感染症対策マニアが、新型コロナについて雑に語る⑦ 「日本はなぜロックダウンできないの?」
日本はなぜロックダウンできないのか?~感染症対策と人権~
さて、前回、中国の初動において、ロックダウン(都市封鎖)が非常に有効だった、という話をしました。
では、「なんで日本はロックダウンしないんだ?」って、思いませんか?
テレビのワイドショーでも、コメンテーターが「早くロックダウンすれば良いのに」などと政府を批判していたりしますが、正直私は「コメンテーターなんだったらもう少し勉強してこいよ」と思ってしまいますし、「周りの専門家もちゃんと説明しろよ」と思ってしまいます。
色んなことを自分で勉強していると、このロックダウン以外のことでも、ワイドショーを見ているとそんな感想ばかりが浮かんできます。
だからこそ、このコラムを自分で書いている、というのも正直あります。
社会に不安が蔓延している今だからこそ、新型コロナウイルスについて、正しくちゃんと知る、ということは、大切だと思うのです。
さて、ロックダウンについて、安倍首相は「しない」とは、一度も発言していないはずです。
ロックダウンは「できない」という表現をしています。
そう、日本においては、ロックダウンは「しない」のではなく、「できない」のです。
では、なぜ日本はロックダウンできないのか?
今日はそれについてお話します。
こんな話から始めましょう。
感染症にかかるのは、もちろん人間だけではありません。
鳥インフルエンザや、口蹄疫など、動物の間で流行する感染症も、多くあります。
では、例えば養鶏場で飼われているニワトリが、鳥インフルエンザに感染したとして、どんな感染症対策がとられると思いますか?
答えは、全殺処分です。
感染した1羽のニワトリだけでなく、そこに飼われているニワトリ全てを殺処分します。
それだけではありません。
その養鶏場の周囲数十kmにある養鶏場のニワトリ全てが殺されます。
養鶏場のニワトリが鳥インフルエンザに感染するのは、たまたまその養鶏場に降り立ったガチョウやアヒルなどの別の鳥から感染される場合です。
そのガチョウやアヒルが、別の養鶏場にも降り立ったかもしれない、そういう小さな可能性のために、感染が確認されていない養鶏場でも、全てのニワトリが殺されます。
これを、「かわいそうだ!動物愛護団体に訴えてやる!」みたいな反応はしないでください。
これは、ニワトリの為にも、そして、鳥インフルエンザがヒトーヒト感染を起こす突然変異を起こさせない為にも、必要な処置なのです。
以前、「新型コロナウイルスに対する神意を『おふでさき』から悟る試み」でもお話しましたが、鳥インフルエンザというのは、今の新型コロナウイルスとは比べ物にならないくらいにヤバいのです。
新型コロナウイルスがこのままどれだけ感染拡大したとしても、人類の存続が危ぶまれることはありませんが、鳥インフルエンザにはその可能性があります。
なので、人類存続の為にも、ニワトリさん達には犠牲になってもらう他ないのです。
そう考えると、以前Twitterで「ニワトリや牛が感染症になったらみんな殺処分されるのに、どうして人間は新型コロナウイルスにかかっても殺処分されないの?」と子どもに聞かれて、返答に困った、というような内容のツイートが話題になりましたが、皆さんがこう子どもに聞かれたら、どう答えますか?
「命は大切だから」と言うなら、人間の命は大事で、ニワトリの命は大事ではないのか?という話になります。
人間と、ニワトリの違いは何か?
これは、そういう根源的で、哲学的な問いです。
ですが、ちゃんとこの問題には答えがあります。
私ならこう答えます。
「ニワトリは殺しても良くて、人間を殺してはいけないのは、人間には、人権があるからだよ」と。
「は?」と、思いませんか?
でも実はそうなんです。
人間には人権があって、ニワトリには人権が無いので、ニワトリは殺処分しても良いのです。
そういうことになっています。
「いや、人間にだけ人権があるなんて、誰が決めたんだよ。根拠はあるのかよ」
そう、当然思われるでしょう。
もちろん根拠はあります。
それは「憲法に書かれているから」です。
またまた「は?」ですよね。
でも、そうなんです。
人間は殺してはいけないのに、ニワトリは殺しても良い理由は、「憲法に、人間には人権があって、それは守られなきゃいけないと書かれているから」以外に、正当な根拠はありません。
憲法というのは、みんなで決めて、みんなで守らなくてはならないルールです(ということになっています)。
その憲法に、「ニワトリにはニワトリ権がある」とは書かれていないので、ニワトリは殺しても良いのです。
「いや、でもそれって、人間が勝手に言ってるだけじゃん……」
と、思いますか?
そうなんですよ?
