ボレロへの考察、感性を充す15分間の奇跡
ボレロ。きっとだれもがテレビCMとかラジオとかで一度は聞いたことがあるお馴染みの曲。そして一回聴いたら忘れることのないその旋律。水戸黄門の、人生楽ありゃなんちゃらかんちゃら〜、のはいりのたったたた たったたた ってスネアドラムが似ている、あのボレロ。
もともとこの曲は、フランス人作曲家のモーリス ラヴェルが、1928年にイダ ルビンシュタインというバレエダンサーの為の作品に作曲したバレエ曲である。
この耳に残る感覚。なにかトリックがある。。。
気になって調べていたら辿り着いたのは、神経内科さんのウェブサイト。
どうやらボレロはわたしたちの「報酬系回路」Reward system に訴えてくる、らしい。
報酬系回路をわかりやすく?とGoogleに聞いたら、“脳が心地よいと感じた刺激を再度求める機能” だそう。
繰り返される一定のリズムを定番化して安心感と高揚感を得る。なるほど、これはまんまと作曲家の思惑にはまっている。
この約15分ほどの見事なまでにポジティブな中毒性のある曲に、息を呑むほどの美しい現代版の振りをつけたのが、フランス人振付家のモーリス ベジャール。
(曲発表当時のオリジナルの振付はブロニスラヴァ ニジンスカ)
1961年にベルギー、ブリュッセルで初演を行って以来、見るものを魅了してきた。(超ありきたりな表現だけど一番しっくりくる)
ベジャール版ボレロは、装飾的な要素を一切排除し、中央の大きな赤い円卓上のメロディ(プリンシパル 主役)と、その周囲を取り囲む大勢のリズムで構成されるシンプルな力強さ。暗闇に浮かび上がるメロディが、徐々に強まる鼓動とともにリズムをリードしていく。そうして音楽とダンスは計り知れない相乗効果を生み出す。
またベジャール版のボレロは、彼の主宰のダンスカンパニーに認められたダンサーにしか踊ることが許されていない。そのなかでわたしのいちばんのお気に入りが、フランス人バレエダンサー、シルヴィ ギエムによるボレロ。
2015年日本での大晦日カウントダウン、彼女の引退ステージ。
この時彼女は50歳だった。
この15分間には、語りきれないくらい多くの物語が詰まっている。一瞬一瞬すべてが、とても尊く、儚く、美しい。
辛いことがあった日、嬉しいことがあったとき、わたしはいつもここに戻ってきて、泣き、笑う。
15分の急速チャージ。そうやってまた、わたしは自分の報酬系回路を充しにやってくるのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?