オバケは『ヒュードロドロ』って言わない

図書館で、『ねないこだれだ』を借りてきた。

有名だけど、実はちゃんと読んだことがないなぁと思って借りてみた。正直怖い。
大人のわたしが見ても、妙に眼力のあるキャラクターも怖いし、内容に救いがないのも怖い。寝ない悪い子はオバケにされて、連れ去られて終わり。『だからそうならないように寝なさい』っていう教えの本なのかなと思ったけど、なんかそういう脅迫めいた教え方もどうなんだろうとちょっと首を傾げるところがある。

まぁうちの図書館でも「0~2歳児へのお勧め図書」としてこの本が挙げられてるし、2歳児の寝かしつけに苦労するお母さん目線では救世主なのかもしれないので、まだその年齢の子どもに対する苦労を知らない私があまり批判するべきではないのだろう。
余談だけど、同作者の『きれいなはこ』という本もこの図書館に置いてあって、そっちもやっぱり喧嘩する犬と猫が、喧嘩の仲裁とて化け物の姿にされ、そのままオバケの国に連れて行かれるオチで終わっていた。文字にすると大したことないんだけど、絵本で読むと『もう元の世界には戻してもらえない』感が凄くて、妙に怖いのだ。
せなけいこ作品、全部こういうオチなの?

なんでこれがそんな推薦されとるんやって不思議だったから後でネットで調べたんだけど、どうやら子どもからの評判は高いらしい。怖がるけど、でも何故か惹きつけるものがあるらしく、毎日読んでくれと頼む子どもが多いんだとか。後、せな先生的には別にこの絵本は脅しに使うつもりはなくて、オバケはただ自由に生きてるだけ、とのこと。
そうは言っても怖いと思うけどなぁ。


とりあえず借りてみたので、娘に読み聞かせてみる。
まだ言葉があまりよく分かってない娘は、特に怖がるでもなく、さりとて興味を惹かれるでもなく、キョトンとしていた。まぁそうだろね。
ほら娘ちゃん、オバケだよ。ヒュードロドロ。

安直に「ヒュードロドロ」とか言っちゃってから、ふと気づく。
『ヒュードロドロ』って、何の音?

『ヒュー』も『ドロドロ』も、普通に生きてて出る擬音ではない。オバケは穴にヒューッと落ちないし、お洋服をドロドロにして帰宅することもない。何だこの音。
娘に「ママ、それなに?」って言われても答えられない。やばい、「いやお前が言うたんやろ……」って娘に呆れられてしまう。

幸いまだ娘はそこまでの知恵者ではない。今のうちに、そっと調べておく。
どうやら歌舞伎等の怪談話に使われる効果音らしい。笛と太鼓で、ヒュードロドロ。あぁ、なるほどね。そう言われると、なんか聞いたことある気もする。
実際のオバケからはこの音はしないんだなぁなんて、妙にしみじみしてしまった。イメージの浸透って凄い。




ところで前述の「こういう怖がらせ方はどうなんだ……」という感想、私が子どもの頃読んだ本でめちゃめちゃ怖かったのがあったからではと、ふと気づいた。

作者名もタイトルも、もう分からない。
逆に気になるので「この本では?」というものがあったら教えてほしいのだけれど、これもやっぱり図書館から借りた絵本だ。

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博士が研究をしていると、深夜なのにチャイムがなる。こんな時間に誰だろうと思いながら開けると、黒いコートの男が3人。
「博士、国の偉い人がお呼びです」とかなんとか言って(ここは記憶があやふや)、博士は車に乗せられる。
車に乗せられた博士はそのまま宇宙船に乗せられ、宇宙に連れ去られる。

(終)

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という内容なんだけど、このなんか『(国の偉い人に言われたなら)抗いようがない感じ』『もう二度と帰って来られない感じ』『博士のせいじゃないのにもうどうしようもない感じ』が怖すぎて、幼い私はその後図書館のその本があった場所にすら近づけない日々を送ったのだ。
普通にトラウマ案件。こわい。

(このあらすじで説明すると「エドワード・ゴーリーでは?」とよく言われるのだけれど、むしろ星新一の小説挿絵に使われそうなシンプルめの絵柄だったので、ゴーリーではないと思う)



その『怖い』から伸ばされる感受性というものもあるだろうけれど、でもわざわざトラウマを与えなくてもなぁとも思うし、でもこれがトラウマになるかどうかなんて蓋を開けてみないと分からないし、それを親フィルターで勝手に精査するのもどうかと思うし。
うーんうーん。難しいな、これ。

まぁとはいえ、今の娘はまだ「オバケってなあに?」の段階だ。読み聞かされても、別に怖くもなんともない。絵がちょっと怖いかもしれないけれど、特に嫌がる様子でもないなら、とりあえず借りてきたのが間違いだった訳でもないと思うことにする。

後1年ほどしてから読み聞かせたら、また随分と反応も違うのかもしれない。
その頃に向けた準備期間だと思って、今はとりあえず選り好みせずに色々借りてみようと思う。

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