見出し画像

人には人のヲタ活がある。【人刊〇〇 vol.3 あくにゃん】

ソーシャル上のエンゲージメントから、特定のジャンルにおいて情報拡散やコミュニティの活性化に寄与する人を月イチで紹介する人刊〇〇。続いてのコミュニティは「ヲタ活」です。

ヲタ活? 推し活?

アイドルや、タレント、俳優などの三次元に存在する推しと、アニメや漫画など二次元の推し、ヲタクが応援する対象は多岐に渡りますが、その中でも今回は、男性アイドルを応援する男性アイドルヲタクでYouTuberのあくにゃんこと阿久津愼太郎さんに、ヲタ活についてインタビュー。

ヲタ活の変遷から、ヲタク同士の関係性、ヲタ活コミュニティにおけるアイドルの捉え方の違いなど、いろいろと伺いました。ヲタ活をしている方、ヲタ活コミュニティや男性アイドルヲタクについて気になる方は是非ご覧ください。(あくにゃんは平日は「人刊〇〇」の運営元でもあるスパイスボックスで広報として働いています。)

ちなみに「ヲタ活」「推し活」「オタ活」「推し事」など推しを応援することを表現する言葉はいろいろあります。

エンゲージメント指数の動向

調査概要
・キーワード:「ヲタ活」「推し活」「オタ活」「推し事」を含む記事・投稿
・データ取得期間:2020年9月27日〜2021年9月26日
・調査ツール:spiceboxのオリジナル・ソーシャルリスニングツール「SOCIAL ENGAGEMENT ANALYTICS(SEA)」

ヲタ活が飛び出ている月がありますが、エンゲージメント(※)していたのはこちらの投稿。

※エンゲージメント
Twitter・Facebookにおける「いいね」「リツイート」「シェア」「コメント」などの総アクション数。数が多いほど、多くのユーザーに、SNS上で言及されている・注目されていると定義しています。また、この数値はポジティブに語られているもの、ネガティブに語られているもの、両方を含んでいます。

実体験をもとに「勉強は推しを助けることにつながる」というもの。このようなヲタクによるヲタ活コミュニティへのティップス共有や共感を求めるあるあるネタ共有は、エンゲージメントが高くなる傾向にあります。

SNSはヲタ活に大きな影響を与えた。

あくにゃん_宣材横長

あくにゃん
「ヲタクをするために生きている」をモットーに「好き」を配信し続けるプロのヲタクYouTuber。動画の総再生数は1600万回を突破。得意分野:K-POP、ジャニーズ、地下アイドル、メンズコスメ。アイドルとのコラボ動画や、リリースイベントの司会なども務める。

Twitter
YouTube

ーーまず、あくにゃんが辿ってきたヲタ活歴について教えてください。

僕にも一応、「茶の間」といわれる時代があって。

ーー茶の間……?

現場に行けない/行かないヲタクのことです。家の “茶の間” で音楽番組やYouTubeに上がっているPVを見るのがメインのヲタ活のような。例えば地方にいてなかなか現場に行けない人や、あまりお金をかけることのできない学生とか。あとは生で推しを見たくないヲタクもいるんです。架空の人物でいて欲しいというような。僕は全然そんなことなくて生で見たいタイプです。

初めて行ったK-POPのライブは、17歳くらいの時でBOYFRIEND(現BF)という男性グループでした。あとはいま俳優としても活躍している北村匠海さんが所属しているDISH//など。一通りいろいろな界隈のライブやイベントに行くと、自分が何をアイドルに求めているかがわかってくるんです。僕の場合はパフォーマンスよりもアイドルとの交流を重視するタイプ。特典会(握手会やサイン会、チェキ会とか、交流・接触イベント)が一番好きです。チェキやサインのお金ってアイドルに直接渡ることが多いのですが、自分の頑張りが推しの露出、ひいては本人の給料アップに貢献できる(=推しが豊かになる)世界観にハマっています。

ーーあくにゃんに限らず、推し活をしている人ってみんな茶の間からスタートするのかな?

