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「お米が好きすぎる農場。」はIT×大規模稲作経営で、将来は1000ヘクタールのギガファームへ!!〜DX事例23_有限会社横田農場〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回も一次産業からお届けになります。茨城県にあり、国内でも有数の大規模水田の作付面積を持つ「有限会社横田農場」のスマート農場に関するDXです。


150ヘクタール超の作付面積を持つ横田農場のIT取り組み

横田農場は2019年時点で作付面積150ヘクタールのメガファームです。そもそもタナショーは150ヘクタールのイメージが湧かないのですが、調べてみたら100ヘクタールで東京ディズニーランドとディズニーシーを足したくらいの面積だそうです。その1.5倍ですからとんでもない広さですね。稲作農家の1戸あたりの平均作付面積は1ヘクタールということから見ても、桁が違う事がわかります。

横田農場ではアルバイト含めても社員は10数名程度であり、効率的な大規模稲作経営を行うためにITを積極的に活用した取り組みを行っています。今回は農林水産省直轄の「農林水産技術会議」という組織が行っている「スマート農業実証プロジェクト」と横田農場の共同取り組みの事例となります。


①圃場水管理システムによる水量の見回り回数の削減
圃場(田んぼ)の水量は、稲の成長に併せて適切な水量管理をする必要があります。大雨や台風の日に、圃場の様子を見に行く方がいるのはこの水量調節のためですが、これを自動または遠隔で制御する取り組みになります。株式会社クボタケミックスのほ場水管理システム「WATARAS」を利用しており、推移計測をすることで自動給水/排水を実施することで、有人による水量チェックの回数が80%以上低下。無駄な給水回数もなくなり、水や電気料金の節約に繋がりました。何より作業する方の安全性も高まっていますね。

②自動運転田植え機の導入による作業能率の改善
「農研機構革新研」の自動運転田植え機を利用しての実証事件です。従来の田植え機では運転作業と苗の補給者の2名が必要でしたが、リモコンでの手動操作も可能な本製品(試作機)を利用することで1名で作業可能になるというものです。横田農場の実証ではさすがに生産性が2倍になったというわけではないですが、田植え作業の担当者が3人→2人に軽減されたということで、作業能率17%が向上しました。

③収量コンバインやデータ連携玄米選別機によるデータ解析と肥培管理
稲の刈り取りタイミングや米選別機にかけたときにデータを収集する取り組みになります。まず、コンバインによる刈り取り時に収量(収穫分量)を測定、さらにタンパク値などのデータを収集します。また同じく選別のタイミングでも米の品質や異物混入度も含めた収量データを収集します。
これらの情報は、収穫した圃場の位置情報も紐付けてデータ連携することが可能となっているため、圃場毎に品質チェックや適切な肥料計画を立てることが可能になります。

④栽培管理支援システムの導入による発育予測の実現
③で得られたデータ連携などを活用して、田植えをした稲の発芽予測や肥料計画を自動で産出する農研機構開発の栽培管理支援システムによる実証実験です。発芽予測誤差は1〜2日と高性能であり、少人数では管理しづらい肥料管理を提案してくれるという効果が見られました。更に、これらのデータは内閣府・農林水産省が推し進める農業に関するあらゆるデータ(収量データ、気象データ、市況データ、農地データ等)を共有または提供するデータプラットフォーム「農業データ連携基盤(WAGRI)」とも連携しており、農業ICTのさらなる効率化とコスト削減に向けてデータ活用をしていく予定です。

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農林水産技術会議「スマート農業水深フォーラム2020(水田作)>(有)横田農場ほか(茨城県龍ケ崎市等) スマート農業実証プロジェクト(令和元年度採択課題)の実証成果」より抜粋


経営戦略とDXの関連性について

横田農場は有限会社のためIR資料等がなく、社長である横田修一氏の記事から調べた内容となります。横田修一氏が入社した年の作付面積が20ヘクタールであり、2019年で150ヘクタールまで拡大していますが、これは横田氏が積極的に拡大していたわけではありません。横田農場の近隣の米農家の引退に伴い、その田んぼを引き継ぐような形で拡大してきた経緯があります。

最近では事業承継目的でのM&Aも珍しくないですが、横田氏の米作りに対する真摯な取り組みを見てきた近隣農家の「引退後は横田氏に任せたい」という思いを汲み取って引き継いできたそうです。
ただ、従業員の数も限られている中で作付面積が拡大していく状況や、大規模農場の経営経験がないことから、横田農場の経営は大変だったようです。横田氏は農家からの引き継ぎが本格化した頃からITの積極的な活用を始めています。

今回紹介した「スマート農業実証プロジェクト」以外にも自社で独自のIT取り組みを実施しており、稲の生育状況や手入れ頻度、ICタグやスマートホンとの連携などを行っていました。圃場の水場管理で株式会社クボタケミックスのほ場水管理システム「WATARAS」を紹介しましたが、横田農場では仲間の農家と「農匠ナビ株式会社」を設立しており、「WATARAS」と同様の機能を持つ「農匠自動給水機」を開発もしています。

横田氏は今後拡大化が進む中においてもIT活用や、研究者たちや大手企業などとの取引や共同開発も視野に入れながら、大好きなお米づくりを続けるとのことです。


まとめ

いかがでしたでしょうか?横田氏はインタビューにて「1000ヘクタールに拡大しても農場経営ができるよう、仕組みづくりをきちんと考えなければならない」というような記載がありました。明確な裏付けはありませんが、今後も続くであろう知り合い農家たちから託される田んぼのことを意識しての発言でしょう。2014年時点の情報でも、150人の農家から引き継いだというから横田氏の信頼の高さは計り知れません。
そもそも自社だけでなく、周りの農家を含む地域一帯の未来を見据えて拡大化を進める横田農場の考え方は本当に凄いなとタナショーは思いました。まさに地域に根付く企業活動ですね。

1000ヘクタールを管理する農場は日本に前例がないことから、まさに「未知の領域」となりますが、そこにはきっとITのサポートが必要不可欠になると思います。皆さんの会社でも未知の領域にチャレンジする際は、ITの活用をお忘れなく。きっと役立つ場面があるはずです。
タナショー


参考にさせていただいた情報
有限会社横田農場HP
https://yokotanojo.co.jp
農林水産技術会議「スマート農業水深フォーラム2020(水田作)>(有)横田農場ほか(茨城県龍ケ崎市等) スマート農業実証プロジェクト(令和元年度採択課題)の実証成果」
https://www.affrc.maff.go.jp/R2forum2020/rice/project16.html
You Tube 「【スマート農業 REAL VOICE No.3】(有)横田農場(茨城県龍ケ崎市)
https://www.youtube.com/watch?v=qXVtkhR18As
茨城をたべよう「いばらきの職に挑戦する人たち ㈲横田農場 横田修一さん」
https://www.ibaraki-shokusai.net/seisan/?id=3229
マイナビ農業「メガファーム、拡大する現場を支える社長の「相棒」」
https://agri.mynavi.jp/2020_02_17_108378/
mugendai「「多品種・大規模経営」で農業の高齢化に挑むーコンバイン1台で東京ドーム24個分のコメ作り」
https://www.mugendai-web.jp/archives/1801
農匠ナビ株式会社HP
https://www.noshonavi.co.jp
株式会社クボタ「ほ場水管理システムWATARAS」
https://agriculture.kubota.co.jp/product/kanren/wataras/howto.html

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