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正確な色調補正で正しいオンライン医療診断を提供!〜DX事例12_大日本印刷株式会社(DNP)〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteでは経営者にITを身近に感じてもらうための記事や、IT活用のヒント、経営者へのお役に立ちそうな記事をお届けしていきます。

DX事例12回目は、印刷だけでなくITソリューションや包装材、果ては精密機器部品まで。印刷と名のつくものから、印刷とは関係なさそうなものまで幅広く取り扱い、”大日本印刷”と言われると違和感を感じてしまうくらい多種多様な商品サービスを展開する大日本印刷株式会社(DNP)のオンライン診療DXです。


カラーチャートで色調補正をしながら正確なオンライン診断

コロナ禍の影響により来院する人が減っており、病院の経営が苦しくなっている中、家の中でも診断が可能な「オンライン診断」の需要が高まっています。そもそも診断行為について、厚生労働省は「初診は対面」を原則としていましたが、4月からオンライン診療を容認しており、さらにデジタル時代に向けてオンライン診断の恒久化も進めようとしています。

利用者にとっては外出する必要もなく、感染リスクも抑えて診療ができるオンライン診療はメリットが多いのですが、診断する医師側にとってデメリットがあります。それは「患者や患部の色味が把握できず、正確な診断ができない」というものです。
オンライン診断時に使うカメラやスマホは、メーカーごとに色調補正がされています。また部屋の照明などでも色調が変わるため、実際は患部が赤く腫れていたとしても、カメラを通して見る医師側では”色調のズレ”により変化に気づけないという問題がありました。

DNPはここを”ペインポイント”として、印刷業で培ったノウハウをもとに正しい色調補正のされたオンライン診断サービスを検討し始めました。
仕組みとしては、オンライン診断を受ける患者のもとに1センチメートル四方の紙片が届きます。そこには赤や青などの9色の正方形が刷られたカラーチャートとなっており、これを患部のそばに貼ってスマホ撮影をすることで、正しい色調補正のされた画像データが作成されます。医師はこの正しい色調補正のされた画像をもとに診断を行うことで、正しい診断ができるようになるというものです。

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DNPニュース「オンライン診療時の画像の色を補正するサービスの提供を開始」ページから抜粋


実際に上記の写真を見ると、補正前と補正後での違いが顕著です。確かにこれでは正確な診断ができないと、医師が言っている意味がわかりますね。
また、話がずれますがDNPは他にも、住宅・インテリア用途としてVR空間を使った接客サービスも開発しています。従来のVRで使われるようなCG素材と比べ、本物の建材データを使った高精細CGでVR空間を再現する事が可能です。

これらはいずれもDNPの印刷で培ってきた表現力や技術力が為せるワザではありますが、DNP自ら「第三の創業」と言わしめるほど、最近のDNPは既存事業の枠をはみ出たDXのチャレンジをしているそうです。それはなぜなのでしょうか?


客に言われた通り印刷するだけでは生き残れない。社会課題を解決するDXで第三の創業を!

DNPは1991年の印刷出荷金額9兆円をピークに、現状の売上高1兆4018億円に落ち着いています。DNP代表取締役社長である北島義斉氏からは「客に言われた通り印刷をするのではなく、社会課題を解決する製品やサービスを開発する」としており、その「第三の創業」の柱としてDXを上げています。2019年4月に新事業を扱うICT統括室を新設しており、DX担当役員を据え、素早い商品サービスを開発するためのアジャイル型の開発方式も本格導入しているなど、DXを推し進めるための組織や体制を整えながら進めています。
そもそも、DNP自体「印刷業で裏打ちされた技術力」をもとに「印刷」「包装材」「ビジネスソリューション」や「住まいとモビリティ」「エレクトロニクス」「医療・健康」まで。事業間での関連性があるのか分かりづらいほど、多種多様な事業分野で商品サービスを展開しています。

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DNPHP「ソリューション/製品・サービス」のページから抜粋


ですので、DXも事業に合わせてスピーディかつ大量に実行していくかと思うとそうではなく、「どうしてDNPがDXをするのか」ということを考えながら実行しているそうです。DXだからといって何でも手を出すわけではなく、100年以上積み重ねた表現に関わる印刷業の技術を軸に進めることが基本だそうです。


まとめと補足〜DXは組織再編が難しい〜

いかがでしたでしょうか?今回はいつものDXで自社の働き方や、コスト削減をするというよりは、付加価値の高い商品サービスを開発するという内容でした。また、DNPは他にもいくつかのDXがあるのですが、今回はその一部をご紹介した形となります。

タナショーは何度か「DXは人も組織もガラリと変えるもの」とお伝えしていますが、DNPの別の記事でも「DXの最大の課題はデジタル化ではない。組織変革をいかに進めるか」ということを課題に挙げていました。
DX部門のようにDXを推進しようとしている部門がある場合、DX推進部門と営業現場には必ず乖離があり、DX化された商品を営業が腹落ちできないがために販促の数値が思った以上に伸びないこともあるようです。

基本的に組織は変わりにくいものですが、DXは少人数でもサービスを販売、運営する仕組みを作りやすいです(スケールしやすい)。参考記事にもありますが、DXで小さく創って小さな組織で販売し、成功体験を積むことで他の組織を巻き込んでいく。そうすることで徐々に会社の組織をDXに最適化させていく(=組織を変えていく)ことができるのではないかと思います。

以上です。次回も楽しみにしていただければと思います。
タナショー


参考にさせていただいた情報
大日本印刷株式会社
https://www.dnp.co.jp
大日本印刷株式会社「2019年度(2020年3月期) 決算概要および中期経営計画 説明資料」
https://www.dnp.co.jp/ir/library/presentation/__icsFiles/afieldfile/2020/06/02/dnp_19Q4pre.pdf
大日本印刷株式会社「オンライン診療時の画像の色を補正するサービスの提供を開始」
https://www.dnp.co.jp/news/detail/10158216_1587.html
DIGITAL SHIFT TIMES「DXの最大の課題はデジタル化ではない。組織変革をいかに進めるか」
https://digital-shift.jp/digital_hr/200326
日経新聞「大日本印刷、動画で稼ぐ オンライン診療に「再現力」」
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO64958200T11C20A0TJ1000?type=group&s=4#BAAUAgAAdG9waWNfREZfVEJfMjAwNDA2MDE




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