そうですね、あとは急に友達に誘われてライブに連れて行かれてハマるパターンも。アイドルによっては「お客さんを300人集めたらデビューできるプロジェクト」があるので、そういったタイミングでヲタクの友達が周囲のまだヲタクではない友達を誘うパターンが多いのかも。それから最近増えていると感じるのは「親がヲタク」パターン。「親がヲタクだから親と一緒にライブに行きます!」とか。茶の間を飛ばして親の「英才教育」によってヲタ活にハマってしまう(笑)人も。

画像3

ーーその辺はバンドとかと変わらないのかも。親がV系好きでV系にはまりました! みたいな声はよく聞きますね。あくにゃんは特典会などの交流イベントが好きとのことだけど、他にはどんな推し方があるんだろう? ひたすらライブに行く、とか?

SNSで推しの情報を投稿しまくる、なりきり広報担当層もいます。K-POP界隈だと、暗黙の了解で公式コンテンツの二次利用が許されているので、インタビュー動画に字幕をつけたものや、推しの出演シーンをまとめた再編集版PVをつくるヲタクが多数見受けられます。公式アカウントから「僕たちのPVで気になった箇所があれば二次創作して!」のようなメッセージが発信されることも。あとはシンプルに推しのPVの再生回数を増やすために「たくさん動画を見よう」と周囲に促す投稿をする人も。

あとは愛が強すぎる層。ヲタクは推ししか見てはいけない!文化が今も根強くて「グッズはひとつでも多く買わないといけない」「収入の●割を推し活に使うべき」「全通、全ステ(全ての公演に通うこと)をするのは当たり前」と強いメッセージを発信する人たちです。僕自身は不健康だと感じていますが。

ーー無理してそれをするのはあまり健康的ではないかもしれないですね……。

もちろん推しにとってはいいことなのかもしれませんが、それが正義になっているのはよくないと思っています。

ーーK-POPではSNS上での二次創作を中心にヲタ活が活発になっているとのことですが、他にSNSがヲタ活に与えた影響ってありますか?

お金をかけていない/かけられないファンにも価値を見出せるようになったことがいちばん大きいかもしれません。PVの再生数やSNSのフォロワー数、いいねの数がめちゃくちゃ重要になっていますよね。いままではライブに行って、お金を払うヲタクが偉いとされていたけれど、ライブに行けなくてもPVを再生したり、SNSで推しの情報をシェアすることで推しに貢献できるようになりました。「茶の間」も市民権が得られるようになったんです。現場に行くタイプのヲタクの中にはこの現象を若干不服に感じている人もいますが(笑)。よく友達と話しているのは、戦闘力がみんな1ツイートになっているということ。ヲタ活にお金をかける人もかけない人も、現場に行く人行かない人も、SNSでは戦闘力が平等なんです。

画像4

アイドルの活動にも、「フォロワーが●人増えたら/●RTで次のメンバー公開」のような形でSNSを活用した取り組みも増えてきました。

ーーどんどんデジタル化が進んでいる……! SNSによってお金を使わないでもアイドルを応援できるようになったことはポジティブな変化だと思うけれど、逆にSNSが活発になることでネガティブな変化は起きましたか?

アイドル側にも、ヲタク側にもネガティブなことがあると思っていて。アイドル側のリスクとしては「匂わせ」がバレること。「この写真に写っている小物が一緒だ」とか、小さな証拠から特定されてしまう(ヲタクの観察力は舐められない)。5、6年くらい前は、事務所に投稿内容を毎回確認しなければならなかったけれど、いまは事務所の確認が入らないグループの方が多いので、炎上リスクも跳ね上がります。推しの様子がリアルタイムでわかるのはいいことですが(笑)。神格化はできなくなってきたかもしれません。どちらかというと親しみやすさが売りになっていますよね。

ヲタク側のリスクは、SNS上で顔の見えない喧嘩が頻発すること。SNSがなかった時代はそれこそリアルな鍔迫り合いが現場で行われていました。それがいまはSNSに移行している。昨今の学校いじめと構造は同じかもしれません。成り済まして掲示板に書いたり、悪口を送ったりとか。もちろん、推し活できる友達をつくるなど、SNSによって同士を見つけやすくなったことは確かですが、暗い一面もあるということです。

ヲタ活にかける思いが同じ温度の人と一緒にいることが多い。

ーー推しの恋愛事情を取り巻く考え方って、今と昔で変化はあるのでしょうか? 恋愛していることを公にしているアイドルも出てきているので、ヲタク側も割と寛容になっているのかな?

