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中小企業にとっての人事制度



本当に必要なのか?

従業員数10名を超えたあたりで人事制度が必要かもしれないと朧げながら考え始める経営者の方も多いのではないでしょうか。いわゆる資金調達を行いながら事業を加速させるスタートアップ企業からの相談もありますが、着実に顧客基盤をもち利益を出している中小企業の経営者の皆様からご相談いただくこともあります。
中小企業の経営者の皆様からすると人事制度が必要と思うきっかけは様々です。スタートアップ企業のように採用を加速させたいからという理由もあれば、マネジャクラスに権限委譲を行なっていきたいから、従業員が定着しないからなどが多いでしょうか。ご相談いただいた際は人事制度を導入することによってできなくなることもあることを先にお伝えしています。中小企業の経営者の皆様の場合、知り合いからの紹介やお友達からの採用を検討することも多く、報酬水準についてはフレキシブルに決められているケースが見られます。人事制度を導入し、従業員に周知していくと言うことは報酬がどのようなロジックで決まるのかを示すのと同じことになります。経営者の肌感覚で採用を決めていたことへの説明責任が徐々に出てきてしまいます。簡単に言えば自分の好きなようには採用も昇給もできなくなってくると言えます。

それでも人事制度が必要と思う理由

大きな分かれ目は経営者ご自身がどこまで自分で執行の役割を持っておきたいのかです。上場している大企業のように経営と執行を分離するようなステークホルダーからの要請があるわけではないのであくまでもどこに注力したいかと言った方が良いかもしれません。次の収益基盤をつくることに集中したい、営業活動に集中したいなど事業を中心におきたい場合、どうしてもバックオフィスや人のことまで気に掛ける余裕がなくなっていきます。その中で急遽お友達採用を行ない、さらに負荷が増えたりするような悪循環が生まれることも。中小企業の場合、バックオフィスの優先度はどうしても財務経理中心になります。一方で財務経理畑のマネジメントは人に強いわけではなく、事務的にスタッフにスルーしてしまうこともあります。こうなってくると経営者の負担は一向に軽減されない状態にならざるをえません。とはいえ人事で役員を迎え入れるだけの規模でもないため思案してしまう。この時に仕組み化することでなんとかできないかと考えるようです。

人事制度とは持続的に仕組み化し続けること

経営者の肌感覚で決めていた従業員の報酬がどのように決まるのかを構造的に示すことができるのが人事制度になります。極力、個別対応を減らし標準化させることでノイズを減らす作業とも言えます。ノイズが完全に消え去ることはないですし、新たなノイズがあった方が改善機会にもなるので必要悪な面もあります。ただ、一定の仕組みを設けることでノイズも早期に検知し、手をうっておくことも可能になります。経営、マネジメント、メンバーがそれぞれの立場で運用していくことで持続的に改善し続けることで自社の競争優位の源泉につながります。リクルートさんのような企業が環境変化に合わせてスケールし続けているのはこの仕組みを改善し続けたからと言えるのではないでしょうか。人事制度は一度導入すれば終わりにはならず、運用改善を継続的に行う覚悟が必要になることをこれからもお伝えしていきたいと思います。