乙女心

夏のはじめ
濃い赤ワイン色した艶やかなアメリカンチェリーがスーパーの売り場に出はじめる。
さくらんぼより甘味があって肉厚なところが私は好きだ。


中学生の頃お弁当と一緒にアメリカンチェリーをタッパに入れて持ってきている友達をみてなぜか

めっちゃいいやん私もぜったいマネする！！と。

めちゃくちゃ女の子やん！って。

今思うと何がどう良くてどこが女の子らしくみえたのか分からない。

きっと可愛くみえたのかな。アメリカンチェリーを持ってきている姿が。

それから私もアメリカンチェリーがある時は
るんるんで持って行くようになった。

友達と分けっこしたりして、アメリカンチェリーがあるときはなんだか女の子な気分で楽しいお弁当時間を過ごしていた。

そんな思い出があるアメリカンチェリー。

きっと娘も喜ぶはずだ
娘のお弁当にも持たせてあげよう♡

朝からウキウキと娘に

「今日お弁当とアメリカンチェリーもつけといたで！」と伝えて学校に送り出した。

仕事から帰ってきてシンクに空のお弁当箱がおかれているのを見て娘に

「どうやった！アメリカンチェリー！
美味しかったやろ！」と言ったら

娘から衝撃的な事を言われたのだ。

娘「ママ、学校でアメリカンチェリーはきつい」

私「きつい？？ってどういうこと？」

娘「だって口からタネ出さなあかんし手が汚れるし恥ずかしいやん」

私「えータネ出さなしかたないやん〜手が汚れるとか洗えばいいしウエットティシュ持ってるやん〜」

娘「家で食べるのはいいけど学校ではきつい」

私にはない感覚だった。

私のアメリカンチェリーがある、るんるんな
お弁当時間とは全然違っていたのだ。

るんるんでアメリカンチェリー入れといたで！と喜ぶのが当たり前みたいに言ってしまった自分がとても恥ずかしかった。

私はアメリカンチェリーを持って行っている姿に女の子らしさを感じていた。

娘にはこの感情はまったくなくて口からタネを出すことや手が汚れることの方が気になってしまうのだ。

それにしても、未だ私にはない感情なだけにそんな気になることかと。タネくらい出しても誰も見てないやろと思っていた。

でももしかしたら

よく初めてのデートでテリヤキバーガーは食べられないと言われていた。

まだ慣れていない関係で彼氏、彼女の前で大きな口をあける事もパテとパンの間からこぼれてしまうテリヤキソースに苦戦している姿も見られたくないからだ。

娘もこれに近い感情が彼氏ではなくてもあったのか？？なんて思ったりして。

それとも好きな子がおってその子に見られるのがイヤやったとか？なんて思ったり。

勝手に妄想して勝手に盛り上がり

娘に言って「違うしっ」と冷たく言われたのだった。

難しいね乙女心は。

同じアメリカンチェリーに抱く気持ちがこんなにも違うとは。