「ガチ恋(アイドルに本気で恋すること、またしている人たち)」を嘲笑う層が年々増えているとは思いつつ、結局「ガチ恋」がヲタク全体に占める割合自体は変わっていない気がします。「アイドルと最終的にどうなりたいのか?(どんな関係でありたいのか?)」の問いに対して「恋人関係になりたい」「あわよくば親密な関係になりたい」と言う人は案外多いですし、既に親密な関係であることをアピールしているヲタクも一部ですが、います。

あとはファッション的に「ガチ恋」や「リアコ(リアルに恋しているの略)」を自称する人もいます。ポップに「私●●くんにリアコなんだよね〜」と言う。アイドル側も「俺ガチ恋枠(ガチ恋のファンが付きやすいタイプ)なんだよね〜〜」と話したり。「ガチ恋」の言葉に含まれる意味が多様化して「真剣に長く応援してくれる人」≒それはもう「ガチ恋」みたいなものだよねと捉えている人もいます。

僕は男性アイドルが好きな男性ヲタクですが、特典会などの交流が好き & 顔が好きで応援していることに驚かれます。「男性ヲタクは(男性アイドルの)パフォーマンスに魅力を感じるはず」と思われることが多くて。僕はそうやって「男性ヲタクはこうあるはず」と決めつけられるのがすごく嫌なんですけど。

ーーなるほど。あまりアイドルに詳しくない身からすると、パフォーマンス好きもいれば顔好きもいるよな、と納得してしまいがちですが。

「顔だけが好き」のような発言をすると、「顔だけファン」と叩かれる風潮もあるんですよね。顔がいいことはみんなが持っているべき最低条件とされているふしもあるせいか、顔+αで何か褒めないといけないような……。でも「顔面優勝」「顔面国宝」といった推しの顔を褒める言葉はみんな言うんですよね。

ーーヲタク同士のコミュニケーションの話が出ましたが、ヲタクの横のつながりってどんなふうに変化していったのでしょうか?

基本的には友達の紹介から広がることが多いです。友達の友達は熱狂度合いや金銭感覚が近いことが多い。重要なのは価値観だから。僕の周りにはやばいヲタクしかいません(笑)。

ーー同じ人を推しているから仲がいいわけではないんですね。

そうですね、推し活に対する温度感が同じ人と一緒にいることが多いです。公演では推しの近く(前の方)で見たいのか、後ろでゆっくり見たいのか、1回だけ見るのか、同じ内容だろうが昼も夜も見たいのか、など。ヲタ活って、チケットを取るにもグッズを買うにも譲り合い、チーム戦が頻繁に起こるので。例えば最近だと、アイドルグループのメンバーグッズがランダムに販売されることが多い(購入時点では好きなメンバーのものが買えるかはわからない)ので、購入後に自分の好きなメンバーのグッズを持っている人と交換することは珍しくありません。

画像5

推しといい関係であるために

ーーライブ(公演)やグッズの話がありましたが、ヲタクが情報を得るのはやっぱりSNSですか?

昔は公式サイトで情報収集していたけど、いまはみんなSNSで情報収集しています。SNSの登場によって情報を分かち合うような動きが出てきました。

ーー先ほどK-POPでは二次創作が暗黙の了解で許されているとありましたが、K-POPとジャニーズとでは得られる情報の質や量は違いますか?

