最高のカニ?【生ラブ#28】
あなたが今まで食べたものの中で一番美味しかったものはなんですか?
私は迷うことなく、ハナサキガニ!と答えます。未だ不動のナンバーワンです。
ハナサキガニは北海道の根室周辺でしか獲れないカニで、漁獲地である根室の「花咲」という地名に由来して花咲蟹と呼ばれています。
大変おいしいカニで人気があるので稀に流通もしていますが、もちろん私が食べたのは北海道!北海道へ調査に行った際に食べさせてもらいました。
このときの調査は地元を知り尽くした北海道大学の方たちとご一緒しており、なにも知らないまま連れていかれたのは行きつけの漁師の店。漁師の店って最高ですよね。ただ塩茹でしただけのエゾバイも半端なく美味しい。
そこに出てきたのが真っ赤なハナサキガニです!ハナサキガニはなかなか大きく、甲羅だけでも両手に乗るくらい。そして、太くてゴツイ棘がたくさん生えています。花咲は地名に由来すると前述しましたが、茹でた時に真っ赤な“花が咲いた”ようになるからという説もあるそうです。
そして殻を剥いて食べるわけですが、いかんせん棘が痛い!キッチンバサミで殻を切って身を取り出そうとするけれど、殻は非常に硬くトゲトゲが容赦なく手を攻撃してきます。
しかし、それさえも気にならなくさせるほどの美味しさ!!!濃厚で旨味たっぷりの身を味わうべく、黙々と剥く!食べる!気づいたときにはすっからかんの殻の残骸がカニ汁の中に横たわっていました。はぁ、美味しかった。。。
というわけで未だ忘れられぬ私にとって最高のカニなのですが、実はハナサキガニは“カニ”ではありません。何を言ってんだコイツと思うかもしれないけど話を聞いてください。
カニといえば脚の数は片側5本ずつで10本です(ハサミ脚を含む)。しかしハナサキガニはよく見ると片側4本ずつの8本しかありません。厳密に言うと10本あるのですが、うち2本は小さく隠れていて外からは見えません。これはヤドカリの特徴なのです。
さらにメスのお腹側をよく見ると、あれれ?お腹がねじれて左右非対称になっています。これは巻貝を利用するザ・ヤドカリと同じように、ハナサキガニの祖先が貝殻の中に体を入れていた名残りです。
したがって水産上ではカニ扱いになっていますが、ハナサキガニは学術的にはヤドカリの仲間になります。こうしたカニと名が付くけど実はヤドカリの仲間というのは他にもいて、有名なものにはタラバガニがいます。そう、美味しいカニはヤドカリだったのです!
名前にだまされてはいけません。コシオリエビという“エビ”の名が付き、ハサミ脚が大きいので“カニ“にも見える仲間がいますが、これもヤドカリです。やっぱり見た目の脚は8本。しかもオオコシオリエビという大型の種類はこれまた美味しいらしい!
あなたが食べているカニは本当にカニなのでしょうか?食べる前に今一度よく確認してみてくださいね。
(地球らいぶ12月号掲載記事)
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