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酪農業界もスマート化!?搾乳ロボットの導入で安全・安心な生乳供給を実現!〜DX事例21_株式会社Kalm角山〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

DX事例シリーズも21回目となり、とうとうシーズン3になりました。引き続き、もっとたくさんの企業のDX事例を紹介していきたいと思います!
今回は農業からのご紹介、北海道の酪農法人企業である「株式会社Kalm角山」の搾乳ロボットを活用したスマート農業DXです。


「スマート化された農場」が生み出すメリット

札幌市の郊外にあるKalm角山の酪農牧場は最大480頭を飼育できる牛舎があり、そこではたくさんの乳牛がほぼ無人で管理されています。乳牛はITによる以下の取組みに支えながら、24時間自由に動き回ることができています。

①搾乳ロボットによる搾乳業務を自動化
酪農における搾乳業務は重要な業務の一つです。乳牛は搾乳を行わないと炎症等の病気が起きやすくなります。1頭あたり平均1日に2〜3回は搾乳が必要なため、この業務は毎日欠かすことができない、かつ人手のかかる業務でした。
今回導入した搾乳ロボットは、搾乳をする区画に入ってきた乳牛の場所をカメラとセンサーで把握し、搾乳機の取り付けと搾乳を自動で実施します。乳牛が搾乳区画に移動するように訓練をすることで、乳牛自身が好きな(?)タイミングで搾乳を行うことが可能となっています。

②搾乳した生乳の分析を行うことで乳牛の健康管理を視覚化
搾乳ロボットに付随するシステムですが、搾乳した生乳から成分分析を実施することで乳牛ごとの生乳生産量や、乳房炎などの病気予兆を検出できるようになりました。首輪のタグで個体識別をしているため、出産の管理も含めた乳牛ごとの個体管理が可能となっています。

③バイオガスプラントを活用したグリーンエネルギーの産出
バイオガスプラントとは、乳牛や豚などの糞尿を処理する施設のことです。このバイオガスプラントを通すことで「有機肥料が生産できること」「発生するバイオガスを使った電気エネルギーの生産」ができるようになっており、Kalm角山はこの電気を電力会社に売却することで副次的な利益も生み出しています。更に糞尿の処理自体は牛舎内に清掃ロボットを設置しており、自動で清掃・収集ができるようにしています。

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以上のようにKalm角山ではこれらのロボットやITの仕組みにより一種の循環型エコシステムを作り上げています。またKalm角山は「農場HACCP」や「JGAP」と言われる農業・食品の安全性や、健全な農業生産に関する認証取得をいち早く取得しています。認証取得には厳しい基準項目がありますが、今回の「酪農牧場のスマート化」により見事達成ができており、大手小売からの受注生産の引き合いも多数寄せられています。


DXと経営戦略の関連性について

実はKalm角山のDXは創業当初から登場しています。Kalm角山はH26年1月に代表取締役兼CEOである川口谷氏自身を含めた、周辺の酪農家5戸が集まり法人設立された会社です。つまり家族経営から法人経営に転換した会社となります。

法人化に転換する際の課題として、それぞれの酪農家構成員(従業員)たちが乳牛頭数の少ない「個体管理」の酪農経験しかなく、メガファーム(大規模農業法人)で通常行われる「群体管理」への不安がありました。また人員不足や人員調達の困難性もあり、法人設立する時点でこれらの課題を解消しないとならない状況でした。

Kalm角山は課題解消のために、施設関連の建築に約15億円の投資をしてスマート化された牧場を実現しました。なおかつ設立当初から農場HACCP取得に向けて動いており、作業の平準化、ルール作りの徹底化を行い、約半年ほどの短期で認証取得できています。これにより、法人設立当初の目的であった「複数戸による酪農事業家たちのスケールメリットを生かした生産コストの削減」「生乳の安定供給のための経営の大規模化」を実現することができました

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まとめ

いかがでしたでしょうか?Kalm角山は今回の法人化にあたり約15億円の資金調達をしていますが、記事を書いていくなかで農業業界において15億も資金調達をする難しさを実感しました。

個人農業ですと1億の融資を受けるのが精一杯。法人でも日本政策金融公庫の「農業経営基盤強化資金(スーパーL)」で最大10億円(特別認定で最大20億)となっています。タナショーも自社融資を2回実施したことがありますが、希望金額を満額もらうことの難しさを肌で体験もしています。そういう点でも、法人設立の時点でこの巨額調達を成し遂げたKalm角山の凄さを実感したわけです。
Kalm角山が行った資金調達の苦労を推し量ることはできませんが、それでも困難極まる資金調達をやり遂げDXを敢行したのは、経営者の強い決断と意志力があったからだと思います

みなさんの会社においても解決したい課題や実現したい目標があると思いますが、そんなときITの活用が役立つ場面が必ずあるはずです。課題と実現したい目標を洗い出しながら、ITの活用ポイントを探してみてください。タナショーも、そんなみなさんのお手伝いができたら嬉しいです♪
タナショー


参考にさせていただいた情報
株式会社Kalm角山HP
http://www.kalm.co.jp/index.html
日経新聞「北海道乳にスマート化の大波、酪農王国の首位固め 」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC107YH0Q0A211C2000000/?unlock=1
独立行政法人農畜産業振興機構 畜産の情報2018.7「酪農現場における
農場HACCPとJGAP認証の取得・活用の取り組み ~(株)Kalm角か く 山や ま を事例として~」
https://www.alic.go.jp/content/000151693.pdf
YouTube「農業現場における新技術の実装に向けたマッチングミーティング(第3回:畜産)での講演の様子」
https://www.youtube.com/watch?v=gBXK0EPBVSg&feature=emb_logo

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