K-POPの場合はヲタクが勝手に作った画像や動画がたくさん流れてくるし、K-POPの情報だけを発信する総合情報サイトのようなSNSアカウントがたくさん存在しています。ジャニーズの場合はグループごとに分かれていて、例えばSexy Zoneの情報だけを発信するSNSアカウントがあります。ジャニーズって各グループのファンクラブに入っていないとチケットも取れない、ある種閉じられたコミュニティなので、そのコミュニティ内で会報やブログなどを熱量高く楽しんでいる。あとはテレビつけていれば、ジャニーズは何かしら情報(音楽番組やバラエティの出演など)得ることはできます。

ーー情報の入手方法ひとつとっても、ジャニーズとK-POPでは違いがあるんですね。ヲタクの年齢層では違いはありますか? なんとなくジャニーズの方が幅広いイメージです。

そうだと思います。ジャニーズは「一緒に年をとっていく」ヲタクが多いです。K-POPの場合はデビューしても、すぐに解散してしまうグループもいるので、ジャニーズに比べて推すグループの入れ替わりが頻繁に起こります。

ーーなるほど。ヲタク視点で考えると、長くひとつのグループを推す派、いろんなグループを短いスパンで推す派に分かれますか?

はい。離脱ポイントは何箇所かありますが、成長を感じて推すのを辞める人もいます。「成人式の姿を見たらもう応援しなくていいかな」とか。「昔はひげはやしてなかったのに」、「会場が広くなってちょっと寂しくなった」なんてことも。その分新規のヲタクが入っていますよね。グループが大きくなっていくためには、家族層をどれだけ増やせるのかが重要な要素のひとつです。僕の好きなキスマイ(Kis-My-Ft2)も、もともとはコアなファンばかりだったけれど、大きくなるに連れて家族連れが増えました。

ただ、ファン人口が増えたことで一人あたりの熱量も上がっているのかと問われると正直分からない。どんなアイドルも最初はファンの数が少ないけれど熱量が(ものすごく)高いヲタクに囲まれています。熱量が高いからちょっと高いグッズや特典も「推しの活躍のためなら……!」と躊躇なく買います。ファンが増えたらひとつひとつのグッズの値段を下げて、気軽に手にとってもらえることを重視して、大量に買ってもらう(もちろん例外もあり!)流れになっていると思っていて。

ーーいわゆる古参と新規の違いでしょうか。それぞれのヲタクの特徴みたいなものはありますか?

いろんなグループの合同イベントに行った時に「あ、あの子は●●のヲタクだ」のように服装でわかることもあります。KAT-TUNのヲタクがキスマイヲタクになり、やがてSixTONESヲタクへ……のような特徴的な系譜も見られます。この場合はいわゆる不良っぽい雰囲気のグループが好きなヲタクの系譜。

ーーなるほど。ヲタ活におけるお作法やルールはありますか? コミュニティ内での礼儀だったり。

ヲタク/ファンの礼儀がいちばんいいと言われているのは宝塚のヲタク。礼儀がきちんとしている前提で、入り待ちや出待ちが許されています。僕も時々宝塚の舞台を観に行きますが、上品さや隠しきれない余裕さが他のジャンルとは違う。ヲタク同士で現金を渡す際も、裸で渡さずに花柄の封筒に入れる、みたいな。ジャニヲタも比較的、礼儀がいいとされているのですが、礼儀悪いところだけ切り取られてTwitterなどで拡散されてしまうことが多くて(笑)。

地下アイドルのお客さんには、元ジャニヲタも多いのですが、ジャニヲタは「推しとファン(ヲタク)は違うものであり、推しはテレビの中の人、距離があって当然である」を頭に叩き込んでいる人がほとんど。だから地下アイドルを推すときにも、一定の距離感を保ち続けているファンを見受けます。ジャニヲタのコミュニティ内ではよく「推させていただいている」という言葉も聞かれます。

ーーこっちが好きで(勝手ながら)推させていただいているみたいなことか……。これまで推しとヲタクの関係性について聞いてきたけれど、あくにゃんとしてはアイドルにどうあって欲しい?

