動いたときに初めて見えてくるもの、表情、テイストがあるような衣装をつくりたい。
動いて初めて見えるものによって、さらにプラスの価値を持つ、そこまでいかないと見えないものを隠し持ったような衣装。
パフォーマンスとハーモニーとなるような衣装をつくりたいと思っています。

―そうしたお話をうかがうだけで、わくわくします。

1つひとつ、衣装はそれぞれにユニークで、それぞれが独特なものというイメージでつくっています。
一番楽しいのは、デザインを考えているとき。
こんなイメージで、と頭に浮かんだものをデザインに描いているときが一番楽しい。
そのあとは、「こんなの、本当につくれるのかしら? どうやってつくるのかしら?」ってなってしまうので(笑)、またそれはそれで大変なんですけど、実際に衣装ができあがったときには「頭のなかのものが本当にできた!」って最高の喜びを味わいます。

さっきも言ったように、選手たちの結果が良かったり、衣装が演技とマッチしていたりするのを見るのも嬉しい。
衣装を受け取ったスケーターやダンサーが、「自分のイメージしていたものよりよかった」って思ってくれるのが一番嬉しいかな。
もちろん、できあがった衣装を送る小包を送るときが、一番ほっとするんですけどね(笑)!

(通訳:Yuko SPRUNGさん)

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(※)写真は、ASTRAEEの許可をいただき掲載しています。無断使用はお控えください。

ソフィーさんのインタビューは以上です。
インタビュー(1)、(2)は以下からお読みいただけます。


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