人間は、自分たちが勝手に決めたルールによって、人間の命と、それ以外の命とを区別しているんです。
このことについては、最後の方でまた詳しく話します。
人間たちが勝手に決めたルールなのですから、もちろん、憲法も、国によって色々に違いますし、人権というものの考え方も、国によって違います。
そしてこの人権の考え方の違いこそが、中国ではロックダウンができて、日本ではロックダウンができない理由です。
例えば、中国では麻薬の運び屋をすると死刑になります。
日本では、1年以上の有期懲役ですが、執行猶予が付くことも多いです。
同じ罪でも、罰則が天と地ほどに差がありますが、これは、中国では、個人の命よりも、社会の秩序の方が大切と思われているからで、日本では、社会の秩序よりも、個人の自由の方が大切だと思われているからです。
そうなんです。
日本と言うのは、世界的に見ても最も強く、個人の自由を尊重する憲法を持っている国です。
例えば日本国憲法第13条にはこう書かれてあります。
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
よく「自由権」と聞くと、「なんでも自由にして良い権利」だと誤解されがちですが、正しくは「国民が政府から自由になれる権利」です。
裏を返すと、「政府は国民の自由を侵害するようなことはしてはいけないし、そんな法律は作ってはいけませんよ」ということです。
その自由権が、日本は特に強力です。
ですから、「なぜ日本はロックダウンできないのか」の答えは「そんな法律が無いから」ですし、「なぜそんな法律を作らないのか」の答えは「憲法違反になるから」です。
それ以上でもそれ以下でもない、ただそれだけの問題なんです。
なので、よく今回の自粛のことに関しても、「要請ではなくて、法的な拘束力を持たせてほしい」とか、「他の国のように、外に出ている人は逮捕すれば良いのに」とか言っている人を見かけますが、それは、しないんじゃなくて、できないんです。
「政府が強制じゃなくて要請しかしないのは、給付金を出したくないからだ」とか、違うんです。
実際、給付金を出すことにもなったじゃないですか。
政府が国民にお願いしかしないのは、あくまで法律の問題です。
ここにおいては、法学の知識が必要なんです。
元大阪維新の会代表の橋下徹さんは、さすがは弁護士さんだけあって、1月30日というかなり早い段階から、日本のこの弱点に注目し、こんなツイートをされています。
これは違う。憲法を守れ!と強く言っているひとたちが何を言う!国民への身体的強制を伴うものは法の根拠が必要だ。国会議員が徹夜して法律を作ればいいだけ。今の国会は何をしている!(以下略)
そうなんです。
いくら憲法違反になるとは言え、法律も解釈の世界ですから、例えば先ほど挙げた憲法第13条の「公共の福祉に反しない限り」の部分を拡大解釈するなどすれば、もっと強力な法律を作って、ロックダウンでさえも行うことは、可能と言えば可能なんです。
ですがその為には、法律を作る為に徹夜に徹夜を重ねて論議を深めていかねばなりません。
それはとても大変なことなのですが、橋下さんに言わせると、「それこそが国会議員の仕事だろ!」というわけです。
私は普段から橋下さんのツイートを追ってますので、この新型コロナ対策関連の膨大な量のツイートもほとんど読ませて頂いていますが、その上で、もし、今橋下さんが国会議員として居られたなら、今の日本の状況は、かなり良いように変わっていただろうな、ということが、かなりの確信を持って言えます。
今回の対策をめぐっては、大阪府の吉村知事の姿勢が非常に大きな評価を受け、日本の野党政党の支持率も、日本維新の会が、立憲民主党を抜き、最も高い支持を得るに至りました。
こうした非常時における、政治の力と言うのは、とても重要なんです。
さて、以上のような理由から、日本ではロックダウンができません。
しかしそれは、中国のようにある日突然街を封鎖されて、自由な活動が一切できなくなる、なんてことが日本では起こらないということでもあります。
これはとても良いことでもあります。
これからも国民が、政府からの自由を保障され続けたいと願うのなら、今の政府を批判ばかりするのではなくて、素直にその要請という名のお願いを聞く以外に方法はありません。
日本人は、要請さえすれば、ちゃんと聞いてくれる、という信頼関係の上に、今の対策は成り立っています。
その信頼を国民が実現できないようであれば、日本も、国民の自由権を制限する国にならざるを得ません。
さて、今回の話はここまでです。
次回は、また次回話しますと言っていた「人間は、自分たちが勝手に決めたルールによって、人間の命と、それ以外の命とを区別しているんです」という部分についてです。
新型コロナウイルスのこととは特に関係は無く、私の本業である宗教家としての話になりますので、そういった話題が苦手な方は、どうぞ飛ばして頂いて結構です。
その更に次回は、「日本の水際対策はあれで良かったのか?」という話をします。
乞うご期待。
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