僕自身は「いわゆるアイドル」を求めがちです。恋愛のこととかも言わないで欲しい(隠し通して欲しい)し、雑誌の質問企画にある「髪型はショートヘア派かロングヘア派か」の問いにも答えて欲しくないです。アイドルが素晴らしいのはなんと言っても老若男女、間口が広いところ。よく「アイドルってホストに似ていますよね」と言われることがありますが、ホストがお客さんとしているのは20歳以上の大人だけですし、対象も女性に(ほぼ)限られています。アイドルだけなんですよ、こんなに門戸が広いのって。

恋愛したくなくて推しを応援しているのに、恋愛の歌ばっかりなことにはたまにうんざりしますが(笑)。「推しに恋人がいても大丈夫」という方もいるけれど、僕はヲタクに見せる面は「しっかりしたアイドル」でいて欲しいと思います。

画像6

ーー理想のアイドル像はそれぞれあるとして、ヲタクはアイドルにどんなことを求めているんだろう。

大きくは、推しに認知されたい人とされたくない人に分けられると思います。自分という存在自体知って欲しくないと思っている人もいれば、認知されることだけに命をかけている人もいる。接触イベントだけ行かない人もいます。逆に「俺が(私が)推してやってんだよ」というノリの人も。プロデューサー気取りの人。過去にとある女性アイドルに握手会で急に説教しだした男性ヲタクがいて、そのアイドルが泣いてしまったなんて出来事がTwitterで話題になりました。「この現場はヲタクがいる前でアイドルに説教するのか」と思ったらただのヲタクで……。

ーーめちゃくちゃ怖い話ですね……。

アイドルって人生で初めてアイドルをする人が多いですよね。小学生から練習生・研修生としてレッスンしていたり。例えば中学生のアイドルがいたとして、そこにつくにヲタク(特に現場にコンスタントに通えるヲタク)って大体が大学生以上ですよね。そうすると、アイドルよりもヲタクの経験値の方が自ずと高くなってくる。現場に足繁く通うヲタクは、これまでもたくさんのアイドルを見て目が肥えているので、アイドルに対して「もっと頑張らないと」とか「そのまま消えていったアイドルをたくさん見てきた」などと上から物申してしまうプロデューサー気取りヲタクが生まれてしまうんですよね。

ーー長寿アイドルよりも新しくデビューするアイドルを応援する人の中には、一定数そんな人が含まれてしまうのでしょうか。

単純にまだ初々しい頃から応援できることに魅力を感じる人がほとんどなんですけど、一部で「プロデューサー気取り」や「モンスターペアレント化」と揶揄されてしまう人がいるのは事実です……。

#人には人のヲタ活

ーーヲタクと推し、ヲタク同士など近いからこそ関係づくりが難しくなってしまうこともあると思いますが、どうしたら健全になるのでしょうか?

ちょっと冷たいかもしれませんが、お互い無関心でいるしかないこともあると思います。僕は自分のSNS投稿によく #人には人のヲタ活 をつけています。ヲタク同士でコミュニケーションをとったり、お互いのSNS投稿を見ていると「ヲタ活はこうあるべき」と決めつけてしまう人もいるけれど、それぞれの価値観でよくない?って。

SNSの普及も相まって、ヲタ活はますます多様化しています。今までは「お金を使う人がいちばん偉い」が良くも悪くも共通認識としてあったけれど、今は先ほども話した通り、SNSで情報を発信したり、再生回数を増やしたり、お金をかけなくても推しに貢献できる。ひとつの価値観で語ることはできませんよね。僕はやっぱり現場に行きたい、推しにお金を払いたいヲタクなので、無料でヲタ活している人に対して感謝をしつつも、頑張ってお金を使っていることはバカにされたくないですし、人には人のヲタ活がある、のスタンスでいたいです。

そういえば、アイドルが「無料でヲタ活している人の意見はそこまで影響力はないと思う」と雑誌で発言したら、炎上したこともありました。

ーーあくにゃんはその発言についてどう思いますか?

これヲタクの中でも意見が分かれるところ。それこそ、チケットって当落があるじゃないですか。最近はライブのMCでも枕詞に「今日来られなかったみんなもありがとう」って言うんです。これはチケットに落選してしまったヲタクへの配慮。学生のヲタクや地方に住んでいるヲタクに配慮して「学生の皆さんは受験勉強もありますよね、頑張ってください」「地方のみんなごめんね! 今度はそちらに行けるように僕たちも頑張るね〜!」と言うことも。その場にいない人(=お金を払っていない人ということにもなりますが)にまで配慮をするのが当たり前になっています。

ーーアイドル側もヲタクの存在を意識しているんですね。SNSによってアイドルもヲタ活の様子や文脈を読み取るようになったのかも。

ヲタクによるなんの変哲もない「チケット当たりました」投稿に、「当たらなかった人の気持ち考えて」とリプライがつくことも起きています。ひとりの人をみんなで応援しているのだから、多少の争いや奪い合いが発生するのはしょうがないと割り切ることも大切かもしれません。

ーー大変なこともある中で、ヲタ活を続けているあくにゃんのモチベーションを教えてください!

間違いなく、感動ですね。本当に泣けるんですよ、ライブ会場で。それはパフォーマンスが素晴らしいからとかももちろんですが、「デビュー決定」とか「東京ドームでのライブ開催決定」とか要所要所でのお祝い事や夢を叶えていく姿に感動するんです。

恋愛リアリティーショーや韓国のドラマ、映画を見ていて泣くこともありますが、そこに僕は関与できていないですよね、一切。でもアイドルの活動には少なからず関与できる。ライブに通ったり、グッズのためにお金を払ったり、SNSで告知したり、周りに薦めたり、自分が関われた上で、感動するものを一緒につくることができます。アイドルは、就職をしない、高校や大学に行かないなど、人生かけて大きな選択を重ねています。その熱量に感動させられるんです。僕が二次元ではなく、三次元の推しを応援してしまう理由はそこにある気がします。

ーー自分が少しでも関わって活躍している姿を見るのがグッとくるんですね。

あとは残酷さがドラマを生み出している部分もありますよね、本当に。消える人は消える。残酷さ、儚さに心のどこかで魅力を感じてしまいます。

ーーあくにゃんのYouTubeは、アイドルに言及するものもあれば、ヲタ活をテーマにしている動画もありますよね。フォロワーからヲタ活についての意見や質問を集めたりとか。ヲタ活コミュニティをポジティブにしたい思いがあるのでしょうか?

ここ10年でヲタクへの風当たりってすごく変わっています。秋葉原通り魔事件など、社会問題によってヲタクがネガティブに捉えられるタイミングが過去にはたくさんありました。今ではクラスでヲタクじゃないと言うと引かれたり、趣味がないと思われるくらいにまで「ヲタ活」がメジャーなもの、ポピュラーなものになってきています。

僕のYouTubeでも「好きなものを好きって言えるようにしよう!」を初期のテーマにしていましたが、それが当たり前になりつつあるので、いまは「ヲタクをするために生きている」を掲げています。ヲタ活のために無理して体を壊してまでも働いたり、大学休んでバイトしまくるのではなく、本業持ちつつヲタ活をしよう、人生のいちばん大切なものにヲタ活を据えるなら、自分のペースで無理なく推していこうよ、というメッセージ発信です。

これまでヲタ活は卒業するものでした。恋人ができたから、結婚したから、就職したから……。でもこれからは、ヲタ活を目的に生きてもいいんじゃないかな? そんなふうに自分が思う理想のヲタ活を自分のペースで続けるヲタクがコミュニティの中でも増えていったらいいなと思います。

いつも動画の最後に言うのですが、みなさんも推しと “推しあせ” に~!


vol.1 サウナコミュニティの記事はこちら

vol.2 ひとり宅飲みコミュニティの記事はこちら

あくにゃんが、ヲタクのリアルについて語った本はこちらから購入可能です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?